2000年3月1日
 真先芳秋さんが入力された
有島武郎『或る女(後編)』を登録する。校正は地田尚さんです。この『或る女』の初版本に収められていた巻頭のホイットマン(Walt Whitman、1819〜1892)の詩と、あとがきである「書後」を校正者の地田さんがテキスト化して下さいました。そちらもご覧下さい。(AG)



2000年2月29日
弾射音(だん・しゃのん)さんの、
『太陽が山並に沈むとき』を登録する。 身悶えする都市のイメージを中核にすえて、壮大な潰乱の情景を脳裏に浮かび上がらせてくる作品。〈身悶えする都市〉は、比喩ではない。作中で、巨大な建物は身をよじり、軋み、うごめきながら崩れていく。
椎名誠『アドバード』に現れる戦闘樹、シダレカズラとセイヨウシナノキの殲滅戦。ジェイムズ・P・ホーガン『未来の二つの顔』における人工知能、スパルタクスと人間との死闘…。SFの言葉には何度か、決して眼にはうつることのない、超絶的なシーンを見せてもらった。野田昌宏御大の著作権表示付き箴言に、「SFは絵だねぇ」がある。大元帥は、イラストが喚起するイメージが、空想科学小説の楽しみのいかに大きな要素であるかを指してこうおっしゃるが、言葉からはっきりと絵の見える作品も、「これぞSF」である。(倫)



2000年2月28日
 紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『船』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年2月28日
岡本綺堂『半七捕物帳』シリーズの一部で、図書カードを修正した。
『お文の魂』『勘平の死』『お化け師匠』『半鐘の怪』『奥女中』『帯取りの池』『春の雪解』『広重と河獺』が変わっている。
これまで半七の図書カードには、大久保友博さんによる「半七捕物帳 執筆順リンク」への案内を置いてきた。加えて今回、〈ぷんきゅのちち〉さんによる「半七捕物帳の世界」にリンクした。空白となっていた図書カードの「作品について」には、「…世界」にあった粗筋紹介を使わせてもらい、より詳しい解説とも結んだ。
今回の半七リンク強化のきっかけとなったのは、一週間前の朝日新聞だ。「インターネットの図書館『青空文庫』」と題して清水弟さんが書いてくれた記事の最後に、「『半七捕物帳』が面白くて。」と載った。これを読んで、「半七のページを作っている。リンクしたい」と連絡があった。
互いの独立した試みが、呼応のチャンスを得て、手と手が伸びた。
今後、「…世界」にコメントが追加されるたびに、図書カードを書き換えていこうと思う。生まれ変わった図書カードから、あなたも半七親分の世界へどうぞ。(倫)



2000年2月27日
本日の朝日新聞(都内版)、「仲間がインターネット上で『全集』を製作。『松平維秋の仕事』」からお越しくださった皆さん、ようそこ。「松平維秋の仕事」収録の経緯は、
こちらへ
作品の読み方は、「青空文庫早わかり」で、「どうすれば、作品が読めるのか。(作品を読む)」を参照してください。(倫)



2000年2月26日
 大野晋さんが入力された
海野十三『幸運の黒子』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年2月25日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝著、鈴木行三校訂『後の業平文治』を登録する。校正はかとうかおりさんです。この『後の業平文治』は、すでに登録済みの『業平文治漂流奇談』の続編です。『業平文治漂流奇談』が登録された経緯は、1月18日のそらもようをどうぞ。(AG)



2000年2月24日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 朱彫りの花嫁』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年2月24日
昨日、尾崎紅葉の
『金色夜叉』が登録されました。
私たちが今、広く使っている漢字コード(JIS X 0208)にない文字が、この作品には山ほど出てきます。これを、登録されたこの形に持ってくるまでには、並大抵でない努力が必要でした。入力にあたられた柴田卓治さん、校正のかとうかおりさん、ファイル作成に奮闘された野口英司さんに、あらためて心からお礼を申し上げます。

以下、同作品中の外字処理について、一言。
新JIS漢字コード(JIS X 0213)原案に対して、青空文庫からコメントを提出する際、『金色夜叉』に関しては、新潮文庫『明治の文豪』に収められたファイルを作業対象として、調査しました。ですから、今回、外字として処理したものは、「文学作品に現れた外字」リストに拾ってあり、規格の策定にあたった「符号化文字集合調査研究委員会第2作業分科会」に報告ずみであるはずです。
ただし、青空文庫版『金色夜叉』を今回まとめるにあたっては、二つの漢字に対して『明治の文豪』版と異なった処理をほどこしました。
・『明治の文豪』版は、「罠」をこのまま「罠」(区点コード70-11)として処理しています。ただし、底本はあみがしらの下辺がないものを用いているようなので、青空文庫版では外字とし、その形で作字しました。(エキスパンドブック版911頁最下段)
あみがしらの下辺のない「罠」は、JIS X 0213の表中には見つけられませんでした。おそらく、収録されていないはずです。
・『明治の文豪』版は、[「日」の下に「咎」]に対して、補助漢字で区点位置34-39を与えられた、「咎」の「人」の部分を、「ト」とつくったものをあてています。ただし底本は、[「日」の下に「咎」]を用いているので、この形で作字しました。(エキスパンドブック版914頁4行目)
なお、この字はJIS X 0213に1-85-32として収められ、補助漢字とは異なる[「日」の下に「咎」]の形が例示されています。

