■ 貧乏人のためのCG講座 フルカラーCG編

下描き・主線の作成

 ここからは私が普段使っているグラフィックエディタ「Fanfare Photographer」を例にして話を進めます。このソフトは「ウルトラキッド Ver.2.0」の上位バージョンとも言えるものですが、操作方法はほとんど同じなので「ウルトラキッド」やその後継ソフトである「HYPERKiD」のユーザーも、ここに書いてある内容はほとんどそのまま使えます。また、最近の各社のソフトは「Fanfare Photographer」同様、フォトショップライクな操作性を持っているものが多いので、他のソフトを使っている場合もある程度参考になるでしょう・・・なるといいなぁ(^^;

 さて、まずは下描きを作りましょう。方法は大きく3つ考えられます。1つは紙に描いたあと、「256色編」のところで述べた「ラップスキャン」で取り込む方法です。この方法については「256色編」のところで詳しく書いたのでここでは省略します。

 2つめは紙に描いてからスキャナで取り込む方法です。絵を描く画材は何でもかまいませんが、フルカラーCGの場合スキャナで取りこんだものをそのまま主線として生かすこともできる、ということを考えると鉛筆よりはペンなどの方がいいでしょう。もちろん、鉛筆を使ってタッチのある絵を描くというのもアリですし、コンピュータ上で主線を起こしなおすつもりなら、取り込めさえすれば何で描いても関係ないです。取り込み解像度は極端に大きくする必要はありませんが、取り込んだ下描きのサイズが完成時のサイズの2~4倍程度になるようにしておきましょう。

 下描きサイズを大きめに、ってのはどのやり方で下絵を作る場合も同じね。理由はまたあとで…

 3つめはタブレットで直接パソコン上に描いてしまう方法です。道具さえ持っているなら、個人的にはこれが一番お勧めです。何度でも描き直しができますし、消しゴムのカスも出ませんから(^^;。さらに、「左右反転」などの機能でデッサンの確認ができるのも大きな利点です。

 タブレットで描く場合、私は下描きの段階からレイヤをフル活用してしまいます。まず最初のレイヤはいわゆるラフ。ここで人物の大きさ、ポーズ、バランスなどを大まかに決めます。そうしたら新しいレイヤを上に追加し、細部を描いていきます。これを繰り返して下描きを確定していきます。下の例の場合、下描きだけで3枚のレイヤが重なっていますが、場合によってはもっとたくさんのレイヤが重なることもあります。

Fig.1 下描き

Fig.1 下描き
元の絵は1600×1600ピクセルの大きさです。下描きの線の色は黒以外にしておいたほうが、主線を起こすときに楽です。

 下描きができあがったら、次は主線を起こします。ここでも方法はいくつかあります。一番単純なのは、マウスやタブレットで直接描いてしまう方法です。下絵のラインを黒以外の色に変更した後、この上に新しいレイヤ(「主線」とでも名前をつけておきましょう)を配置し、下絵を参考にしながら主線を起こしていくのです。

 ブラシの設定としては、絵柄や絵の大きさにもよりますが、1~3ピクセルの太さで不透明度100%、濃度50%程度が使いやすいのではないでしょうか。マウスを使っている場合、なかなか思い通りの線が引けないでしょうし、タブレットの場合でも筆圧が一定しなくてヨレヨレの線になってしまうかもしれませんが、ここはグッと我慢。気に入ったラインが出るまで頑張りましょう。もっとも、最後の段階で絵を縮小してしまうので、細かいアラは見えなくなってしまいます。極端に神経質になる必要はないと思います。

cf.
 「256色編」では「ラインツール」を使って主線を大まかに描き、その後細かい修正を加えるという手順をとりましたが、一般にフルカラーのグラフィックエディタはドット単位の修正が苦手なので、この方法は使いにくいかと思います。

 主線を起こすもうひとつの方法は「パス」を使う方法です。パスは「パスツール」を使用して作成した、特殊な線のみ図形のことです。これを使うと、手描きでは難しい非常に滑らかな曲線を割と簡単に作ることができます。これでもって主線を作ってやるわけです。マウスしか持ってない人にとっては、かなり便利なやり方だと思います。

 もっとも、パスで曲線を作っただけでは画像に直接描画はされないので、描画する場合には作ったパスを指定した後、「パスツール」のメニューから「ブラシパターンでトレース」を選択してやります。すると、現在指定されているブラシの太さと色で、実際にパスに沿って描画が行われます。ブラシの設定は、マウスやタブレットで直接描く場合の設定とほとんど同じでいいと思います。

 非常にきれいな曲線が作れるパスですが、欠点としては、ペンタッチがまったく出せないということがあります。全部、太さも濃さも均一な線になってしまうのです。まぁ、アニメ調の絵ならそれほど問題にはならないでしょうけど・・・。線にメリハリをつけたい場合には、タブレットによる手描きで主線を起こすか、パスを使って描いたあとの線を、ブラシや消しゴムを使って丹念に修正していく必要があります。

 パスって結構難しいんだよね。最初はなかなか思い通りの線が引けなくってさ。ま、こればっかりは「慣れ」だからねぇ…

 ひとつコツを言うと「曲線の変わり目」と「曲線の接線方向」をよく見極めること。これを意識して作るようにすると、少しは分かりやすくなると思うよ。


 私は最近、ほとんどこのパスを使って主線を起こしています。下描きを元にパスを駆使して主線を起こしたのが下の絵です。

Fig.2 主線

Fig.2 主線
Fig.1の下描きを元に主線をパスを使って起こしました。

 なお、スキャナを使って絵を取りこむ場合、もう1つ別の方法を使って主線を作ることができます。紙の上で下描き→ペン入れまで済ませてしまい、これを取りこんでそのまま主線として使ってしまうのです。これは紙の上で絵を描きなれている人に最適の方法です。

 ただこの場合、線以外の部分を透明にする必要があります。絵を取りこんだら「フィルタ」→「色調補正」→「トーンカーブ/レベル補正」で、背景をできるだけ均一に白く、そして線はできるだけ黒くなるように画像を調整します。大体は「ガンマ値」の項目をいじるだけで十分だと思います。さらにこの段階で、絵の中の汚れやはみ出した線なども修正しておきます。修正が済んだら、「Photographer」の場合、「フィルタ」→「色調補正」→「白を透明に」とすれば絵の中の白い部分が一発で透明になるはずです。この機能がない場合は、背景部分の色を選択範囲とし(「ウルトラキッド」の場合「選択範囲」→「指定色域選択」)、消去してやれば同じ結果がえられます。

 主線ができたら下絵のレイヤを削除します。そして「主線レイヤ」に「透明部分の保護」をかけておきます。このように、編集の終わったレイヤには透明部分の保護をかけておく習慣をつけましょう。こうしておけば「しまった!」と思うことがぐっと減るはずです。



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