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Text File  |  1996-12-25  |  18KB  |  107 lines

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  4. (司会者が本日の予定と発表の概要を読み上げる)
  5.  
  6. 司会●当社のCEO,Gilbert Amelioをご紹介いたします。(会場拍手)
  7. Gilbert Amelio(Apple CEO)●みなさん,こんばんわ。まず最初に,祝日前の金曜日にお越しいただき,ご列席いただいている皆様に大事な食事や家族との大切な時間を取り上げてしまったことをお詫びいたします。しかし,今回の発表はそれに値するものだと信じており,同時にエキサイティングなものになると思われたので少しでも早くみなさんにお伝えしたいと感じました。
  8.  さて,すでにご存じのとおり,我々はOS戦略において少しでも前進できるよう努力してまいりました。別に隠してきたわけでもないので,色々と話は聞いていたかと思いますが,当社ではその件に関して複数の選択枝を模索しておりまして,正直に申しますと,そのことに多くの労力を割いてきました。
  9.  選択枝の一部は報道され,また別のものは報道されなかったというのが真実です。ただ,その選別においてはかなりの考慮と検討を労したことだけははっきりと断言できます。そしてたどりついた結論は,我々にとって非常に喜びに満ちたものになりました。つまり,何の疑いもなく,NeXT社の技術はかなりの度合で先進的であり,同時にもっとも重要なことはApple社の技術と補完し合っているということであり,両社が1つになることによって1社ではなしとげることができなかった価値と活力を生み出すことが可能になるということです。いずれにしても,NeXT側と一緒になることを話し合いまして,ここ数ヵ月間はSteveと多くの時間を過ごしつつ,多くの点で合意に至り,ここでApple社によるNeXT社の買収という結論に到達しました。
  10.  我々はSteveがNeXT社で育ててきた強力な開発チームの存在に興奮しておりまして,彼等を含めたNeXT社員を招くことができることをうれしく思っています。彼等はNeXT社の技術と同じく貴重な財産になるであろうし,Apple社の創業者も一緒に帰ってきますので,大変エキサイティングなニュースであると思うのですが。
  11.  
  12. 会場からの声●NeXT側は何を提供するのか?
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  14. Gilbert Amelio●技術面での支援ばかりではありません。まず1つ目の利点は,インターネット関連ソリューションの提供です。周知のとおり彼等の技術はインターネットに対する親和性と処理能力に関して非常に優れておりまして,とくに際立っているまま。2つ目は,エンタープライズ(企業ユーザー)分野での立場が強化できるということです。NeXT社は過去数年間にわたりクライアント/サーバー型ソリューションなど,エンタープライズ分野での多くのソリューション提供を果たしており,Apple側で今まで行なってきたデスクトップ型ソリューションとうまく補完し,顧客から開発者に至るまで多くの発展が期待できると思います。そして司会者も言っていたことですが,もう1つは,Apple社がいままで社風としてきた独自技術への傾斜を,より業界の流れに添った形で行なえるという点でしょうか。NeXT側の技術は業界の向かおうとしている方向の中心へ引き戻すことができる高レベルな技術だと思います。
  15.  私も何度か申し上げましたとおり,当社のソフトウェアビジネスを飛躍させ,社内におけるその比率を高めることができると思います。顧客であれ,開発者であれ,両社の社員であれ,これはエキサイティングなニュースだと思います。これは他の選択枝と比較してもっとも補完的な選択であり,業界に新しいイノベーションを提供し,NeXT側の技術とApple側の技術によって次世代の技術を生み,業界全体の前進と成長に貢献できるでしょう。とくにそこで重要なのが,開発者たちに新しい環境を提供することで,彼等がまったく新しいクリエイティブかつエキサイティングなアプリケーション開発を可能にすることです。我々が考えるに,今回の進展は12年前にMacintoshが登場したときに匹敵するくらいの衝撃を開発者たちに与えることができるでしょう。