青空文庫の掲示板「みずたまり」では、しばらく前から、新JIS漢字コードに関する話題がしばしば取り上げられています。先日制定されたこの規格が普及すれば、「青空文庫のファイルも、これに準拠して作ろう」と決心できるでしょう。そうなれば、今回外字として処理せざるを得なかったものの大半を、普通の文字として扱うことができます。その日をできるだけ早く迎えられるように、青空文庫としてやれることを考えていきたいと思っています。
(このコメントは、「みずたまり」に書き込んだものの再録です。
新JIS漢字コードに関しては、小形克宏さんの「文字の海、ビットの舟」が参考になると思います。)(倫)



2000年2月23日
 柴田卓治さんが入力された
尾崎紅葉『金色夜叉』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年2月22日
朝倉克彦さんの
『シャドウ・ワーク』を登録する。
図書カードに内容の紹介をお願いすると、「学校で何が起きているかを表現した」と、一言返ってきた。すべては作品に語らせればよい、というお気持ちなのだろう。そんな朝倉さんにとって、私の読後感など、お節介以外のなにものでもない。だが、野暮は承知で、この作品から受け取ったものの大きさを、示したい。一読後、朝倉さん宛にお送りしたメールの一節を、以下にコピーする。
『いくつもの時間の川を、いくつもの人の心が流れていく…。
川は、時には長く沿い、時にはほんのそこまで近づき合いながら、交わることはない。互いに、けっして理解し合うことのない人という存在の滑稽と哀しみを思いながら、語りに引き込まれていきました。
きわめて明確に掲げられたテーマとは少しずれたところで、人という存在に対する乾いた諦念が通奏低音として響いているように思えてなりません。
誤読でしょうが、私はそこに、強く惹かれました。』
エキスパンドブック版を用意した。これもまた、受け取ったものの大きさの証。(倫)



2000年2月22日
 小林徹さんが入力された
水野仙子『白い雌鷄の行方』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2000年2月21日
 大野晋さんが入力された
海野十三『地球を狙う者』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年2月19日
 小林徹さんが入力された
南部修太郎『霧の夜に』『女盗』『ハルピンの一夜』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2000年2月18日
 野村裕介さんが入力された
山中貞雄『陣中日誌・他三篇』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年2月17日
昨年10月に急逝した松平維秋(まつだいら・ただあき)が遺した作品のほぼ全体を網羅し た、
『松平維秋の仕事』を登録する。
著者が愛娘はるかさんのためにスクラップブックにまとめておいた作品を中心に、複数の 方々から提供された雑誌記事等を加えて編集した1冊である。生前、ペンネームで発表し た小説1作を除いて、彼はついに著書を公にする機会を得ることがなかった。青空文庫で なら元気だった頃にまとめることだってできたのにと後悔しつつの作業だったが、充実し た1冊になったと思う。
内容的には、音楽エッセイを集めた「音の旅の記録」、旅のエッセイを集めた「風の旅の 記録」の二部から構成。音楽については、著者の造詣深かったブリティッシュ・トラッド 関係のものを軸に、1970年代のシンガー・ソングライターたちについて書かれたものを多 数おさめた。旅のエッセイの中心はエアーニッポンの機内誌『私の青空』に連載されたも ので、各地の伝統的な味覚めぐりが楽しい。これに著者が晩年まで愛してやまなかった渓 流釣りのエッセイを加えた。
「粋」を好んで「野暮」を蔑み、何よりも物狂いの現代日本を嫌った著者の真骨頂にぜひ ふれていただきたい。かつて東京・渋谷百軒店にあった、そして彼がレコード係をつとめ たロック喫茶〈ブラック・ホーク〉に通った体験のある人には、エキスパンドブック版・ HTML版の表紙やタイトル写真からよみがえる思い出も数多くあることだろう。(楽)



2000年2月16日
岡本綺堂『ゆず湯』を登録する。入力と校正は、『鳩よ!』編集部。青空文庫の約束事をチェックした富田の名前を、校正者に加えさせてもらった。
今回、鳩が青空に舞うに至った経緯は、言い出しっぺの同誌編集長からどうぞ。

『マガジンハウスの文芸誌「鳩よ!」の喜入です。
今度、4月号(3月17日売り)で岡本綺堂の特集をします。企画途中で青空文庫のことを知り、特集で再録する「ゆず湯」という名作を登録すると同時に、その過程をルポとして特集記事にすることにしました。ルポは「マルチメディアの巨人」などを書いたデジタル・ライターの歌田明弘さんが書いてくれます。
大正〜昭和初期の大衆小説には、いまのゲーム世代の人が読んでも十分に面白いものがたくさんあります。岡本綺堂もその1人で、だから特集を組んだのですが、残念ながら「半七捕物帳」以外のものは、手に入れづらくなっています。青空文庫は、絶版になった優れた作品を、その作品を好きな人が中心となり、みんなで力を出し合ってデータ化し読めるようにする運動として注目しています。この特集を買ってくれる人は、きっと青空文庫の活動に興味を持って、読者や工作員になるだろうと思います。同時に「鳩よ!」の読者も増えるとうれしいですね。本を読む人、コンピュータにリテラシーを持つ人は、決して背反ではないでしょうから。
本を読む楽しみを文化として失わないように活動していきたいものです。よろしくお願いします。』

