マザーボードでPCIが6本あるものには「全6本マスター動作」や「1〜4までマスター,5,6はスレーブ」といったような違いがあると聞いたのですが,PCIの「マスター」と「スレーブ」にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでいうマスターはバスマスタ転送機能を利用するPCIデバイスが使用できるかできないかということになります。バスマスタ転送はISAバスの時代から使用されていますが,バス上のデバイス,つまり拡張カードがカード側のDMA(Direct Memory Access)転送を用いることで,CPUに負担をかけずにデータを直接メモリに転送する機能です。PCIバスでは高速なDMA転送が利用できるので,高速なデータ転送を必要とするPCIデバイスのほとんどはバスマスタ転送を利用しています。スレーブとなるPCIスロットでも使用できるのは,CPU側からI/Oポートを介してアクセスされるデバイスです。
ではなぜすべての拡張スロットをマスターにしないのかというと,まず多くのPCIバスコントローラが四つのデバイスまでしかマスターをサポートしていないからです。したがってこれらのPIC(プログラマブル割り込みコントローラ)を用いると通常の設計では4本のスロットしかマスターにならないのです。したがって現在ほど拡張カードのPCI化が進んでいない時期には,PCIスロットが5本以上でもマスターは4本までというのが通常でした。現在ではISAスロットを持たないマザーボード(写真)すら多く存在するようになりました。これらのマザーボートはPCIバスコントーラの仕様変更や回路の追加で5本以上のスロットがマスターとして使用可能な製品がほとんどです。
ただし,5本以上のPCIスロットがマスターをサポートする場合は,必ずいずれかのPCIスロット同士で割り込みが共用されます。このため割り込みの占有を要求,または推奨するPCIカードでは不具合が発生する場合もあります。したがって必ずしも5本以上のPCIスロットがすべて問題なくマスターとして機能するとはいえません。
サーバー向けのマザーボードではこういった不具合を防ぐためPCI-to-PCIブリッジを使用し,PCIバス自体を複数持つことでより多くのマスターデバイスを扱えるようにしています。
(坪山博貴)
ISAスロットを持たないマザーボード(FW-6400GX/150/WS)
問:フリーウェイ TEL:03-3255-1968