淡麗な香りと
冴えた酒味
「七笑」は爽やかな旨口酒


 名酒「七笑」の蔵元・七笑酒造株式会社(長野県木曽郡木曽福島町五一三五)の創業は明治二十五年。以来九十余年にわたる伝統と酒造りの歴史のある酒蔵。蔵元の銘柄品には「清酒七笑、特・一・二級」及び「純米酒・本醸造酒・辛口。紙パック七笑」「冬種みやげ徳利詰」などを発売している。銘酒「七笑」は全国清酒品評会で昭和三十八、三十九年と連続して第一位の栄誉を獲得し、鑑評会でも毎年のように受賞をはたしている。
 この蔵の初代蔵元は“旨い良酒づくり、品質の優秀性”を第一に掲げて、業界でも逸早く琺瑯タンクを導入して酒質の安定した醸法を採用している。専門技師の指導をよく受け入れ優良酒づくりに心血を注いできた。その伝統が受け継がれて「木曽の銘酒七笑」は戦前から各種の品評会で受賞し、酒通の間に確乎とした声望を得ている。
 酒銘の「七笑」は中央アルプス駒ケ岳に源流を発する七笑川の地籍名に由来するという。淡麗な香気とすっきりとした味わいをたたえた銘酒「七笑」は、澄みきった独特の酒質で、これまで幻の地酒といった表現で伝えられたこともある。芳醇な香りと無類の爽やかな旨さをたたえた美酒として広く識られている。
 この蔵では良質な原料米を最高度に磨き、長年の経験をもつ鷲尾正雄杜氏が鋭い勘と丁寧な醪管理をモットーによい麹をつくる事に専念し酒の色艶、香りや味が悪くなる雑味の部分を悉くとり除くべく精白度は60%、粕歩合は30%、これでは芳醇味のある豊かな清酒が生まれる道理である。珠に「純米酒七笑」の爽やかな醇乎とした旨味は極上の美酒の名にふさわしく、原料米の精白度をたかめて長期間低温醗酵させた吟醸づくりの純米酒の逸品。冬季の木曽谷は厳しい寒冷気象で、この低温の中で寒仕込みされ、じっくりと醪が育つ。駒ケ岳から流れでる清冽な伏流水を用い、雑菌の少ない乾燥した澄明な空気の中で、銘酒「七笑原酒」は精魂をこめて手造りで醸成される。
当然のことながら原料コスト等も高くなるが、蔵元は“よい酒をつくっていくこと、手数がかかっても旨い酒を飲んていただくことだけを願っている”と淡々と語る。やはり初代からの“酒づくりの信条”に徹している姿勢だ。
 明治年代には木曽谷には三十余軒の酒造蔵があったが、現在では五蔵が残っていて、いずれも個性のある銘酒を醸出している。耀くようなな淡麓な銘酒「七笑」は、木曽路の代表的名酒として酒仙のあいだに高く評価されている。長野県内をはじめ名古星、愛知、岐阜、静岡、神奈川各県および東京都に蔵出され、広く愛飲者に親しまれている。