ちなみに『鳩よ!』は、『本の雑誌』や『噂の真相』と同じサイズの、文芸誌らしい文芸誌に生まれ変わっている。
歌田さんが青空文庫をどうさばいてくださるか、私自身も発売日が待ち遠しい。(倫)



2000年2月16日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 京人形大尽』『右門捕物帖 毒色のくちびる』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2000年2月15日
 舞さんが入力された
島崎藤村『二人の兄弟』と今泉るりさんが入力された鈴木三重吉『ぶくぶく長々火の目小僧』を登録する。校正は両作品ともJukiさんです。(AG)



2000年2月14日
 真先芳秋さんが入力された
森鴎外『阿部一族』を登録する。校正は進恵子さんです。(AG)



2000年2月12日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 曲芸三人娘』『右門捕物帖 毒を抱く女』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年2月11日
 森下祐行さんが入力された
渡辺温『イワンとイワンの兄』『可哀相な姉』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年2月10日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 白蝶怪』と柴田卓治さんが入力された太宰治『乞食学生』を登録する。校正は、『半七捕物帳 白蝶怪』がおのしげひこさん、『乞食学生』は小林繁雄さんです。(AG)



2000年2月9日
鶴岡雄二さんの
『モータウン・ミステリー』を登録する。
1960年代、黒人ミュージシャンの牙城として君臨したレコード会社、モータウンの音が、本当はどんな連中によって担われたのかという謎に迫る論考だ。

鶴岡さんを知ったのは、およそ15年ばかり前のことになる。当時、私たちに共通する関心の一つは、パーソナルコンピューターの出自だった。60年代後半のカウンターカルチャーを、パソコンは継いでいるという確信が、二人にはあった。鶴岡さんが仕切っていた雑誌で書いた記事を手がかりに、私は初代、旺文社文庫版の『パソコン創世記』を書いた。一方鶴岡さんは、パソコンがどこからきたかを示す本を次々と訳しはじめた。私たちはやがて、アラン・ケイやダグラス・エンゲルバートの仕事を知った。ちょっとした事情があって、鶴岡さんは別の名を立てて『ワークステーション原典』を訳し、『アラン・ケイ』の企画を実現させた。私も『パソコン創世記』を書き継いだ。
MacintoshやWindowsがどこからきたか、たどろうと思えば容易にたどりうる今となっては、パソコンの源流を見きわめたいと思ったあの頃の気持ちを、正直、少し遠く感じる。けれど、今私たちが見ているパソコンの形を、自分が決めたような口振りで語ろうとする下司が、あの頃には何人かいた。彼らに対し、私たちは少し腹を立て、意地にもなっていたのだろう。
その鶴岡さんが、今回は明らかに、心底怒っている。今度の相手は、おもてに掲げた神話を守るために、美しい音楽の真の担い手を抹殺しようとしてきた連中だ。
本稿のテーマであるモータウンの社名は、同社発祥の地、デトロイトの自動車産業に由来している。1903年、この地に生まれたフォードは、ベルトコンベアーから吐き出されるT型を大ヒットさせ、20世紀をリードする新しい産業の扉を開いた。デトロイトは、〈モーター・シティー〉として知られるようになり、たくさんの労働者を引き寄せた。人口における黒人の占める割合は高まり、この街は、1960年前後から台頭する公民権運動の拠点ともなった。
モータウンは、そのデトロイトから出て、公民権運動の昂揚と足並みをそろえて伸していったレーベルだ。1960年代半ば、ビートルズを先頭にイギリスのバンドがアメリカの音楽市場を席巻した時期、スプリームズ(私の古い頭には、「シュープリームス」で刷り込まれている、ダイアナ・ロスのいた、あのコーラスグループである)やスティーヴィー・ワンダー、フォー・トップスなどを擁して、モータウンはヒット・チャートの一角を守った。
極東の島国でラジオにかじりついていた少年には、〈芸能界〉の匂いをまき散らすモータウンは、公民権運動とは縁もゆかりもないもののように感じられた。運動の歌は、白人のピート・シーガーやマルビナ・レイノルズから教わった。けれど、あれから30数年を経てあらためて思い起こしてみれば、あのレーベルの隆盛もまた、黒人の台頭の大きな波にのっていたことは明らかだ。
「そのモータウンの音は、黒人の卓越したビート感覚に支えられてこそ生まれえた」
そんな神話が表に立てられ、夾雑物が慎重に排除されてきた過程には、アメリカの現代史の一側面がのぞいているように思う。

ここまで鶴岡さんを指して「私たち」呼ばわりしてきたが、90年代の半ばには、お互いの頑なさに嫌気がさしてそっぽを向いていた。彼は、ネットワークを毛嫌いして電子本を罵倒し、私はその双方に過剰に入れあげた。
その鶴岡さんが2年半ほど前に、ある目論見があってやむなく、ネットワークにマシンを繋いだ。本人が白状しているとおり、『モータウン・ミステリー』は、この接続体験から生まれた。その成果もまた、インターネット上に築かれた、優れた音楽への憧憬を録音された音の精査へと昇華させていく拠点、「Add More Music To Your Day」で公開された。弾き癖聞き分けの名人である、同サイトのオーナー、木村伸司さんのコメントには、今回ここにおじゃまするようになって、多くを教えられた。登録の件共々、今後は勝手に〈導師〉としてあがめていくことに決めた木村さんに、お礼を申し上げる。

