PartitionMagic V4.0(ネットジャパン)で,パッケージの裏のスペック表に知らないファイルシステムの名前がありました。FAT32X,FAT64,NTFS5などですが,それぞれどう違うのでしょうか?
FAT32XはWindows 98(正確にはWindows 95 OSR2以降)でサポートされたFAT32と同じ管理構造をとり,8GB以上のHDDをサポートするファイルシステムです。FAT32Xまで含めて単にFAT32と称する場合もありますが,ここでは8GBまでをサポートするFAT32と8GB以上もサポートするFAT32Xを便宜上別々のファイルシステムとして扱うことを前提にして話を進めます。
FAT32では8GBまでしか扱えない
FAT32は最初から最大2TBをサポートしているのでおかしいと思う人もいるかもしれませんが,FAT32はBIOSのINT13Hを使用してHDDをコントロールします。INT13HではHDDに旧来のCHS(シリンダ,ヘッド,セクタ)のパラメータを使用してアクセスします。E-IDEでもCHSを用いてアクセスできる最大容量は約8GBです。このため事実上8GB以上をサポートできなくなるのです。したがってCHSでアクセスできる限界がそのままFAT32の限界になります。
FAT32X
FAT32Xでは8GB以上のIDE HDDにアクセスするために追加された拡張INT13Hを使用します。拡張INT13HではCHSを用いず,HDDを一定単位で分割(数セクタ)して連続した番号を割り振り,この番号でアクセスします。これはもともとSCSIで使用されていた方法で,LBA(Logical Block Access)と呼ばれます。ちなみにSCSIでは基本的にCHSのパラメータ形式では最初からアクセスできなくなっているのが通常です。したがってFAT32Xは拡張INT13HをサポートするBIOSを持ったPCでしか使用できません。FAT32,FAT32Xともファイルシステムとしての論理構造はまったく同一ですが,HDDへアクセスする方法が異なるということです。またFAT32はある程度の容量を持つパーティションでないと機能しません。したがってFAT16Xというファイルシステムも存在します。FAT16とFAT16XはFAT32とFAT32Xとまったく同じ関係です。
FAT64
FAT64は正確には64KクラスタをサポートするFAT16のことを示しています。これはWindows NTだけでサポートされる特殊なFAT16です。FAT32以前のFATであるFAT16では1論理ドライブの容量は約2GBですが,この場合1クラスタ(管理上の最小単位)は32KBになります。Windows NTは2GBよりも大きな論理ドライブが使用可能なNTFSをサポートしていますが,NTFSのドライブへOSをインストールする場合でも暫定的にFAT16を使用し,OSインストール終了後NTFSへ変換します。暫定的とはいえFAT16を使用すると,最大2GBまでの論理ドライブにしかWindows NTを導入できないことになるので不便です。そこでFAT16でも1クラスタを64Kとしてしまうことで4GBの論理ドライブを使用可能にし,より大きな論理ドライブへのOSの導入を可能にしたのです。64KBのクラスタは基本的にWindows NTでしかサポートしていませんから,OSの導入以外で使用するメリットはほとんどありません。
NTFS5
NTFS5は次期Windows NTであるWindows 2000からサポートされるファイルシステムです。NTFS5は従来のNTFS4に改良が加えられたファイルシステムで,セキュリティが強化されたほか,フォルダ単位で使用する容量の制限といった機能が追加されています。またファイルの属性を保存することも可能になり,MS-DOSの時代から続くファイル名の一部を利用した原始的な「拡張子」によるファイルの識別を行う必要がなくなります。アプリケーション側の対応も必要ですが,ファイルシステムとしてサポートされることは重要でしょう。なおNTFS5は機能的にはそれ以前のNTFSの上位互換になっていますが,物理的には互換性がないため,NTFS5を使用したドライブは原則としてWindows 2000以外からは読み書きできない点は注意が必要です。ただ例外としてWindows NT4.0ではSP4でNTFS5の読み出しのみを可能にしています。またWindows 2000の導入に当たって既存のNTFSをNTFS5に変換することが可能ですから,Windows NT4.0からWindows 2000への移行に関してはとくに面倒となる点はありません。
通常アプリケーションがファイル操作を行う場合はOSを介しますから,直接ファイルシステムをサポートする必然性はそれほど強くありません。例えばWindows 98上で動作するワープロでFAT32のドライブが読み書きできて,FAT32Xのドライブが読み書きできない製品はまずありえないでしょう。ただPartitionMagicはその性格上ファイルシステムを直接操作しますし,もともとFAT32やNTFSなどをサポートしないMS-DOSベースでも動作します。したがってPartitionMagic自体が各種ファイルシステムをサポートする必要があり,対応するファイルシステムが明示されているのです。
(坪山博貴)
写真3 さまざまなファイルシステムに対応した「PartitionMagic V4.0」
(価格:1万5800円 問ネットジャパン TEL03-3864-5210)