朝から鍋物をこさえる母


洗ったばかりの顔に湯気がもうもうとあたる。
ハクサイを味ポンにつけて椀のふちでぬぐいつつ、
ちょっと味ポンを付けすぎたかな、とか考えて、
椀のふちにとどめとばかりにビタビタとあてると、
パジャマがずれて出た胸にだし汁がかかってけっこう熱い。
タラにはまだ熱が通ってないので敬遠する。
しらたきをすくいあげながら、今日一日の授業の事を考える。
ぬり箸なので、しらたきがうまくとれない。
授業の事を考えるのを放棄して、しらたきに没頭する。
そうこうしているうちにタラがいい具合いになってくる。
タラをひとくち、かじる。
大きな骨の感触があったので、舌を動かし、口中で骨と身をよりわける。
骨を口から出し、椀のへりにもたせかける。
しかし骨はつるりと落ちて、椀の味ポンの中でゆらゆらとする。
一気に不愉快になってくる。
顔はもう湯気でびたびたになっている。
もうすぐ学校に行く時間だのに、こんな顔では困る。
しらたきがうまくとれない。
もうなんかどんどんイライラする。
朝から鍋物をこさえる母って、どうかな。

もどる