このように生まれ、このように公開されるに至った『モータウン・ミステリー』は当初、鶴岡さんとインターネットとの融和のしるしに見えた。だが、久しぶりに言葉を交わす過程で、鶴岡さんの心のあり様は、そのような図式的な理解からはほど遠いことを痛感させられた。
素人芸の跳梁跋扈するネットは、『モータウン・ミステリー』のテーマでもあり、鶴岡さんが深く信頼する〈プロの手並み〉にとっては悪戦の場だ。プロの芸人を抹殺にかかる、そんな野放図な空間の水膨れにしびれを切らして、鶴岡さんはきっと、ダイナマイト一本ベルトにねじ込んで復讐にきたのだと思う。鶴岡さんの心の底には、ネットが提供したいくつかの幸せな体験でも埋め合わせのつかない、深い憂鬱がのぞく。
一方、共有だ公開だとわめき立てる当方が、気分爽快で心晴れやかかと言えば、そんなわけでもない。仕組みが壊れて芸が潰えることへの怖れと嫌悪の対極に控えているのは、勝手に広がりはじめた大風呂敷を前に途方に暮れ、背負った荷の重みに悲鳴をあげる弱い心だ。
『モータウン・ミステリー』を挟んで、私たちは結局、再会を楽しむよりは、互いの憂鬱を確かめあう結果となった。だが少なくとも私には、暗い腹の底をのぞきあうはめになっても、そっぽを向いているよりは向き合うことの方が、まだましに思えるのだ。そして、鶴岡さんの首をもう一段しめる所業かもしれないが、追加の提案も心に浮かぶ。
鶴岡さんには『45回転の夏』という、これもまた60年代の音楽が大切な要素となった美しい小説がある。あの珠を、私たちは今、どこで手に取ることができるだろう。お代は見てのお帰りの、〈スレイブ方式〉がある。〈投げ銭〉型のチャレンジもありうる。プロの仕事を、インターネット上に復権させようとする試みはありえて、青空文庫はその敵ではないと思う。あなたが望むなら、ブックは私が作る。集金の仕組みも、二人で工夫しよう。あの美しい物語への入り口の一つとして、この場を使ってもらうことはできないだろうか。(倫)



2000年2月9日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 妖狐伝』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年2月8日
もりみつじゅんじさんから、「
随筆計画2000をはじめるよ〜」と連絡をいただいた。
青空文庫の収録作品を利用して、テーマ別の随筆集を構成しようというこの計画の概要は、まず、ご本人からどうぞ。

「1日10分本を読みましょう。とまるでどこかの書店組合の宣伝だが、 5分で気軽に読めるエッセイがすぐにダウンロードできれば便利ではないか。しかしそんなページはあっただろうか……。紙の本なら作品社の「日本の名随筆」シリーズがある。各テーマ別に数ページの随筆を収集したもので100巻+別巻100巻が完結した。その日の気分に合わせたテーマを手に取ってみると新しい発見が!(笑) そんなページがあると嬉しいものだ。だが素人の選集はちと無理があるからして、手始めに「日本の名随筆」のテーマをもらい、青空文庫登録作品にリンクするのでどうだろう? とりあえず形になるのではないか。……サクサク(調査中)……うむ。思いの外。必要か。少ない。十倍の。弱点が。蔵書が。————随筆リンクとしては少々実用にならぬが、調査結果を公開して青空文庫関係者諸氏の努力を応援したいと思う。」

皆さん、わかりましたね。
さて、随筆計画2000に行ってみると、一番上に「青空文庫(へ)提供 :-) 」と書いてある。
頂戴したこのページを、では、どう生かしていこう?
本来の狙い通り、ここからエッセイを読みにいくも良し。もう一つ、入力作品の候補選びにも、このリストは使ってもらえると思う。
「入力で協力したいけれど、何を入れようか思いつかない」ときは、このページを見てほしい。(今後に備えて、この際、ブックマークをよろしく。)
例えば「1.花 宇野千代編 」。
岡本かの子『五月の朝の花』 から、幸田露伴『花のいろ/\』に至る作品は、作品社版の中から抜き出された、著作権の切れた作家のものだ。
凡例にあるとおり、●の色代わりは、すでに青空文庫で公開されている。●の色抜きは、青空文庫の「入力中の作品」リストに記載されている、誰かが作業中のもの。そして○が、青空文庫では、未着手のものだ。だから、○に取りかかってくれると、印が●に変わり、公開の暁には図書カードへのリンクが仕込まれて、随筆計画2000が着々と進行することになる。
ちなみに、「はずれ……該当なし」とは、該当の巻に著作権の切れたものがなかったとの謂。もちろん作品社は、一冊1800円で売っておられるので、文庫で読めないものはそちらをどうぞ。

入力と校正でのご尽力に加え、もりみつさんにはこれまで、「青空文庫検索ページ」と「死せる作家の会」のリストを作ってもらった。今回の随筆計画2000でも、実にいいところを突いて、しっかり仕事をしていただいている。
もりみつさん、ありがとう。別れても(?)、返せなんて言わないでね。(倫)



2000年2月8日
 真先芳秋さんが入力された
菊池寛『吉良上野の立場』『船医の立場』『屋上の狂人』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年2月7日
 大野晋さんが入力された
田中英光『オリンポスの果実』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年2月5日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(杉山萠圓)『白髪小僧』を登録する。校正は江村秀之さんです。(AG)



