PCIのサウンドカードがないのはなぜでしょうか。
PCIバスのサウンドカードは,これまでほとんどありませんでした。その理由は,いくつか考えられます。
まず,サウンドカードにはシンセサイザなどの音源チップやPCMサウンドのコントローラが搭載されていますが,これらはさほど高速なデータ転送を必要としていません。大きなデータをホストと交換する48KHzの高品質なPCMサウンドでも,16ビットのインターナルDMAで十分にデータ転送が可能です。要するに,サウンドカードには16ビットバスの性能を超えるパフォーマンスは必要なかったのです。
さらに,サウンドカードのデファクトスタンダードである,SoundBlasterとの互換性の問題もあります。Sound Blasterは8/16ビットのI/O空間とインターナルDMAチャネル(8/16ビット)を使用しており,PCIバスでは互換カードを作ることができません。ソフトウェアエミュレーションでSoundBlasterとの互換性を提供することはできなくもないでしょうが,多くのソフト(とくにDOS上で動くゲーム)で問題が発生する可能性が大きいのです。
しかし,ここ数年でかなりのゲームがWindowsベースに移行し,SoundBlaster互換であることが絶対的な条件ではなくなりつつあります。また,DirectXで定められているような強力な3Dサウンドを実現するには,PCIバスが望ましいといえます。
そうした状況を受けて現在,各社ともPCIバスのサウンドカードの開発を進めているようです。例えば,ダイアモンド・マルチメディア・システムズではMonster Sound(価格2万9800円 TEL:03-5695-8401)というPCIバスのサウンドカードを発売しました。また,USBやIEEE1394を用いたサウンドデバイスのリリースも予定されており,今後はISAバス以外のサウンド環境が広く利用されていくことになりそうです。
サウンドカードは,消費するIRQやI/Oアドレスが多いだけに,PCユーザーにとっては頭の痛いデバイスの一つです。サウンドカードがPCIなどのより汎用性の高いバスに移行していけば,システムリソースを有効に活用できるようになるので,ユーザーにとってはありがたい傾向だといえるでしょう。
(米田 聡)