{ネットワークの概要} 2164年の太陽系は1つのネットワークによって結ばれている。 このネットワークはバイタルの圧縮技術によって太陽系の端から端までほとんど 瞬時にデータが転送できるようになっていて、回線はA〜Zまでの26回線に 分けられている。 なおそれ以前の電波による伝達方法は、宇宙服どうしのような簡易な伝達に しか利用されていない。 また他の惑星の施設にあるデータや公共機関のデータを利用したい場合はかならず このネットワークと接続しなければならないので、実質的にはローカルなネット ワークを構築する事は意味が無い。 {ネットワークの回線と個人の資格コード} ネットワークの回線は職種毎に割り当てられている。 宇宙軍はA〜E、商業回線はF〜Jが割当てられており、教育関係はK〜L、 軍を除く行政組織はM〜Qとなり、警察機構はそれとは独立してR〜Tを使っている。 なお又表向きはU以上が未使用だが査察局はZ回線を使う事になる。 宇宙軍には機密保持資格によってコードが最低ランクのAから最高ランクの Eまである。 よって同じ階級でも機密事項を知る資格の面からみると、必ずしも上級士官が 上になるとは限らない。 宇宙軍は軍用に割当てられているネットワークの専用回線の種類と機密 保持の資格レベルを一致させている。 資格の無い者が本人になりすましたり、適当なコードと番号を入力しても、 網膜チェックと併用して本人を確認する事からコンピュータへのアクセスや 回線を利用する事はできない。 なおネットワークとコンピュータへのアクセスとは本来別に扱われているが アクセスの為のコードはどちらも同じと言う意味である。 つまりAコードの者はA回線を、そしてBコードの者はB回線を利用している 事になる。 軍用コンピュータを使う場合を例にして説明すると、Fコードの者が軍の 未公開情報を引き出そうとしても開示されないが、商業情報なら軍用のコンピュータ からF回線を経由して手にいれる事ができる。 以上のようなアクセスコード以外にメンテナンスコードというのがある。 これはメンテナンス資格者に与えられた特別なコードで、その資格ランクによって 扱えるハードおよびソフトが限定される。 この資格はコンピュータを直接操作する資格であるので、同時にネットワークに 対するアクセス資格でもある。 ちなみに網膜照合システムを除く全ての回線とハードに無制限でアクセスできる 資格はA7一級コンピュータ技師の資格で、そのメンテナンス資格はA1になる。 また特定の情報の開示を求めない場合(例えばただの電話とか公開されている図書館の 資料調べ)等のような一般的なネットの利用では特にアクセスコードは求められない。 {ネットワーク社会の問題点} 22世紀に入ると人類の活動は太陽系全域に及んでいたが、それと共に ネットワークも充実していた。したがって個人の為のメールシステムも 充実しており太陽系のどの場所からでもネットを経由して個人宛のメール を取得する事ができた。(メールのアドレスはアクセスコードとは異なり、 幾つでも持つことができる) ところが実際に利用するのは移動者がもっぱら発信人となり受け手は それ以外と言う偏りを見せていた。 と言うのも移動先で臨時に設ける仕事上のメールボックスを優先的に 利用するのと、新しく移動先に作ったメールボックスに過去に作った ボックスをリンクさせてしまって、私的なメールを阻害してしまう傾向 にあったからだ。 特に宇宙軍の整備関係者はあちこちの基地施設へ常時移動しているので この傾向が強く、家族でも向こうから連絡してこない限り一度連絡が取れ なくなると、まずメールでは連絡が取れなくなる。 {網膜照合システム} 網膜照合による本人確認は22世紀以降もっとも普及したシステムの一つだ。 対象となる全太陽系の住民の網膜パターンデータは通常のコンピュータ システムとは切り離されたシステム上に保存されていて、一般のシステム から照会がある(この場合センサーで読み取ったパターンを送る)と、 それに該当するパターンが誰であるかと言う結果だけを返す。 あとは各セキュリティシステム上の登録と返ってきた結果が一致すれば 鍵が開く仕組みになっている。 過去に開発された網膜照合によるセキュリティシステムと異なるのは、 読み取ったパターンをセキュリティ毎に登録したパターンと直接照合 させない点である。 又、保管されている網膜パターンのデータの登録、削除、更新は本人 の複数の部分から採取した遺伝子情報と細胞組織片を鍵にするので実質的に 本人以外の者が書換える事は不可能であった。 網膜照合システムのセンサーはコンピュータの端末やドアの周囲等至る所に 設置されていて、認識が必要な場合はオートで網膜パターンを写し撮るように なっている。 これはちょうどお店のレジにある商品のバーコードを読み取る装置と似た原理 になっていて、人が特に意識して装置を覗き込む必要は無い。 宇宙船のような隔離された場所でもこの網膜照合システムは常時繋がっている。 が、万一の事態に備えて宇宙船の場合は出発直前に搭乗者分のデータを船内の 専用ネットのコンピュータに複写してきて、実質的に船内に網膜照合システムと まったく同じ環境を作り上げる。