  16.  それからもちろん,顧客のことですね。我々の顧客はこれにより得るものが多いはずです。今後色々と進行してゆくに従って判ってゆくかと思いますが,従来のあらゆる技術を駆使しても不可能だったことが可能になり,それによって効率が上がり,コンピュータ操作からより多くの価値を得ることが可能になるでしょうから,我々も大変興奮しています。このようにNeXT社買収はソフトウェア・技術面での意味合いが重く,最大の焦点です。しかし,それ以外にも,繰り返しになりますが,多くの優秀な人材を獲得でき興奮しており,それからSteve Jobsの復帰もです。Steve,こっちへ来てくれ。
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  18. (会場大きな拍手,20秒後,拍手がようやく鳴りやむ)
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  20. Steve Jobs(ex.NeXT CEO)●ここ数日ほとんど起きていたので,いままでの話と前後してしまうかもしれませんが...。NeXT社,まあGilbertがさっき話していた補完的な関係というのが今回の話に至った最大の要因ですが,NeXT社は通常であれば株式公開への道を進むはずでした。しかし,今回の話を聞き,我々にとってもっとも良い居場所であると結論づけたのです。私と一緒に働いてきた多くのNeXT社員は,もう一世代分もこの技術に注力してきました。かなり先進的なモノです。
  21.  NeXTを使ったことがある某開発者に会ったとき,彼は私に2つのことを言いました。まず1つ目は,「これは私が生涯で使ったきた製品の中でもっとも優れた開発環境だ。他の人もこれを一生使ってほしいくらいだ」ということ。2つ目,「なんとかこれをより多く拡販するように努力してくれないか。それができれば,私もこれから気がねなくずっと使えるのに」という要望でした。
  22.  正直な話,我々はこの製品を大量に販売することには成功しなかったので,Apple社の優れた方々と協力してこの技術を多く広めることが最良の選択だと思いました。Apple社は革新的な製品を生み出すことに注力してきた会社であり,たとえばApple IIやMacintoshなど,業界が過去10年間土台としてきたものを世に出しました。そして今,誰かが新しい技術を生んで業界を前進させることが必要で,Apple社以外の候補はいません。だから,我々はApple社と一緒になることに大変興奮しており,私自身もApple社のパートタイム社員としてGilbertのために働き,製品の移行を促進することを大変喜んでいます。
  23.  昔の同僚や新しい人々と会うことも楽しみですし,まあ,とにかくGilbert達と一緒に働けることをうれしく思っています。少し時間をいただければ,数多くのNeXT社員が会場に参列しているので,お許しいただければちょっと立って顔を見てもらいたいのですが...。我々にとって今日はなかなかの晴れ舞台なので...(立席,会場拍手)。
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  25. Amelio●あなた方と一緒に働けて光栄です。
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  27. Jobs●ありがとうGilbert。
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  29. Amelio●繰り返しになりますが,私とSteveはこの件で数週間共に過ごしてきました。別に初対面というわけではなかったのですが,彼のことがより多く理解できたような気がします。その彼が当社に貢献できることを想像しただけで興奮しました。彼は単に想像上で作り上げられたビジョン提供者ではなくまさに本物であり,彼は業界の発展源となった以前の価値感をそのままのかたちで守ってきました。ここ数週間の彼を言葉で表現するのが難しいのですが,彼との議論に使ったホワイトボードには色々な絵や概念が描かれ,私自身ここ数年間においてもっともエキサイティングな時間であったと感じています。今回の発表は多くの人間の努力を経たものであり,今後このようなホワイトボード上の議論を続け,Apple社での新たなルネッサンスを生み,前進とともに多数の結果をもたらすものと信じています。さて,Q&Aのコーナーに進みましょうか...。
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  31. (以後Q&Aコーナー。司会者が壇上のApple社役員立ちを紹介し...)
