“東京”という情報の洪水地帯のなかにも、中州のように雑草のはびこる、鳥たちが羽を休める呑気な場所がある。積極的にすくいあげるのではなく、流れついたものだけを糧にしているうちにできた音がここにある。『気のぬけたスピード感』、『力のぬけた行き方』……そういったかんじを“東京トラッド”と名付けようと思う。
あらきなおみ
あらきなおみのソロデビューCDは、古くから温めていた丸かったりとがっていたりする名曲の集まりである。“ハイポジ”時代ライブでやっていた曲や古くは“ハボハマニア”時代のヘンな曲「宇宙人の来襲」もある。ほったらかしてあった曲たちを世に出そうとしたきっかけは、早川義夫の「サルビアの花」をカバーしてみたいという気持ちにあった。加え和田博己氏の絶大なる支援、そしてサウンド・プロデュース、アレンジを担当する鶴来正基(ピアノ)の強力なバックアップで、この『東京トラッド』が実現したのである。