データを 守るために


  突然,ファイル・サーバー上にあるフォルダの1つが消えてしまった。 原因はユーザーの操作ミスだと思われるが, 詳細は不明。 通常の業務と兼任でサーバーの面倒を 見ている社員が, 1日がかりで復活作業を 行った。 ディスク・ユーティリティーを 駆使したものの, ファイルは完全に元通りにはならなかった。 この影響で, 業務にかなりの支障を きたした。




 上のような事態に陥ったことはないだろうか。 決して笑いごとではない。 このケースでは, 担当社員の1日の仕事, 当日の業務の遅延, 消失したデータの復元にかかる作業および費用など, 被害総額を 計算するとかなりのものになる。
 このような例以外に, 誤ってファイルを ごみ箱に捨ててしまった, データの編集中にマックのシステム・エラーが起こり入力した内容を 失ったというようなケースは, ほとんどの人が体験していると思う。


データ破壊の危険はどこにでもある

 マックに限らず, コンピューターを 業務に利用している環境で 最も恐いのはデータ破壊である。 アプリケーションなら消えてしまっても 再インストールすれば済む。 しかし長い時間を かけて入力や解析したデータが 使えなくなった場合の被害は計り知れない。
 主なデータ破壊の要因とその対策方法を 図1に示す。


図1 主なデータ破壊の要因と対策

 対処方法の基本となるのはデータのバックアップ, つまりデータのコピーを 保管しておくことである。 これは, いかなるケースでも役立つ汎用的な手法だ。
 データを 保管するハード・ディスクのトラブルに備える方法もいろいろある。 機械的なトラブルに対する手法としては, ミラーリングやRAIDがある。 突然ハード・ディスクがマウントできなくなったり, 誤ってファイルを 消してしまったといったソフトウエア的な問題に対しては, 市販のディスク・ユーティリティーを 使う手もある。  電源トラブルにも注意が必要だ。 特に, 使用頻度の高い重要なデータを 保管するファイル・サーバーを 守るためには重要だ。 停電に対しては, 無停電電源を 使うのがよい。
 このように, トラブルの対処方法はいろいろある。 しかしながら, ビジネスでマックを 利用している企業でも, データのバックアップまできちんとしているところはまだ少ない。
 このようなバックアップや無停電電源装置などは, すぐには効果が現れにくい。 しかし, 実際にデータ破壊が起こってからでは遅いのである。 一度, データ破壊に遭遇した企業では, バックアップなどの措置を 取っているケースが多い。


バックアップならテープ・ドライブがベスト

 ハード・ディスクの低価格化は激しい。 現在では540MBクラスが5万円, 1GBクラスが10万円程度で購入できるようになった。 LAN上にあるファイル・サーバーはもちろん, ローカルのハード・ディスクも大容量化している。
 ハード・ディスクの内容全体を バックアップするには, それと同程度の容量の記憶装置が必要になる。 記憶装置には, 3.5インチや5インチのMO(光磁気)ディスク, 米SyQuest社製のリムーバブルHDD, テープ・バックアップ装置(DAT, 8mm, QICなどがあるが後述), 一度だけ書き込み可能なCD-ROMであるCD-Rといろいろある。 代表的な記憶装置の容量と価格のグラフを 図2図3に示す。



図2 主な記憶装置の容量とドライブ価格の比較


図3 記憶装置の容量とメディア・コストの関係

 GB単位のデータのバックアップはどうすればよいか。 3.5インチMOやSyQuestでは容量が足りないし, 5インチMOは価格が高い。 現時点での最も賢い選択肢としては, テープ・ドライブということになる。
 このほか, ドライブ自体はまだ高価だがCD-Rも面白い。 CD-Rはバックアップだけではなく, 更新はしないが参照は必要なデータを 保管しておくケースにも使える。 テープと違って, 出来上がったディスクはCD-ROMと同様に扱え, LAN上で共有できる点も魅力的だ。





個人ユースでのバックアップ

 個人向けバックアップといっても特殊な方法があるわけではない。 1つだけ言えるのは, 個人ユースのマックにとってバックアップは非生産的行為である。 個人が使用できる時間もお金も限られている。 できるだけ手間と予算を 掛けないのが個人向けバックアップの基本である。
 マックの内蔵ハード・ディスクは200MBから500MBクラス。 これらを 全部バックアップするのは大変だ。 大切なファイルだけを バックアップすることを 考えよう。 例えばシステムフォルダだ。 しかし, 今や漢字Talk7では標準で50MBもあるシステムフォルダを すべてバックアップする必要はない。 コントロールパネルや機能拡張, 初期設定の各フォルダを バックアップすれば, 基本的な環境は保存できる。 さらに最近のかな漢字変換は自動学習機能があるので, かな漢字変換用辞書(メイン辞書と, あればユーザー辞書)もバックアップすべきだ。
 個人ユースと考えれば, バックアップ先の基本はフロッピー・ディスク。 しかし, 最近はかな漢字変換辞書だけでも2MB以上のものがある。 フロッピーに保存する場合は, 分割保存機能を 持ったバックアップ・ソフトや圧縮ソフトを 使う必要がある。 MOドライブがあれば, バックアップ・ソフトや圧縮ソフトを 使用せずFinderの機能だけでもバックアップできる。
 個人の場合は短期的に行う必要はないが, せめて半年に一度, もしくは大幅にファイルを 出し入れしたりディスクを 最適化するなどディスクが不安定になる可能性のある場合に実行すればよい。
(北谷 一人)