マックを電源事故から守る 無停電電源装置


 停電はパソコンの天敵である。 データを セーブする前に電源が切れると, 入力した結果が無駄になり再入力ということになる。 時間もコストも馬鹿にならない。 ハード・ディスクのアクセス中に電源が切れたら, 下手を すると既存ファイルまで壊れてしまう。 これを 防ぐには, 無停電電源装置(UPS, Uninterruptible Power Supply)を 使うとよい。





停電時に内部バッテリーに切り替えるUPS

 UPSは, いわば大きな蓄電池(図21)。 停電が起こった場合には, 警告音で事故を 知らせるとともに自動的に内蔵バッテリーに切り替わり電源を 供給する。 このため, 停電が起こっても作業できるわけだ。 UPSが電力を 供給する時間は, UPSの容量により異なるが5〜30分程度。 持続時間が長いものほど価格も高い。 5分程度のモデルだと常に人間がパソコンのそばにいる状態でないと実際は意味がないが, 価格は2〜6万円と手ごろなので, 個人用あるいは会社のクライアント機に向いている。 もしくは, 後述の自動的にシャットダウンさせるソフトを 使うとよい。

   図21 無停電電源装置の例 (写真はAPC社の Smart-UPS)。 背面には, シリアル・インタフェースも 付いている

 UPSの役割は, 単に電源を 供給するだけではない。 サージやノイズといった電源の不安定な要素を 吸収するフィルターなどの機構も含まれている。


UPSは大きく分けて2種類ある

 UPSの機構を 大きく分けると, 常時商用電源方式と, 常時インバーター方式になる。 低価格のUPSは前者である。 両者の違いを 図22に示す。

   図22 常時商用電源方式と,常時インバーター方式の違い

 常時インバーター方式では, 電源が常にバッテリーを 経由するため大型のバッテリーが必要になる。 また, 電力の損失も大きく発熱量が多い。 このため冷却機能も必要になる。 これらの理由で, 価格が高くなるわけだ。 機能面から考えると, クライアントであれば常時商用電源方式のUPSでよい。 サーバーなど重要度の高いものは, 常時インバーター方式のUPSということになる。
 当然のことだが, UPSは出力電力容量によって, モデルが異なる。 UPSの電力容量は, 普通VA(ボルトアンペア)という単位で記録されている。 マック本体やハード・ディスクなどの周辺機器は, W(ワット)が使われている。 両者は異なる単位なので換算が必要だ。 おおざっぱにはVA=1.4×Wで計算すればよい。
 UPSの最大電源容量と, UPSに接続する機器の総電力容量によって, 電源切断までの時間は変わってくる。 同じ容量のUPSでも, 接続する機器の総電力容量が少ないほど持続時間も長い。 UPSを 使用する場所の温度によっても, 時間は変わってくる。 これについては, UPSのカタログに負荷容量と持続時間の関係を 表したグラフが掲載されているので参考にするとよい。 当然のことだが, UPSの電源容量以上の機器を 接続してはいけない。


サーバーには監視機能の付いた製品を

 サーバーは常に人間が近くにいるわけではないが, 最も事故対策に万全を 期する必要がある。 UPSは事故が起こったときに警告音は鳴らしてくれるものの, それだけでは不十分だ。 近くに管理者がいて, すぐに復旧できるとは限らない。
 例えば, 自動シャットダウンのような機能は必須だ。 無停電電源のバッテリーが切れる前に自動的にシャットダウンして, データ破壊を 未然に防ぐ機能だ。 サーバーに事故が起こったことを 管理者にポケットベルなどで知らせる機能もほしい。 UPSの電圧変動などを 管理する機能もあるとよい。
 サーバー向けには, 情報を パソコンに送るためのシリアル・インタフェースを 持つものを 選択するべきだ。 マックの場合, システムではなくアプリケーションで対応するのだが, 意外にこの手のソフトは少ない。 米国ではMacWarehouseなどの通販で売られているものもある。 しかし日本国内に代理店があるのは米APC社ぐらい。 しかも, ソフトは英語版のままである。 APC社の「PowerChute」(1万5700円)を 利用すると, 停電などの問題が起こった場合には, 自動的にシャットダウンしてくれる。 その際には, サーバーにメッセージを 出すと共に, クライアントに向けてもサーバーがダウンする旨のメッセージを 送出する(図23)

   図23 米APC社の 「PowerChute」を 使っている様子


停電以外にも気を 付けたい電源トラブル

 停電自身は頻発するものではない。 これ以外にも気を 付けたい電源周りのトラブルがある。 例えば, 雷などが原因で起こる瞬時電圧低下。 数百ミリ秒間, 電源が落ちることがある。 パソコンでは停電と同じようなダメージを 受けることがある。 これにもUPSは役立つ。
 UPS以外にも, 運用面で注意が必要なこともある。 例えば電源コンセントの配線。 ある部署が電源に過負荷を かけてブレーカーを 落とした場合, 電源のラインが同じだったために別な部署も同時に停電することがある。 他部署に迷惑を 掛けてしまっては大変だ。 同じ電源コンセントに大容量の機器を つなぐのもよくない。 実際にあった例だが, あるときコーヒー・メーカーのスイッチを 入れたとたんブレーカーが落ち, サーバーの電源まで落ちてしまった。 コーヒー・メーカーとサーバーのコンセントが同じラインだったのが原因である。 このほか, 例えばケーブルに足を 引っかけて抜いてしまうなど, 人為的なミスにも注意したい。



表6 主なUPSメーカー一覧