2000年2月4日
 柿澤早苗さんが入力された
夏目漱石『人生』とあきらさんが入力された宮沢賢治『ひかりの素足』を登録する。校正は両作品とも伊藤時也さんです。(AG)



2000年2月3日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 薄雲の碁盤』を登録する。校正は山本奈津恵さんです。(AG)



2000年2月2日
 大野晋さんが入力された
海野十三『宇宙女囚第一号』『生きている腸』と、もりみつじゅんじさんが入力された海野十三(丘丘十郎)『地球発狂事件』を登録する。校正は、『宇宙女囚第一号』『生きている腸』がしずさん、『地球発狂事件』が武内晴惠さんです。(AG)



2000年2月1日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『現代日本の開化』太宰治『嘘』『雀』『庭』を登録する。校正は、『現代日本の開化』が大野晋さん、『嘘』『雀』『庭』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月31日
泉井小太郎さんの入力で、
山村暮鳥『聖三稜玻璃』を登録する。
泉井小太郎さんと音座マリカさんは、六角文庫という創作工房を通じて、詩や絵画、陶芸などの作品を発表しておられる。ここを訪れるたび、時の流れが、少し歩みをゆるめるような思いにみたされる。淡い色彩にいろどられた本の数々は、コンピュータのディスプレイに表示されているのだということを忘れさせてしまうほどに、優しく美しい。
初冬に、泉井さんから、青空文庫の本棚にと、山村暮鳥の小さな詩集が届いた。選び抜かれ、するどく研ぎ澄まされ、確固たる信念を持ってそこに置かれた言葉が並ぶ。暮鳥が一篇の詩のおわりに、時には途中に、句点を打つとき、我々はそこで立ち止まって、詩人と共に、言葉に向かい合うことを求められる。そして、言葉が心のうちに染み込んでいくのを待つのである。
本を私たちの手元に置いたまま年を越してしまったことのお詫びと共に、きりりと冷たい冬の空気を添えて、みなさんのお手元にお届けしたい。泉井さんがお住まいの金沢には、雪が降っているだろうか。(LC)



2000年1月31日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(海若藍平)『若返り薬』『虫の生命』『クチマネ』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月29日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『令嬢アユ』『佐渡』を登録する。校正は青木直子さんです。(AG)



2000年1月28日
島田一郎さんの、
『随想 橡の木の葉』『自伝抄録・祖父の肖像』を登録する。両作品とも、「散歩者の夢想」と名付けられたメーリングリストへの連載をまとめたものだ。
ML運営に試行錯誤を重ねた結果、「散歩者の夢想」は、主宰者が随想を連載する場として設定されている。参加資格は50歳以上。いわゆるMLらしい話し合いの場は、別に設けられているらしい。珍しい仕立てと思うが、「ネチケットやルールは、自分で創り出すもの」と腹を決めた主宰者が、きっと悪戦苦闘だったのだろう運営体験の中からひねり出した、これが一つの答えだ。ここに至る経緯は、「嗚呼、管理人! 迷走の一年半・・・」にまとめられている。
『随想 橡の木の葉』は、父の最期を子の立場から描いた作品だ。島田さんが作品紹介に盛り込んでくれた、「夫婦の晩年は「誰にも」、壮健な生活者には思いもよらない「最高の美」が予定されている」と言う言葉が、すべてを言い尽くしていると思う。『自伝抄録・祖父の肖像』は、母方の祖父が1943(昭和18)年にまとめた自伝を、島田さんが抄録したものだ。日露戦争当時の世相や関東大震災の惨状など、時代を生きた人の証言を、興味深く読んだ。
『随想 橡の木の葉』の冒頭には、恋人か夫婦らしい男女が街を行く写真が置かれている。作品の最後に、この写真がもう一度出てくる。一度目はさっと見送った銀座通りの二人の姿に、二度目に出会ったときは、視線を吸い付けられた。

両作品のHTMLでは、フォントサイズが指定されていて、本文中に改行タグが使われていない。T-Timeで読む際は、メニューの「設定」から「タグ」と進み、「CR有効」をチェック、「文字サイズ」に付いているチェックは外すと読みやすいと思う。(倫)



2000年1月28日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『千代女』『服装に就いて』『みみずく通信』を登録する。校正は青木直子さんです。(AG)



2000年1月27日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 大森の鶏』ともりみつじゅんじさんが入力された新美南吉『川』『久助君の話』『嘘』を登録する。校正は、『半七捕物帳 大森の鶏』がはやしだかずこさん、『川』『久助君の話』『嘘』がゆうこさんです。(AG)



2000年1月26日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『火の鳥』、真先芳秋さんが入力された菊池寛『恩を返す話』『三浦右衛門の最後』を登録する。校正は、『火の鳥』が高橋美奈子さん、『恩を返す話』『三浦右衛門の最後』が鈴木伸吾さんです。(AG)



2000年1月25日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『酒の追憶』『フォスフォレッスセンス』『渡り鳥』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年1月24日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『おさん』『饗応夫人』『女類』『女神』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年1月23日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『グッド・バイ』『父』『母』『犯人』『眉山』『美男子と煙草』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年1月22日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『盲人独笑』と海美さんが入力された海野十三『恐龍艇の冒険』『透明猫』を登録する。校正は、『盲人独笑』が小林繁雄さん、『恐龍艇の冒険』と『透明猫』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月21日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 足のある幽霊』を登録する。校正はkazuishiさんです。
 それから、1月16日の登録ですが、太宰治『善蔵を思う』のところを太宰治『秋風記』としてしまいました。大変失礼いたしました。ご指摘いただいたkazuishiさん、ありがとうございました。(AG)



