●Happy future

第一回 アーティスト 二宮 舞
produced by ヒロ杉山

ヒロ杉山

1962年東京生まれ。東洋美術学校卒業後、湯村輝彦氏に師事。

'87年第5回JACA展銅賞。
'90年日本グラフィック展マルコム・ギャレット賞、
'91年第8回ザ・チョイス年度大賞。TIS会員。ヒロ杉山・竹屋すごろくの2種類のタッチで仕事をしています。

「INSIDE/OUTSIDE」(トムズボックス)'94年12月発刊。

「SUGOROKU TAKEYA」(ガリバーブック)'95年11月発刊。

「RIVERS WORLD」(エンライトメント出版)'97年2月発刊。

グラフ(株)の協力を得て、インディー出版エンライトメントを開始しました。その第2段が、7月上旬発表予定です。

●ヒロ杉山「NEW PAINTING BOOK」800円(予価)

 

二宮 舞(にのみや まい)

1974年3月16日生まれ。95年の春より仕事を始める。

現在発売中のCD-ROM「ねぎ2」と「ガスブック」(エーアンドピーコーディネータージャパン)の中で着せ替え作品を発表。

近々テレビブロスの表紙をやる予定。

一生懸命やりますので気に入ってくれた方、お仕事の依頼を待っています。


何回か二宮さんにはお仕事をお願いはしているんですけど。
一番最初に二宮さんの絵をみたのは、HBファイルというコンペディションがあって、そこで彼女の作品をファイルでみたのがきっかけです。最初、すごく衝撃的でした。
で、たまたま僕がパルコのPR誌のゴメスのADをやっていたときに、彼女のイラストを起用したくて電話したんです。そうしたら彼女はB全ぐらいのでっかい絵を、20−30枚持ってきたんです。パルコの担当者にプレゼンするのにそれを持っていったら、みんなびっくりして、即採用ということになったんです。それが最初ですね。
これは最近の作品です。(と作品ファイルを見せる)
(絵をみながら)こういうスタイルになったのはいつぐらいからですか?
学校に入って最初の夏休みからです。もう、かれこれ5−6年前ぐらいです。
課題で描いていたのがきっかけですか?
そうです。夏休みの課題の時に、それもB全だったんですけど、自由課題ということで描きました。好きなものを描いたのがきっかけだったですね。
絵のプラスチック感みたいなものがありますよね。これは最初から描きたかったんですか?
これは最初からじゃないんです。学校行っているときに自分の好きなものを描いていたら、タラさんに似ているとかさんざん言われて、「これじゃあいかん」とか思って、なんとか似ないようにしようといういろいろな工夫の結果がこうなったんです。
最初見たときに、透明感のような、プラスチック感という、こういう表現をしていましたよね。色のついたプラスチック透明感、それがすごく衝撃的でしたね。あとはアニメっぽいんだけど、アニメじゃないところ。イラスト寄りのところが面白かったですけどね。本人と絵の感じが似ていますよね。
話は変わりますけど、二宮さんはどんな絵を見て育たれたんですか?
小さいころは、絵といっても油絵の有名な人とかにはあまり関心はなかったんです。でも家にダリの画集とかがあって、それだけは楽しくみていました。母親が面白いと思って買ったものだったみたいです。両親ともアクセサリ−の彫金をやっているんですけど。
では、どんな漫画で育ったんですか?
小さい時は、ドラエもんとか見ていました。最近は女の子の絵のかわいい漫画を見ます。『変』を描いている奥浩哉さんとか、遊人さんとか絵のかわいいものを読みます。
音楽はアニメの主題歌を聴くんですよね。
今は、色々なアニメソングとか80年代のアイドルの曲を好きでよく聴いています。
彼女の絵はこういうプラスチックが透けたような絵を描くんですよ。それが独特な世界をだしていますね。あと、蛍光色がすごく多いですよね。
前は結構使っていましたけど、最近はあんまり蛍光は使っていないんです。