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  33. Los Angles Times女性記者●そもそもこの話の発端はどこからきたのですか?(会場から失笑)
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  35. Amelio●それは私があなたに聞くべき質問ではないのかな?(会場爆笑,拍手)つまり,単純なことだったのです。Steveと私はお互いにコンタクトを取り,1対1で数回会って,話し合ううちにお互いの可能性が大きいことを知り,結果としてこのようなかたちで開花したということです。短絡的なことをいえばそんな感じかな。もっと具体的な言い方をすると,当社がOS戦略において複数の選択枝を考えたときに,NeXT社の存在を無視するわけにはいきませんでした。当初,我々はNeXT側が提供している技術すべてに精通していたわけではなかったと言えます。それが,まるで花びらが徐々に開いてゆくように,相手側の技術の真価を知れば知るほどお互いが補完し合う関係であることが明確になってきたのです。そして最終的には「人物」で決まりました。突き詰めたら,最後はSteveと私だったというわけです。
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  37. Jobs●そのことでおかしな話があるのですが,奇遇なことにNeXT社も私もGilbertもこの話を同じ時期に意識し始めたのです。雑誌等でApple社が次期OSを探しているという話を読んでいましたが,同じ頃うちのマーケティング部の血気盛んな若い連中の1人が「Apple側で当社製品を採用してくれたらいいのに」と考え,勝手にApple社内のEllen Hankock女史に電話したのです。通常,この業界の重役連中ならそんな若造の電話に返答しないのに,Ellenはわざわざその若造に電話してエンジニア同士の会話を始めたのです。私は社内でそんな事が起こっていることすら知らず,ある日突然Apple社のエンジニア3名がうちのエンジニアたちに会いに来社して度肝を抜かれたというのが真相です。並行してそんなことになっていたというのが今でも不思議です。
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  39. San Hose Mercury News記者●(攻撃的に)私がNeXT社のプレス関係資料を読んでいたところ,『WIRED』誌2月号であなたは「デスクトップコンピュータ業界は死んだ。技術革新もほぼ絶えた。Microsoft社は少ししか技術革新ができず,そのわずかなものすらApple社の功績を踏台としてできたものだ」とか他誌でも同様なコメントを残していますが,今回に至るにはどのような心境の変化があったかお聞かせください。
  40.  
  41. Jobs●そう,インタビューを受けるというのは危険なことだ(会場笑)。心境の変化は純粋に私個人のもので,どちらかというと自分を変えるための挑戦であるともいえます。コメントでもあるように,個人的にはこの業界を前進させているのは技術革新です。とくに最近私を憂鬱にさせたのは,業界が技術革新を軽視し始めたことなのです。なぜかというと,Macintoshとそれ以降の製品にみられるように,一部の人間が他社の製品を真似るほうが楽であると知り,そのためかApple社までもが数年間枯渇したような状態にありました。私見では,そのような考え方が業界の発展を鈍化させていると考えられるので,それを直そうと思ったのです。技術革新は非常に難しく,多くの人材とエネルギーや資質の融合を必要とします。
  42.  NeXT社が開発した製品は虚像でもなくデモ製品でもなく,もっとも質が問われかつ要求が激しいとされている企業ユーザーたちを中心に過去数年間にわたり出荷してきた実在の製品です。これは非常に成熟したモノであり,これからは人々が考えているよりも早く出荷できるはずです。これにより業界を前進させ,Apple社とすべての物マネどもをこれからの10年間も潤すことができるでしょう(会場笑,拍手)。
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  44. Amelio●我々もそれで「B」プランから「A」プランに変更しました(会場,最初にその意味が判らず,徐々に笑いが起こる)。私も技術屋の1人なのですが,ときとして先進的な技術はその先進性のため市場から受け入れられないということがあります。私自身,CCDという技術をかなり前に発明した経験がありますが,当時はまだ時代が追い付かないということで受け入れられませんでした。しかし,今ではカメラに内蔵されてあちらこちらで見かけるようになりました。70年代では受け入れられなかったものが80年代になって芽を出したわけですが,この事はNeXT社の技術に関しても同じ状況であると考えています。つまり,2つの補完し合う技術があって,使われすぎの感がありますが「1+1=3」という図式が今回の契約に当てはまると思うのです。そこがもっともエキサイティングなところであり,同時に絶好のタイミングであると考えています。(拍手)
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  46. MacWEEK誌●いつ出荷するのか?
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  48. Amelio●NeXT社の技術はすでに完成したものです。ですから,課題は与えられた部品を統合することです。1997年中にはそれを実現したいと考えています。
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  50. MacWEEK誌●Apple製のハードウェア上で?
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  52. Amelio●そう,Apple製のハードウェア上で。(会場大拍手)
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  54. USA Today紙●金額面の詳細,経営陣の変更の詳細,Jobs氏の肩書き,そしてこのような状況下でPIXAR社との今後の関係を教えていただきたいのですが?
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  56. Amelio●Steveの担当は彼の返事に任せるとして,他は私が答えることにしましょうか。契約の内容はプレス材料に掲載されていなかったっけ?