2000年1月20日
山本有二さんの作品
『日常生活の美学−モダニズムと『いき』』を登録する。
著者名に見覚えがある、と思った方がおられるのではないだろうか。実は、1月3日に登録された『清貧譚』英訳版 "A Tale of Honorable Poverty"を翻訳して下さった山海空悠丸さんは、実は山本さんのペンネームなのである。太宰作品の英訳に続いて、今回、英語で書かれたご自分の論文を、日本の読者に向けて、和訳して提供しようと申し出て下さった。
「いき」という概念は、明確に定義することが難しい。作品中でも触れられているが、状況に応じて、臨機応変に変化するものだからである。全てがマニュアル化され、他者の目を意識することが極端に少なくなったと言われる今の時代、なおさら「いき」という概念はとらえがたく感じられるように思える。この概念を支えているものは、今の私たちが二の次にしがちな、実用一点張りから一歩踏み出す余裕とでもいうようなものではないだろうか。青空文庫に収録されている作品の多くが、50年以上前に書かれたものだ。当時の日本の、ゆったりとした時の流れを感じ、その底にある美意識を楽しむとき、「いき」という言葉の持つ意味が、改めて実感されるように思う。
論文は「いき」という概念をめぐる考察だけれど、日本文学の底に流れるものを再発見するガイドとしても面白く読める。こんなふうに解説してしまうのは、それこそ「野暮」のきわみかもしれないが。(LC)



2000年1月19日
青空文庫をはじめた時に、私達呼び掛け人はほそぼそと、やれるだけの範囲で やっていこうといっていました。

しかし、企業や個人の人からの寄付などを受けるようになり、また、広告をおく ことで寄付ではない、事業収入を得るようになりました。

青空文庫は人格のない法人として活動が始まっていました。そこで今回改めて 青空文庫として事業開始届けを税務署に提出し、みなし法人として会計期間を 定めなおしました。【9月1日〜8月31日】

活動が、たとえゆっくりでも、細く長く続ける為にも事務体制を整えていければ と思っています。

会計担当  らんむろ・さてぃ



2000年1月19日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(海若藍平)『青水仙、赤水仙・黒い頭・白椿』夢野久作(萠圓)『正夢』夢野久作(無署名)『三つの眼鏡』を登録する。校正はすべて、もりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月18日
三遊亭圓朝『業平文治漂流奇談』を登録する。入力は小林繁雄さん、校正はかとうかおりさん。加えて本作品では、お二人が協力して編集にあたられた。

今回の登録作品は、春陽堂から刊行され、後に世界文庫で復刻された、『圓朝全集』を底本としている。1900(明治33)年に没した圓朝の仕事を後に伝える上で、決定的な役割を果たした『全集』は、鈴木行三氏の「編纂、校訂」を得てなっている。
時代を超えて、圓朝を受け渡すバトンの役をになった『全集』に立ち返り、電子化を進めようと考えた時点で、私たちは二つの問題に突き当たった。一つは、『圓朝全集』に関する鈴木氏の権利を、どうとらえるかという点である。そしてもう一つ、旧字旧仮名で速記本の匂いを残した底本の文章を、どのようなスタイルで電子化するかも問題となった。

鈴木行三編纂、校訂の『全集』を底本にできるか否か、調査し、検討した結果は、内部的な意思確認を主目的として、半年ほど前に、レポートにまとめた。
その報告書を今回、「直面した課題」「圓朝全集は誰のものか」と題して置いた。本来、この手の報告書には、問題の所在と検討の過程、結論を導き出した根拠を、できるだけ手短に示すべきだろう。だが、今回のものには、著作権の所在確認を行う際の手順や情報源を参考に示そうと、あえて調査の経過を長々と盛り込んでいる。調査の過程で興味を惹き付けられた、立川文庫の成立過程にも、脇道にそれるのを承知で触れている。結果的に、きわめて冗長で、脱線を繰り返すみっともないものになったが、決心に至るまでの心の弾みを伝えたい気持ちが抑えられず、破れかぶれの心境でそのままアップした。
『全集』をもとにした電子化のもう一つの課題は、100年以上前の圓朝の言葉を、どのような形で仕立てるかという点だった。旧字旧仮名、総ルビの底本を現代表記にあらためたいという意向が小林さんから示され、呼びかけ人も、そうすることが適当だろうと判断した。青空文庫はそれまで、「底本に忠実な入力」を表に立ててきた。だが、圓朝のものに限らず、読みやすさを優先して現代表記にあらためたいという気持ちがわくのは、ごくごく自然なことだ。呼びかけ人の意向を越えて、一部にはすでに、書き換えが行われたものもあった。そこで、圓朝プロジェクトのスタートをきっかけの一つとして、現代表記への書き換えの指針をまとめることにした。
今回、公開する『業平文治漂流奇談』は、「現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、『全集』の表記に変更を加えている。同「指針」は前文で、書き換えを行う場合を、「旧字、旧仮名版しか存在しない」ときと、限定付けている。実は圓朝には、現代表記による『三遊亭円朝全集』(角川書店)がある。だが角川版では、表記がきれいさっぱり現代風にあらためられていて、口演を速記した匂いや、新しい文体が生まれようとする躍動感が伝わってこないと感じた。そこで、『圓朝全集』の息づかいを残しながら読みやすさを目指す作業に、新たに取り組んでいただくことにした。
大切ではあるが、実に悩み多きこの作業に、緊密な連絡を取りながら当たられたのは、小林繁雄さんとかとうかおりさんである。ルビはどの程度付けるか。踊り記号を使うか。「指針」に沿って、人名は旧字のまま、地名は新字に改めるとして、屋号はどうするか。表記の統一は行うのか。さらに個別の字句を前に、拗音を小書きするべきかを巡って、繰り返し検討のメールが行き交った。お二人は、「公開後、諸賢の批判を待つ」として編集作業を終えられたが、さまざまな点で実に意義深い仕事を成し遂げられたことに、まずは心からのお礼を申し上げる。あの時代に落語家として現れた偉大な物語作家の世界を、小林さんとかとうさんの導きを得て、一人でも多くの方が堪能されることを願ってやまない。(倫)

