世界最大級のうず潮にかかる華麗な曲線、東洋一の吊り橋、大鳴門橋。その鳴門海峡を渡り、四国八十八札所の一番、霊前寺のふもとに創業百八十余年、酒造り一筋に歩んできた「清酒鳴門鯛」の蔵元がある。
創業当初(文化元年・一八○四年)、撫養の町(現鳴門市)は塩と藍の積み出し港として、また八十八札所の出発点として賑わったという。そこで始めた酒造り、肥沃な吉野川平野で産する米を用い、阿波藩のお墨つきを得る。以米今日でも山廃○酒母を主体に、伝承的技術を温存、芳醇な香味は阿波の名物でもある。
名物といえば、この地の美味の代表が桜鯛。しまった身に脂ものり、その姿は端麗で優雅な気品もある。この肴に合う酒こそが「鳴門鯛」と、五代目が命名。
兵庫県産の山田錦、石川県産の五百万石を50%精米にし、阿讃山脈の伏流水で丹念に仕込む…歳月をへて熟成されるこの酒のまろやかな味わいは、まことおいしい鯛にふさわしい風味といえる。限定生産の「大吟醸」のほかに、「吟醸生」もあり、いずれも保管は冷蔵庫ですること。
〈杜氏〉田中良治氏(53歳・兵庫県出身)