和食、洋食、中華とジャンルを問わず珍重されるのがアワビ。脂肪が少なくて味は淡白、品のよい持ち味が人気の秘密。アワビは生きているものを使うのが常套だが、中国では明鮑(ミンバオ)と称する干しアワビもよく使う。和食ではすしだね、刺し身などコリコリした歯ごたえに人気があり、特にぶつ切りにしてワサビじょうゆで食べる「水貝」は、アワビの醍醐味が存分に味わえる料理である。洋食ではステーキ、ワイン蒸し煮などにする。
トマトの日本での歴史は新しい。本格的に栽培されたのは明治になってからである。江戸時代に導入された当時はアカナスといわれ、鑑賞用として栽培されたそうである。市場には一年中出ているが、本当においしいのは太陽をたっぷりと浴びた夏のトマトである。サラダなど生で食べるのが一般的だが、南仏料理の「ラタトゥイユ」やトマトソースのスパゲティもいい。サラダはフレンチドレッシングだけでなく、酢じょうゆに削り節も合う。
ウナギやアナゴに似ているが、口が大きく、鋭い歯を持ち、すぐかみつく。ハモの名も「食(は)む」からきているという。京都の祇園祭は一名「はも祭り」と呼ばれるくらい、夏の京都はハモなしでは過ごせない。白身ながら適度に脂が乗り、味がいい。小骨が多く、特殊な包丁で骨切りをしてから料理する。湯引いてよく冷やし、梅肉じょうゆで食べるのがいちばん。椀だね、照り焼き、押しずし、酢の物、天ぷらなどもいい。
体は大きいがスマートな魚である。コッパ、カヤカリ、セイゴ、フッコ、スズキと、成長するにつれて名前が変わる。こういう魚を出世魚という。ちなみにブリ、ボラなども出世魚である。スズキは生態がわかりやすい魚で、早くから養殖の対象になっていた。あっさりとしたクセのないうまみのある白身魚で、和食では、刺し身、洗い、塩焼き、椀だね、蒸し物などに。洋食では、ムニエル、ワイン蒸し、フライなどにする。
顔は悪いが味はいい、という魚の典型がコチ。天ぷらなどにするメゴチと間違われやすいが、これは別種。コチはマゴチをさし、白身の高級魚である。冬はえさもとらずに砂泥の中にじっとひそんでいるが、夏になると活発に活動し、身がしまって味がよくなる。鮮度のよいものは洗いや刺し身など、生で食べるのが最高。このほか、煮物、椀だね、天ぷらなどにするほか、高級かまぼこの材料にもなる。