(「圓朝全集は誰のものか」を、ttz化してこちらに置きました。無償で公開されているT-Time機能限定版があれば、冗長な文章も多少は読みやすくなるでしょう。T-Timeの特徴はこちら。機能検定版のダウロードは、こちらから。)



2000年1月17日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 大阪屋花鳥』と柴田卓治さんが入力された夢野久作(萠圓山人)『猿小僧』を登録する。校正は、『半七捕物帳 大阪屋花鳥』がしずさん、『猿小僧』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月16日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『古典風』『善蔵を思う』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年1月14日
 真先芳秋さんが入力された
菊池寛『蘭学事始』とtatsukiさんが入力された佐々木味津三『右門捕物帖 闇男』を登録する。校正は、『蘭学事始』が丹羽倫子さん、『右門捕物帖 闇男』がkazuishiさんです。(AG)



2000年1月13日
 八巻美惠さんが入力された
太宰治『お伽草紙』と柴田卓治さんが入力された夢野久作『いなか、の、じけん』を登録する。校正は、『お伽草紙』が高橋じゅんやさん、『いなか、の、じけん』が江村秀之さんです。(AG)



2000年1月12日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 川越次郎兵衛』とryoko masudaさんが入力された夢野久作『少女地獄』を登録する。校正は、『半七捕物帳 川越次郎兵衛』が菅野朋子さん、『少女地獄』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月11日
オー・ヘンリー著、結城浩訳
『最後の一枚の葉』を登録する。同じく結城さん訳による『賢者の贈り物』同様、これも、山形浩生さんが言い出しっぺとなったプロジェクト杉田玄白の正式参加作品だ。
青空文庫は、翻訳作品を扱わないと決めているわけではない。だが、底本の検討をはじめると、一般の著作権同様、死後50年間保護される訳者の権利が生きているために、諦めざるを得ないケースがしばしばとなる。大久保友博さんの試みのような一部の例外はあるが、文庫ではこれまで、自由な公開を前提にした新たな翻訳を後押しできないできた。
こうした青空文庫の〈ていたらく〉を批判的に乗り越え、「ならばオレが訳す」と宣言したのがプロジェクト杉田玄白だ。青空文庫に対する山形さんの批判は、私たちが「収録ファイルの取り扱い規準」という成果を残す、きっかけも作ってくれた。誠実に働き、厳しく批判してくれるタフな連中の存在を肩先に感じていられることは、ありがたいことだと思う。今年、よりいっそう活発に生み出されていくだろう同プロジェクトの成果に向けて、青空文庫の図書カードからリンクすることを、課題の一つとしたい。
文庫でも去る3日には、山海空悠丸さんの訳で『清貧譚』英訳版 "A Tale of Honorable Poverty"を登録できた。日本語の青空文庫。和訳のプロジェクト杉田玄白。加えて、山海空さんのような、外国語訳を用意していく試みが一つの流れとなれば、ますます頼もしい。(倫)



2000年1月11日
 大野晋さんが入力された
海野十三『ある宇宙塵の秘密』『千年後の世界』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月10日
秋野平「ロック、70年代—復刻CDに時代を聴く」を登録する。1991年、中日(東京)新聞の日曜版に9カ月にわたって連載されたコラムをまとめたものだ。70年代にリリースされたロックアルバムを中心に、「アルバム紹介の形をとりながら時代の動きと本質を探る」という視点で書かれたコラムである。筆者の秋野平は「松平維秋+浜野サトル」からつくったペンネーム。二人が1カ月交替で原稿を書いた。生前、作品を公にする機会に恵まれることの少なかった松平維秋を思いだしつつ、ファイルをまとめた。(楽)



2000年1月10日
 田浦亜矢子さんが入力された
海野十三『俘囚』と海美さんが入力された海野十三『予報省告示』を登録する。校正は両作品とももりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月8日
 岡本正貴さんが入力された
宮沢賢治『ポランの広場』を登録する。校正は石川友子さんです。(AG)



2000年1月7日
高野敦志さんの
『漁火』を登録する。
モラトリアムの尾を引きずっていた青年による、佐渡への幻視行の物語。
青年を縛ってきた「世間から逃れよう」とする気持ち、「結婚して家庭をもつことへの恐れ」の根にあるものは、旅にある彼の眼前に、前世の悲哀なエピソードとなって現れる。二次元の平面として目の前にある〈今〉に、歴史、時間という奥行きを与える〈旅〉という場を設定し、自らを解き放つためのドラマを演出しようとする著者のたくらみは、読み返すたびに、実に計画的に思えてくる。一読した際は、ばらばらに配置された印象を受けた名所旧跡のいわれやルソーの箴言、観無量寿経の教える観想法を、著者は「ここ」と狙いを定めて配置したのだろう。

