七月の半ばを過ぎ、暑さが本格的になってきたころ、そ の年の冬に作った日本酒の熟成を調べる呑切という行事 が行われます。
三月の終わりころ新酒がすべて出来上がると、酒造りの 最後の作業として火入れを行います。冬期に醸造し発酵 した酒は酒漕で搾られて、澄んだ清酒と酒粕に分けられ ます。このできたての清酒(生酒)の中には生きた酵母は ほとんどいませんが、酒を熟成させる酵素はまだ残って いて酒の味を変えていきます。それを三月終わりころに 味が調和したところを見計らって、55℃位に熱した蛇管 の中を通して、残った酵母や酵素の働きを殺します。こ れが「火入れ」という作業です。
火入れは昔から日本酒独特の高度な技術で、西暦1500年 ころにはすでに行われていたという記録があります。葡 萄酒では、わずか100年前になってやっとフランスで有 名なルイ・パストゥールがこの技術を発見し、以後葡萄 酒が腐らなくなったという有名な話があります。
火入れをした日本酒は、密封したタンクに保存されて夏 を越します。この酒が火入れの後順調に熟成しているか どうかを七月頃初めて開けてみて調べる作業が呑切で、 タンクの下部にある呑口(のみくち)を開ける(切る)こと から名付けられています。この行事はメーカーの重要な 行事の一つで、メーカーの幹部と製造責任者である杜氏 や出荷責任者などが立ち会い、変質した酒はないかを調 べたり、熟成の度合いによってタンクごとの出荷時期を 決める判断をしています。
呑口
呑口を開けているところ
梅雨も半ばをすぎ、陽射しの強い夏がまもなくやってき ます。暑さや陽射しは、日本酒の大敵です。温度の上昇 や、陽射しの中の紫外線により、清酒の品質はどんどん 劣化してしまいます。
私どもの蔵では、真夏でも品温が20度前後で日本酒を貯 蔵しており、瓶詰めをしたお酒も、蔵から販売店の皆様 のもとへ輸送するときは、直射日光が当たらないように シートをかけて輸送するなど心がけています。
その後、お酒が消費者の手元に届くまでの間の品質管理 は販売店の皆様の責任です。どうかお酒の保管の際には、 直射日光に当たらないよう、気温が高い場所に長い間保 管しないよう、心を配ってください。
また、生酒やハートホリデーは室温でも品質が劣化する ので、なるべく冷蔵庫に保管してください。冷蔵庫に保 管できない場合は、ご面倒でも、2〜3日で販売する本数 ずつ、こまめに注文してくださるようお願いいたします。
【写真:ハートホリデー】
「ハートホリデー」の瓶とレッテルが新しくなりました。
このお酒は、アルコール度数が8%の低アルコールの純米
酒で、アルコールに弱い方や、日本酒があまり好きでな
い方にも飲んでいただけるお酒を、と開発したものです。
今回新しくなったレッテルは、若い方、女性の方にも興
味をもっていただけるよう、華やかな色合いで、「低ア
ルコール」、「純米酒」を強調しました。