【ワシントン26日=飯山雅史】一九五〇年代に始まった米中央情報局(CIA)による自民党への秘密資金援助疑惑で、CIAは同党だけでなく、民社党の故西尾末広委員長(当時)にも資金援助していたことが、米外交史学者の研究で明らかになった。
この学者は米アリゾナ大学歴史学部のマイケル・シェラー教授で、新著「改造された国家(仮訳)」の中で事実関係を指摘した。同教授は国務省公文書解禁審査会委員のため未解禁文書も閲覧できる立場にあり、「こうした文書も含めて、総合的に判断した末の結論だ」と話している。
同書によると、米国と自民党はマルクス主義の影響力が強い社会党の分裂を狙って、五八年ごろから社会党右派の西尾氏への秘密資金援助を開始。同氏は日米安保条約をめぐる路線対立で同党を飛び出し、六〇年一月に反共と議会主義を旗印にした民社党を結成した。
その後、安保改定の騒乱に危機を覚えたアイゼンハワー大統領(当時)は「日本の無政府状態と中立主義への傾斜を防ぐため、CIAに行動の開始を指令」。これを受けてCIAは、自民党への秘密資金援助継続とともに、欧州型社民勢力を育てるために民社党の西尾委員長と社会党穏健派の支援を強化。全学連に対抗する右翼団体にも資金協力を行った、としている。
同教授はこれまでも、CIAによる社会党右派への資金援助を指摘してきたが、西尾氏の名前を明記したのは初めて。
(9月27日14:25)
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