一つ一つ公開ファイルを積み重ねていけたことに加えて、昨年は「収録ファイルの取り扱い規準」を定め、「ここにある著作権切れ作品は、誰もが自由に使える」と宣言できた。これがきっかけとなって、青空文庫を使ってやろうと考える人が、一気にふえた。「規準」は、1999年の大きな成果だったと思う。
一方、文庫の試みが勢いを増すにつれて、呼びかけ人と称する世話役の力の限界が、浮き彫りになっていった。要の機能が相対的に低下する中で、呼びかけ人はかなりの大切な課題を手つかずのまま放置した。昨年の後半、厳しい指摘を受けた、書き残された言葉の中にある差別性に、青空文庫としてどう向き合うのかという問題もその一つだ。「表現の自由を守る」、あるいは「図書館は検閲を排する」と一言いって、後はたこつぼにこもって嵐が通り過ぎるのを待ってすむような問題ではないと思う。〈反駁権〉を保証する仕組みを作ろうと提案した私には、あの時提起された物事をもう一度整理して、約束を守る義務があるはずだ。
1999年のもう一つの大きな心残りは、「自分の作品を青空文庫に登録してほしい」と声をかけてくださった方に、まともに対応できなかったことだ。
作者の死後50年を経てなお、「みんなに読んでほしい」と思う気持ちを人に抱かせた作品については、登録をほとんどためらわない。一方、時のふるいを経ていない作品に対しては、青空文庫における最初の読者として、それぞれに正面から向き合いたい。「作品収録を望まれる方へ」に示した、ごく敷居の低い排除規準にだけ留意して、「どうぞどうぞ」とどんどん招き入れるような態度が取れない。
結果的には、じっくり読みたいという気持ちと、どんどん膨らんでいく著作権切れ作品に関わる作業に引き裂かれて、登録を望まれる方への対応がおろそかになった。「いずれ返事する」と申し上げたままになっている方に加え、「沈黙は拒絶のサインと受け取られてしまう」と意識しながら、返事もしていないこともあった。
問題の核心は、いかにして要を強化するか、あるいは我々が抱え込んでいる作業を、力をふるってくれる皆さんの手にいかにして委ねていくかであるだろう。そのための仕事を進めながら、メールボックスを見直して、登録を申し入れてくださった方々にご連絡をとっていこうと思う。
高野さんの『漁火』の登録を、その第一歩としたい。(倫)



2000年1月7日
 ゆうきさんが入力された
内村鑑三『デンマルク国の話』を登録する。校正は吉田亜津美さんです。(AG)



2000年1月6日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『道楽と職業』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年1月5日
 大野晋さんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 青眉の女』を登録する。校正はごまごまさんです。(AG)



2000年1月4日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 ズウフラ怪談』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年1月3日
山海空悠丸さんの翻訳で
『清貧譚』英訳版 "A Tale of Honorable Poverty"を登録する。
去年の1月1日、太宰治作品の著作権が切れた。この日、青空文庫では、それまでに準備が終わっていた太宰作品を一挙に公開した。『清貧譚』も、そのときに公開したうちのひとつである。それから1年後、こんどは英語に姿を変えた太宰作品を、みなさんにお届けできることになった。
翻訳には、他の言語から日本語へ、そして日本語から他の言語へ、という二種類がある。青空文庫はこれまでにも、前者に該当する作品を登録してきた。著作権の切れた翻訳作品となると範囲が限られてくるが、それだけではない。「それなら自分が翻訳してやろう」と、イキのいい訳文を届けて下さる方が次々に現れて、現代の日本語で読める翻訳作品の数も、徐々に増えてきている。
ある日、山海空悠丸さんから「太宰治の『清貧譚』を英訳したので、登録してもらえないだろうか」というメールをいただいた。和訳の作品を提供していただいたことは何度かあるけれど、日本語で書かれた作品の英訳版は初めてだ。思えば、海の彼方から「読んでいます」というお便りをいただくこともしばしばある。地球のあちこちに住む読者のために、日本語で書かれた作品を外国語におきかえてひろく紹介していくことも、インターネットを使えば、簡単に可能となるのだ。大きな可能性を示していただいた申し入れに、私たちは「ぜひお願いします」とお返事した。そういった経緯で、初の英訳作品登録が実現したのである。
インターネットの力を借りて、本をめぐる輪が、少しずつ拡がっていく。新たな出会いに心ときめかせる場面が、今年もたくさんありそうだ。(LC)


2000年1月1日
 あけましておめでとうございます。2000年の始まりに、今日1月1日に著作権の切れた海野十三の作品を登録します。ミレニアムの区切りとして、日本SFの始祖である海野十三の作品が登録できるのは何となくぴったりのような気がします。登録する作品は、
『十八時の音楽浴』『放送された遺言』『人造人間殺害事件』です。入力は、『十八時の音楽浴』『放送された遺言』が大野晋さん、『人造人間殺害事件』は田浦亜矢子さんです。校正は、3作品とももりみつじゅんじさんです。(AG)
  1997年のそらもよう
1998年のそらもよう
1999年のそらもよう
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