USB2.0とIEEE1394について

次世代シリアルバスがにぎやかですが,USB2.0とIEEE 1394のどっちが主流になるのでしょうか?


PC98/97システムデザインでは,比較的低速のデバイスはUSBへ,それ以上のバンド幅を必要とする周辺機器はIEEE 1394へ移行することが推奨されています。なかでもIEEE 1394は,デジタル家電(ビデオカメラなど)の接続インタフェースとして注目されており,家電,PC,周辺機器メーカー3者の思惑が一致するところでした。
 インテルも例外ではなく,'98年の初めころまではチップセット(440BXのサウスブリッジ)にIEEE 1394の機能を組み込む方向で進めていました。ところが,昨年の夏ごろからトーンダウンしてきて,今年2月に開催されたIDFでは,ついにPC用の周辺機器インタフェースは従来のATAとUSBを強化する方向で対応すると発表しました。これは,事実上IEEE 1394のサポートを放棄したことを意味します。
 IEEE 1394を見放した理由として,インテルはUSBのコストが安いことを挙げていますが,裏でアップルが1ポートあたり1ドルという高額のライセンス料を設定したことが決定打となったようです(昨年末)。IEEE 1394は,アップルのFireWireがベースとなっており,同社が特許の一部を持っているのです。
 ただ,IEEE 1394は50MB/secもの高速インタフェースであり,それに対し現行のUSB1.1のスペック(1.5MB/sec)ではAV系のデジタル家電にはとても対応できません。そこでインテルは,次期バージョン(USB2.0)で15〜30MB/secの転送レートを実現するとぶち上げました。USB2.0はUSB1.1に対して下位互換性を持ち,従来のUSB機器がそのまま使えるメリットがあります。今年半ばには仕様を固めて,来年中には対応デバイスをリリースする予定のようです。
 さて,両者が今後どのように進展するかということですが,インテルがUSB2.0を採用した以上,PCの世界ではUSB2.0主導で推移することが予想されます。一方,家電メーカーは事実上IEEE 1394しか選択肢がない状態ですから,IEEE 1394が主流となるでしょう。
 では両者は泣き別れの運命かというと,必ずしもそうとは限りません。仮に,IEEE 1394のライセンス料が十分低く抑えられるなら,インテルが再びサポートを表明する可能性も残されています。家電メーカーはこのシナリオを望んでおり,IEEE 1394の特許をアップル,コンパック,松下電器産業,フィリップス,ソニー,東芝6社の共同ライセンスとするよう動いています。そして,ライセンス料を数十セント程度に抑えるようアップルと交渉中です。
 この交渉結果をインテルが評価すれば,再びIEEE 1394のサポートが復活する可能性はあります。最新の情報によれば,問題のライセンス料は25セントまで下がったようで,今後インテルの動向が注目されるところです。
 いずれにしても,この結末を見極めるにはもう少し時間が必要のようです。
(松永 融)