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  58. 司会者●いえ,掲載していません。
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  60. Amelio●では,数字はおおまかにいうと3.5〜3.7億ドルです。細かい数字は資産の計算などがありますのでかなり複雑になりますが,おおまかに言ってそんな金額です。Steveの肩書きは会長兼CEOの,つまり私のアドバイザー役です。会社の方向,投資すべき技術の選定,個別の選択枝の収集,その他浮上してくる多くの事を彼に任せることになります。当初からかなり複雑な構造にすることはお互いに避けたいと考えているので,あまり複雑で高圧的にすると開発する環境を損なう危険があると思います。そこがキーポイントであり,進行するに従って浮上してきた仕事や案件を彼に移行して,まあ任せる,という感じです。
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  62. Jobs●私は今まで色々なことをしてきまして,もちろんNeXT社とPIXAR社がその2大事業だったわけです。ただ,これからはApple社とPIXAR社という図式になるわけで,これからもそういう面でも貢献してゆきたいと考えていますが...。
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  64. Apple社担当役員●一応,みなさんに確認させていただきますと,金額的には3.5億ドルの内訳は発行済み株式および同オプションのよって占められ,支払いは現金と少額の株式で行われます。従業員年金および関連経費で0.5億ドルが負債として計上されていますので,合計で買収金額は4億ドルという計算になります。
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  66. USA Today紙●私の質問の一部が答えていただいてないようですが...。別の質問として,NeXT社はApple社内で別組織として収まるのか,そして既存のNeXT製品の扱い方針を具体的に説明していただきたいのですが?
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  68. Amelio●計画はNeXT社をApple社と融合することです。両社の社員がお互いに協力し,かたちとしてはNeXT側の遺伝子をApple社が引き継ぎ,新しい製品を生み出すことです。あまり答えになっていないかもしれませんが,これが私の答えです。OS戦略,根底となっている考え,方向性などの詳細は1月7日のMacworld Expoでのスピーチで明らかにする予定です。
  69.  
  70. Career Strategy誌●Steveに質問があるのですが,1984年当時にも質問させていただいたことですが,その時もあなたは「技術革新」という用語を使いました。たしかにMacintoshによってそれは実現されましたが,今回の合併話を別にして,今あなたが頭の中で考えている「技術革新」の具体例をお聞かせいただけないでしょうか?
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  72. Jobs●もちろん,かまわないよ。最初に注意していただきたいのは,Macintoshという技術革新はApple社から生まれましたが,それ以降のモノはすべて業界の開発者たちが生み出したものばかりです。LaserWriterやDTPを生んだPageMakerにしろ,DirectorやQuickTimeもそうです。実はこのような開発者たちが業界でもっとも重要な存在なのです。Macintoshはそのような優れた開発者たちの創造力や作品を実現する場を与えてきただけなのです。ですから,もっとも重要なことは他のプラットフォームでは作り上げることができないような作品を開発できる環境を提供することが重要で,その彼等が当社の顧客に他プラットフォームでは真似できないような価値を与えることです。
  73.  そのようなプラットフォームが大量に販売されることによって,事業としての整合性も増すのです。私が会ったほとんどの開発者たちが当社のNEXTSTEPおよびOpenSTEPは技術的に5〜10年先にいっていると感想を残しています。同時に人々はそれらを活用することでアプリケーション開発を5〜10倍効率よく行なえるわけで,これからも開発者たちにはかなりエキサイティングな環境を提供できるものと信じています。
  74.  
  75. 質問者(名称不明)●Apple社が昔から最大の長所としてきたのは,デジタルメディアコンテンツ分野における製品の豊富さでした。そして過去数年間はQuickTimeを含め,とくにそこを重点的に注力されてきましたが,SGI社などが強い3次元CGのレンダリング・モデリング製品では遅れていました。そこで2つの質問をしたいのです。まず新OSはそのような分野で先駆者たちを追撃できるような環境を提供してくれるのかどうか? そしてPIXAR社の優れたモデル変形技術がApple社にどのような貢献をするのか?という点です。
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  77. Jobs●現時点では何も固まった計画はありません。ご存じのようにApple社ではQuickTime Media Layerを中心に開発を推進してきたわけで,まあ残念ながら私はその技術に関してはほとんど把握していないので,数週間以内にはすべて叩き込まれるでしょうが(会場笑)。個人的な喜びとしてPIXAR社という事業があるわけですが,Apple社とPIXAR社はお互いに優れた技術を保持していますが,両社の関する可能性はまだまったく模索していない状況です。とりあえずお互いにいいコネクションができた,というところでしょうか。
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  79. Apple社担当役員●補足させていただきます。新OSを開発する動機の1つとして,特定分野の要求を取りこぼさないないようにしながら全体のパフォーマンスを上げるということがありました。ですから,メモリ保護・マルチタスクなどを,NeXT社の技術によってそれら基礎的な機能を実現することによってご指摘の要求を実現するということが可能だと考えています。
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  81. 質問者(名称不明)●Mac OSとNEXTSTEPの両OSの関係が明らかにされていないので質問させていただきます。当初,BeOSをMacintosh上に搭載してその上で既存アプリケーションを動作させるという話が存在しましたが,つまりそのNEXTSTEPのIntel版では別にWindowsアプリケーションが動作するわけはありませんよね? PowerPC版のNエXTSTEPも存在しませんし,一体どのような製品を出そうとされているのですか?
