■ 貧乏人のためのCG講座 フルカラーCG編

はじめに

 一昔前に比べてパソコンの性能向上、低価格化が劇的に進み、今では誰でも簡単にフルカラー環境を手に入れられます。いわゆる「フルカラー」の環境では実に1677万色もの色を扱うことが可能で、その表現力、自由度は256色以下のCGとは比べ物になりません(「1677万色」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、馴染み深いRGBで言えば、R,G,Bそれぞれに256段階の階調があるということです)。ただ、それだけに「要求されるもの」はどうしてもややハイレベルのものになってしまいます。では、どんなものが必要なのでしょうか。

・マシン
 CPUはできるだけ高速なほうがいいのはいうまでもありませんが、最近の機種ではスピード的に問題のあるものはまずないでしょう。古めの機種でもPentiumクラスのCPUを積んでいるなら大丈夫だろうと思います。しかも、これに関しては「本人が満足ならそれでいい」という面があって、たとえ低速なCPUであっても「こんなもんだ」と思っていれば何とかなってしまうもののようです。

 むしろ重視すべきはメモリの量です。フルカラーCGはメモリを大量に食います。さらに、レイヤを使うとレイヤの枚数分だけの画像を同時に開いていることになりますから、メモリ消費量はさらに増えます。もし積んであるメモリが足りなくなると、コンピュータはハードディスクをメモリ代わりに使い始めます(いわゆる「スワップ」というやつです)が、ハードディスクはメモリに比べてデータの読み書きが圧倒的に遅いので、こうなるとパフォーマンスが極端に悪くなってしまいます。フルカラーCGをやるなら少なくとも64MB以上、できれば100MB以上は積みたいところです。

 ビデオカードは、最近ではどんどん新しいものが出て目移りしてしまいますが、2DCGに関して言えば、必ずしも最新のものである必要はありません。最近の製品は3D性能をいかに高速化するかを競っていますが、2D性能はもうずいぶん以前に頭打ちになってしまっています。よっぽど古いカードでない限り、スピードという点ではどれを選んでもそれほど大差ありません。MatroxのMilleniumシリーズや、ATiのRAGEシリーズなどは高画質で定評がありますので、これらを選ぶのも悪くないでしょう。もちろん、これらのカードでないと使い物にならないとかそういうことはありませんので念のため(^^;

 ディスプレイはCRT、いわゆるブラウン管を使ったものの方がいいです。最近では液晶ディスプレイも人気ですが、グラフィックという面から言うとあまりお勧めできません。その一番の理由は、色味が正確ではないということです。ノートパソコンを見たことのある人なら分かると思いますが、液晶ディスプレイは見る角度によって色が変わってしまうので、正確な色をつかみにくいのです。また、CRTより表示可能な色数が少なかったり、色ムラが生じやすいという問題もあります。こうした点を改良し、本格的なグラフィック用途にも耐えるようにした液晶ディスプレイもありますが、それらはたいてい非常に高価です。

・マウス・スキャナ・タブレット
マウスは普通のもので十分です。スキャナも下絵の取り込みに使うだけなら、それほど高性能なものである必要はありません。光学解像度で300dpiもあれば立派に使えます。タブレットはフルカラー環境で最大の威力を発揮します。筆圧やペン先の細かいニュアンスを読みとってモニタ上に再現してくれますので、手描きに近い質感を表現できます。本格的にフルカラーCGをやるなら、ぜひとも揃えたい機器です。

・ソフト
フルカラーCG作成用のソフトとしては「Photoshop」と「Painter」が両巨頭です。「Photoshop」は正確には絵を描くためのソフト(ペイントソフト)ではなく写真などを加工するためのソフト(フォトレタッチソフト)なのですが、多彩なフィルタやプラグイン、高度なレイヤ管理機能などを備えており、事実上の標準ツールのようになっています。一方の「Painter」は実在の画材をパソコン上でシミュレートすることに重点が置かれており、「Photoshop」とはかなり趣を異にします。どちらかというと「Photoshop」は絵を「作っていく」、「Painter」は「描いていく」といった感じです。

しかし、両者ともいかんせん高価です。特に「Photoshop」は実売価格が8万円以上もしますので、おいそれとは手が出せません。いいソフトには違いないんですが・・・。

最近は低価格でもかなりの機能を持ったソフトが出ていますので、最初の一歩としてこれらを使うのは1つの手です。代表選手としてはJasc Softwareのシェアウェア「Paintshop Pro」、アイフォー(旧・アスキーサムシンググッド)の「ウルトラキッド Ver.2.0」や「HYPERKiD」、「Fanfare Photographer」、市川ソフトラボラトリーの「DaisyArt98」などがあります。ただし、レイヤ機能を持ったものでないと、本格的なCGを描く際に苦労することになります。レイヤ機能の有無は必ずチェックしてください。

 一方、Windowsで動作するフリーのフルカラーエディタというのは数えるほどしかありません。レイヤ機能もサポートしたものとなると、現状ではKiriman氏作の「Hyper Paint」と株式会社「匠」が作った「Pixia」くらいでしょうか。「Hyper Paint」の方は設計思想が少々古く、操作性にもかなり癖があるのでなじめない人も少なくないんじゃないかと思います。「Pixia」は最近のグラフィックエディタの流れを取り入れた作りをしていますので、今から始めるのならこちらの方が、後々のことを考えるといいような気がします(これはあくまで私の主観です。色々試してみて、自分が描きやすいと思ったものを使うのが一番です)。これらのソフトについての詳細は「おすすめツール集」の方をご覧下さい。

あと、番外編としてUNIX上で動作する「GIMP」というソフトがあります。「Photoshop」に勝るとも劣らない機能と拡張性を持ちながら、フリーウェアという、ものすごいソフトです。UNIXの導入を厭わなければ、こういう手もあります。

cf.
 現在、GIMPのWindows版の開発も進んでいます。まだテスト版の段階ですが、期待大です。ここからダウンロードできます。




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