■ 貧乏人のためのCG講座 アラカルト編

GIFの特許問題

 256色以下の画像を保存するときによく使われるのが「GIF」(Graphics Interchange Format)というファイル形式です。この形式はもともと1987年にアメリカのパソコン通信ネットワーク「CompuServe」で提唱されたフォーマットで、65535×65535ドット、256色までの画像を扱うことができます。

 GIFは、CompuServeが仕様を無料で公開したこと、また、パソコン通信でデータをやり取りすることを前提に考えられたフォーマットなので圧縮率が高いことなどから、急速に普及していきました。インターネットの時代になってもその地位は揺るがず、例えばWebブラウザの元祖とも言うべき「Mosaic」ではGIFのみが標準の画像形式としてサポートされていました。

 これは余談だけど…「Mosaic」はイリノイ大学のマーク・アンドリーセンたちが中心になって開発したWebブラウザで、今のブラウザの原型とも言えるものなのね。当時はWebページを見ることを「モザイクを見る」って言ってたぐらいの大ヒットソフトだったらしいよ。

 で、のちにアンドリーセンたちは会社を作って新しいブラウザを作ったんだけど、これが何を隠そう、あの「Netscape Navigator」なんだよね。ちなみにNNの愛称の「Mozilla」ってのは、NNに「Mosaicを食っちゃうくらいの怪物」に育ってほしいってことで、Mosaicとゴジラをかけて命名されたらしいよ。


 ところが、1993年になって事態が急変します。実はGIFで使われていた「LZW(Lempel-Ziv Welch)圧縮法」というデータ圧縮技術はアメリカのUnisys社の特許だったのです。GIFに自社の特許技術が使われていることを知ったUnisysはCompuServeに対し、特許料の支払いを求めました。1994年6月、話し合いはCompuServeがUnisysに特許料を支払うことで合意に達し、年末にこのことが公表されました。これ以降、GIFを扱うアプリケーションはUnisysとの間でライセンスの契約を結ばなければならなくなりました。

 もっとも、当時Unisysは非営利のGIFアプリケーション(いわゆるフリーウェア)、そしてエンドユーザーからはライセンス料を徴収しないという方針を表明していたこともあって、一般ユーザーのレベルではそれほど大きな騒ぎにはなりませんでした。

 ところが、1996年ごろからUnisysはフリーウェアに対してもライセンス料の支払いを求めるようになってきます。これを受けて、あるソフトはGIFのサポートを断念し、あるソフトはシェアウェア化し、あるソフトは公開中止に追い込まれました。さらに、1999年の8月ごろ、Unisysはライセンス契約を結んでいないソフトウェアで作成されたGIF画像を使用しているWebサイト運営者から、特許使用料として一律5000ドルを徴収するという方針を発表しました。つまり、GIFは何らかの形でお金を出さない限り、使用できなくなってしまったのです。

 法律的に言えば、特許技術の利用者から特許料を取るのは当然ではあるんだけど、なんかスッキリしないよね。取るんだったら最初から取ればいいのにさ、インターネットで世界中に広がってから「実はあれはウチの特許です。使うなら特許料払ってください」なんて、いかにも商魂丸出しで、イヤな感じっ!

 ただ、勘違いしてはいけないのは、すべてのGIF画像が自由に使えなくなったというわけではない、ということです。どうも、このあたりを誤解して「GIFを使うと罰金を取られるらしい!どうしよう!」とパニックに陥っている人が多いようですが(そもそも「罰金」って言ってること自体、正確な情報が伝わってない証拠ですよね(^^;)、Unisysから正式なライセンスを受けたソフトで生成したGIF画像なら、何の気兼ねもなく使用することができます。おそらく、最近市販されているソフトでGIFを扱う分には問題ないのではないでしょうか。もちろん、万全を期すなら、それぞれのメーカーに問い合わせなければなりませんが・・・。

 また、GIF画像だけからでは、それが何のソフトで生成されたかを知るのは難しいですし、それを調べるにはUnisys側も時間と人件費を使わなくてはなりません。現在、Web上にいったいいくつのGIF画像があるのか知りませんが、とても調べきれるものでないのは明らかです。ですから、Unisysとしては確実にお金の取れそうなところ・・・いわゆる「ポータルサイト」のような大手サイトをターゲットにするものと思われます。実際、Unisysの主任特許顧問のMark Starr氏は"We're focusing on the larger Web sites and portals, which are using these technologies that are clearly unlicensed."(「私たちは、より大きなウェブサイトやポータル・・・明らかにライセンスを受けていないこれらの技術(LZW圧縮法を用いている技術)を使っているこうしたサイトに注目している」)と言っているので、いきなり個人のWebサイトに対してライセンス料の支払いを求めてくるような危険性は、現実には少ないと思います(別に無断利用を推奨しているわけではありませんので念のため(^^;)。

 ただ、今のところは大丈夫そうとはいえ、いつまたUnisysが方針を変えてくるか分からないので、この問題については心の片隅に置いておいた方がいいと思います。また、企業の方の場合、一応、使っているソフトについてはチェックされておいたほうがいいでしょう。

 なお、こうした問題を回避するためにGIF形式の画像をすべてPNG形式にコンバートするというのは1つの有力な手段です。しかし、PNGが表示できるのはInternet Explorer4およびNetscape Navigator4以降のブラウザに限られること、アニメーションGIFに相当する機能がPNGにないこと、Netscape Navigator4は透過PNGに対応していないこと、Internet Explorer4や5にはグレースケールPNGを正しく表示できないバグがあることなど問題も多いので、そのあたりを正しく理解した上で利用する必要があります。


参考サイト

注)
 「お約束」ではありますが・・・ここに書いてある内容にはHIROPONの個人的な考えも含まれています。GIFを使う、使わないはあくまでも各個人の責任で判断してください。この点についてHIROPONはなんら保証をするものではありません。



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