最初のころはほとんど蛍光色でしたよね。最初はB全に絵を描いてきたじゃないですか。やっぱりそんなにうまくないんですよ。ぼかし具合とかは。最近はすごく上手くなってきて、グラデ−ションとかはすごく上手くなりましたよね。なんか最初の荒々しさもパワ−になっていますよね。それが小さいと、こじんまりしてしまうんでしょうけど、全部B全だったのですごくインパクトあったんですよね。そして蛍光色を上手く使っていたというのがありますね。あとはアニメなんだけどアニメじゃない、独特な雰囲気がおもしろいなと思いましたね。個性的なんですよ。それとエロチックさをだしていますよね。
憧れですね。
それは意識しているんですよね。
そうです。その方が絵にしておもしろいんじゃないかなっと思っています。
これはちょっと雰囲気違いますよね。
そうですね。バックの色がというところですか? そのバックは編集の方がやったんですよ。
あ、これワイア−ド?
そうです。
じゃあ、これは切り抜きで合成なんですか?
自分で描いたのは紺色の普通の濃い色だったんですけど。
こういう色使いできてきたらおもしろいですよね。新しい世界になりますよ。
そうですね。
絵を描きだして何年ぐらいになるんですか?
学校行ってから本格的にやりだしたので、6年ぐらいですね。プロとしては少しずつなんですが、3年前から始めました。
僕は二宮さんが卒業した学校(創形美術学校)で教えたことがあるんですよ。二宮さんが卒業した年からたまたま行ったんですが、学校でも有名でしたよ。格好とかも有名だったみたいですね。
それは知りませんでした。
僕からみると二宮さんは1年に2−3人いるかいないかのうちの一人でしたね。ここのところ一年にずいぶんと新人が、僕のところに作品を見せにきてくれるんですけど、なかなかすぐ仕事に使いたくなるような人っていないですからね。そういった意味でいえば、作品を見た次の月のゴメスの表紙になっていましたからね。
そういえば、イラストレ−ション誌の公募展の『チョイス』というのに入賞しましたよね。松本源汰さんが選んでくれたのがきっかけで一般的に広まってきて、これからが楽しみで有望な存在ですね。
ありがとうございます。私は杉山さんから最初の電話があった時はびっくりしました。「え〜!!なんで杉山さんから電話がかかってくるの」と思いましたね。最初に仕事をした時はうれしかったです。雲の上のような方と一緒にできて、夢のようでしたね。
でも、最近のイメージはほのぼのしている方だなと思います。
最初は緊張してましたよね。
はい。
最近は普通にしゃべるけどね。
今でも緊張してますよ。
彼女がすごいのは、どんどん自分で売り込みに行くことなんですよ。このテレビブロスも、自分で行ったんですよね。
そうです。
自分で動いて仕事をもらってくるという動きも彼女は自分でできますしね。
よく、イラストレ−タ−だといい絵を描いてはいるんだけど、自分の家にこもって描いているだけで、自分をアピ−ルしない人ってたくさんいるんですよ。
だけど彼女の場合はいい絵も描けるし、動くこともできるし、非常にいいと思いますよ。
焦っているんです。
似たような絵を描く人が結構いるので早くでないと二番煎じのように言われてしまうので。
一人いますよね。その子はまんがのような絵を描きますけどね。
水野純子さんですか? 最初すごく似ていてびっくりしました。
彼女は色が違いますよね。やっぱりライバル心はありますか?
「似ているね」っていわれると、すごく悔しいですね。だから、そこから遠避けるようにしたいです。
自分の絵を変更させていくしかないですから。
大分、描くのも早くなりましたよね?
そうですね。今はB2ぐらいだと1週間ぐらいで書き終えます。小さいのだと場合によっては1日でできます。
私は、大きいものを描く方が好きなんです。小さいのもきれいに描けるようになりたいんですけどね。そうしないと仕事を戴いてもちゃんと描けないと困るな、と最近思います。
でもそれって技術的なことですから、それは枚数を描けばどんどん上手くなっていくわけですよ。それよりも元から持っているセンスというか、独特の世界を大事にしてしいですね。これは勉強してもつくものではないですからね。この不思議な世界は。グラデ−ションなんていう筆の使い方は100枚描けば100枚分上手くなるし、200枚描いたら誰でも上手くなりますけど、200枚描いてもこの絵を描けない人は描けないですからね。独特の感覚ですよね。