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  83. Amelio●なかなかいい質問だと思う。その詳細に関しては1月に発表しますから..。
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  85. 質問者●実のところ,あなたも知らないのでしょう?
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  87. Amelio●いえいえ,詳しくわかっています。ですが..
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  89. 質問者●じゃあ,なぜ答えることができないのですか?
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  91. Ameilo●ただ楽しみを1月7日まで取っておこうと考えているからです(会場笑,拍手)。とりあえずできるだけ質問に答えてみましょう。Mac OSと新しいOSには大きな違いが存在し,既存アプリケーションのユーザーにも大きな提案をすることになるということは確かです。
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  93. 質問者●十分です。どうもありがとうございました。
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  95. Jobs●ちょっと待って。つまり新OSが既存アプリケーションを動作させるのにどのような制約があるのか?という質問でしょう。優れたソフトが多いですから,そのような心配をするのも当り前です。
  96.  実はそれに関連することなのですが,NeXT社の製品はすでにCPUの種類を選ばないような設計になっています。Intel版もあり,試験的でしたがPowerPC上で動作テストしたこともありましたし,RISCボード上でもテストしたことがあります。つまりNeXT製品はハードウェアからほぼ完全に独立した設計になっており,新OSではApple社がハードウェアの制約から解放されるようにできると考えています。
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  98. 質問者(名称不明)●開発者に関する話がありましたが,NeXT側ではObjective Cを採用していますね。そこで不安なのは,今後われわれはObjective Cを使うことになるのか,それともC++になるのかということです。Objective Cは優れた環境だと聞いていますが,ユーザー数は少ない。その辺りのことをお聞かせいただけないでしょうか?
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  100. Jobs●当社では今まで従来言語を使っている開発者たちとの調整に多くの労力を費やしてきました。ですから,実際には最新のNeXTアプリケーションでは純正ANSIのCもしくはC++によって作成されているというのが現状です。もちろん,動的オブジェクト指向の恩恵を受けたいのであれば,動的メッセージ構造が必要となります。そこで当社が考えたのは,Larry Tesler氏なら知っているでしょうが,Objective CではSmalltalkの動的メッセージ構造を実現しつつ,ANSI C/C++コードとの互換性も維持されています。ですから,既存コードでもコンパイル自体は問題ありませんが,動的オブジェクト指向な環境の恩恵はオブジェクトを必要とし,それらはC/C++にはありませんので...。実はそこがもっともおいしいところなので,これからは開発者たちには喜んでいただけると思います。
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  102. Finalcial Times紙●Amelio会長は最近,Apple社の社風を一新し,より誠実な会社にすると発言されました。そこでApple社の父Steve Jobs氏に質問なのですが,その辺りのことでAmelio会長と議論はされましたでしょうか?
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  104. Amelio●まず私側の考えを述べましょう。当社のように売上100億ドル級の会社になりますと,さすがにきちんとした体制が必要になります。しかし,これは開発力や創造性に対する威嚇ではありません。もちろんやりすぎると官僚主義になってしまいますが,例えばよく使う比喩話として『3つの都市』があります。1つの都市は東京の下町のように住民以外は道がわからないという乱れ型モデル。2つめは網目状に道路が整備されてはいるが,交差点ごとに警官が交通整理と行なうというクリーン型モデル。3つめはルールがしっかり伝わっているだけで,移動時の判断はすべてドライバーに一任しているというモデルです。当社が目指しているのは3つめのモデルです。
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  106. (以後はMeteorworks社CEOの発表スピーチ等が続き,発表会が終了)
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