今回は大容量のバックアップということで, テープ・ドライブに対応したバックアップ・ソフトである「Retrospect」, 「ARCserve」, 「SoftBackup II」, そして「The Norton Utilities for Macintosh 3.1」(NUM3.1)中の「Norton FastBack」の4製品を 取り上げる。
4製品の比較を 表3に示しておく。
バックアップは, ボリューム(ハード・ディスク全体か, 分割していれば 各パーティションを 意味する)単位でも フォルダやファイル単位でも可能だが, 実際にはボリューム単位でやるのが普通だ。 バックアップ・ソフトは, バックアップの対象を まとめた「セット」という概念を 持つ。 このセット単位で差分バックアップなどを 行う。 バックアップ・ソフトは, セットに含まれるフォルダやファイルの索引用データベースを 作る。 したがって, あるセットにどんなデータが保管されているのかはすぐに分かる。 このデータベース自体はハード・ディスク上に作られる。 誤って消した場合でも, 時間を かければテープに記録した内容から再構築できる。
テープからファイルを 取り出すことを リストアという。 データベースを 利用することにより, ボリュームを 保存したときでも, ファイル単位でリストアが可能になる。
バックアップの手法はいろいろある(図10)。 最も簡単なのはボリュームを 丸ごとコピーするフルバックアップである。 しかし, フルバックアップは時間がかかるし, スペースも取る。 毎日フルバックアップするのは効率が悪い。 1本のテープに上書きする手もあるが, これではファイルの履歴が残らず, 3日前の状態に復帰するといったことができない。
図10 バックアップの手法はいろいろある
ここでは図のように定義したが, インクリメンタルや ディファレンシャルという呼び方は, ソフトによって異なることがある
そこで, 図10のように履歴を 残しつつカートリッジも少なくてすむ方法もある。 インクリメンタルは, 時間が経つにつれて保存すべきファイルの数も増えていくので, ある時期でリセットする必要がある。 ディファレンシャルはテープ容量がより少なくてすむが, ボリューム全体を 復活させるにはインクリメンタルよりも作業時間はかかる。
はっきり言って, バックアップは面倒である。 こまめにやっても, なかなか効果が現れないし(その方がよいのだが), 大容量のボリュームを テープにコピーするのは時間もかかる。 できれば, 手間を 掛けたくないのが本当のところだ。
このため, バックアップ・ソフトには, 必ず自動運転機能がある。 これを 有効に利用しない手はない。
ボリューム単位でのバックアップ/リストアや, 自動運転機能は, 今回紹介した4本のソフトにはすべて揃っている。 違いは, 例えば対応するドライブの数。 FastBackは, 今回用意したドライブを うまく認識してくれなかった。 またSoftBackup IIは英語版である点が弱い。 ネットワークに対応しているのはRetrospect RemoteとARCserveなので, 企業での使用を 考えると, この2本の選択になるだろう。 Retrospect RemoteとARCserveは, 機能的な違いは少ない。 ユーザー・インタフェースに特徴があり, 好みが分かれる。
最後に速度について。 各ソフトのバックアップにかかる時間を 測定してみた (図11)。 FastBackは前述の理由で掲載していない。 結果的に, 速度にそれほど差はなかった。 クライアントを ネットワークを 介してバックアップした実験では, ARCserveがβ版にも関わらず良い成績を 残した。