澄んだ冷たい視点から生と死を描き続ける

現代ホラー漫画を代表する新鋭作家

漫画家  御茶漬海苔


 現代ホラー漫画を代表する御茶漬海苔(オチャヅケノリ)氏は,『惨劇館』をはじめとして,『妖怪物語』,『魔夜子』,『恐怖テレビTVO』など,多くの怪奇作品を生み出してきた作家である。今回紹介しているイラストを見て多くの読者が恐怖を感じていると思うが,実際に氏の作品を読むと単に怖さを強調しているだけでないことがわかってもらえるはずだ。

 御茶漬海苔氏の作品には,スプラッタエンタテインメントといわれなながらも多くのドラマが演出されている。単純に怖がらせることを目的としたホラー漫画が多いなかで,家庭や愛情,恋愛,そして友情も描かれている。もちろん,ホラー漫画なので不幸な出来事が前提であるし,物語によっては凶悪な妖怪や殺人鬼なども登場する。ラストも心温まる話で終わることもあるが,ほとんどは惨劇の後の静けさであったり,永遠に抜け出すことのできない苦しみだったりする。しかし,どんな結末であっても読んだ後になぜか嫌みがなくどことなく爽やかな気持ちになれるは,氏が現代ホラー漫画を代表するといわれる所以ではなかろうか。ストーリーそのものには感情移入せずに,作品全体を澄んだ冷たい視点から描くことによって,一種の芸術ともいえる氏独特の世界観がそこには生まれているのだ。

 意欲的に新作を描き続ける御茶漬海苔氏にとって作品の完成度をより高め,従来は不可能だった表現を実現してくれる最強のツールがMacである。数日を要していたカラーイラストがわずか数時間に短縮されたというほどMacを使い込んでおり,恐怖感をより盛り上げるために色彩から一本一本の線に至るまで,神経質なまでに細かく描いている。CD-ROM MACLIFEでは,御茶漬海苔氏のインタビュームービーとともに誌面で紹介している作例をより制作環境に近い状態(モニタ)で見られるようにデジタルギャラリーとして収録している。紙のメディアでは決して見ることのできないデジタル画像の世界をぜひご覧いただきたい。

(C)御茶漬海苔

※Internet Explorer 4.0 PR1でご覧になられている方は,上の図版をクリックするとデジタルギャラリーがスタートします。その他のブラウザをお使いの方は「MACLIFE連載」フォルダ内の「電撃漫画術」フォルダに収録されている「御茶漬海苔ギャラリー」を直接クリックすれば,ご覧になれます。

●プロフィール

御茶漬海苔(おちゃづけのり)●漫画家。1962年神奈川県生まれ。1985年にデビュー。代表作に『惨劇館』(朝日ソノラマ),『妖怪物語』(ぶんか社),『クルクル』(ぶんか社),『恐怖テレビ』(ぶんか社),『魔夜子』(リイド社」)などがある。その研ぎ澄まされた感覚から生まれる作品は,ホラー漫画の新境地を開き高く評価されている。現在,各ホラー漫画誌で執筆中。