それでは、これからのビジョンをお伺いしましょうか?
 

一人前のちゃんとしたイラストレ−タ−になりたいです。常に仕事があって、それだけで生活できて、アルバイトをしないで済むようになりたいですね。
今はまだアルバイトをしているんですか?
しています。今は朝5時ぐらいから運送屋で荷物の仕分けのバイトしているんですよ。昼寝も3時間ぐらいしますけど。それから絵を描いています。 杉山さんから一人前のイラストレーターになるためのアドバイスをお願いしたいのですが?
二宮さんの場合はもう時間の問題だと思いますよ。あとはどれだけ認知させるかだと思います。自分の作品を発表するのに公募展に出すというのはもちろんだけど、あとは個展をやったりとか、どういう方法で自分を世間にアピ−ルするかということが大切だと思いますよ。
あとは、もう少し自分の世界どっぷりのところから世界を広げていくということ、今まで描いていないところに挑戦するというようなところだと思います。これなんかはそういう意味では今までの世界からちょっと違ってきた作品ですよね。
例えばどんなところあたりがですか?
リアリティ−が出てきたというんでしょうか。今までは完全に空想の世界で、宇宙ぽかったりとか完全にこの世に存在しないような、ぶっとんだ世界だったじゃないですか。でもこれは、わりと普通の女の子に近づいてきていますよね。っということはリアリティ−が出てきたということだと思うんですよ。やっぱり頼まれる仕事で、空想の世界とリアリティ−の世界とどっちが多いかといったら、9割はリアリティ−のある世界なんだと思います。リアリティ−のある方が、やっぱりニ−ズとして多いと思いますね。だからこういうリアリティ−の世界を描きつつ、だけど自分の世界を崩さない、どれだけ残していけるかというところだと思いますよ。あんまりリアリティ−寄りになっていって、普通の絵になっていくとつまらないけども、そのバランスを自分のなかで上手く考えながら、やっていくといいんじゃないです。
あとは量ですね。でも、いつもいっぱい描いているからその辺は問題はないと思いますけど。あとは男性も描けると面白いかもしれませんね。
そうですね。今のところあんまり描きたいと思わないんですよ。そのうち変わってくるかもしれませんけど、今はやっぱり女の子が描きたいんです。
描きたいと思うことが大切ですね。イラストレーターだったら、みんな描きたいと思うのかもしれないけど、描きたいと思わないでイラストレ−タ−やっている人は絵がつまらないんですよね。
何かを描きたい、という固定的なものが第一条件として必要ですね。描きたいと思っているんじゃなくて仕事として描いている人は、絵をみていてもつまらないですよ。テンションが違います。若い子はみんな描きたくて描いているじゃないですか。あとはイラストレ−タ−になりたいとかいう目標を持っていますよね。だから下手だけど面白い、っていうのがありますけど、段々仕事やっていくとみんなテンションが下がっていくんですよ。お金儲かるけど、いかにそのテンションをデビュ−してからも高めてやっていいけるか、ということじゃないですかね。僕の師匠の湯村輝彦さんは、もう30年近く、第一線でやっているんですけど、テンションは常に同じなんですよ。本当に描きたくて描いている。それはすごいと思いますよね。ほとんどの人が変わってしまいますからね。
テンションをいつまでも大切に、デビュ−して忙しくなったとしてもね。これは自分にも言えることですけど。
杉山さんは仕事とか重なっても、全部引き受けているんですか?
基本的にはやっていますね。
嫌になることとかありますか?
たまにはありますね。 忙しすぎて、「やっぱり受けなきゃよかったな」って思う仕事もたまにはありますけど、でもほとんどは仕事始めちゃうと、描き始めちゃうと自分のなかのテンションは一緒ですからね。始めるまでは、テ−マ的に自分にあっていないなと思うものはどんどんどんどん後回しになっていっちゃうんですよ。で、仕事の締め切りのぎりぎりになって始めたりとか。一回スイッチが入ればいいんですけど、なかなかそういう仕事はスイッチが入りにくかったりしますからね。
余裕のあるスケジュ−ルでやっていて、仕事とか断わっていると、やっぱり仕事ってだんだんこなくなってしまいますか?
最初はがむしゃらに全部やる方がいいと思いますよ。やっぱり最初は3つも4つも重なっちゃうと、不安になりますよね。でも1回それをクリアしちゃうと、あの時できたからと思って、次は全然不安がなくなりますから。次は7本重なって、やっぱり最初は不安なんですよ。でも、そのときクリアしちゃうと今度の時8本になっても平気になりますよ。最初は、1本でもあるとドキドキして締め切りが気になりますけど、経験積んでくると大丈夫ですよ。あと締め切りが伸びるということも分かってきますし。(笑い)
でも、今は何でもやるといいと思いますよ。 こういう(今のような絵を描くこと)スタイルでやっていると二宮さんという自分のスタイルが出ているじゃないですか。この絵を見て頼んでくるわけですから、向こうもある程度分かっているわけですよ。だからとんでもない仕事は頼んでこないと思います。こういう風に自分のスタイルを打ち出していく人は、依頼される仕事はどんどん受けていった方がいいですよね。逆に器用に何でも描けちゃいますよという人はとんでもない仕事をうけたりするわけですよ。あの人に頼めばこういうのも描けちゃうんじゃないかなっていう、そうするとドンドンドンドン度壷にはまっていってしまうんです。けど、全面に自分を打ち出している人だから、依頼されるものは全部自分のフィ−ルドにひっぱって、それでだしてあげるといいんじゃないでしょうか。
あと一回仕事をすると、仕事をくれる人とコネクションができるじゃないですか。一回目で断わると、二回目その人から仕事きませんからね。最初の仕事がつまらなくても、二回目の仕事はすごくいい仕事がきたりとか、そういうのもあると思いますね。コネクションは広ければ広いほど我々はいいと思いますよね。


最後にそれではこの本のコンセプトでもある「BE」ということで、自分のこだわりを教えていただけますか?
 

自分はどうなのかなって考えているようで、そんなに考えていないかもしれないんですけど、今思うのはなるべく自分で考えたことをやるのは大切なんだなと思っています。
  グラフィックス 二宮 舞

 
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