MPEGにはいろいろな形式があるようなのですが,MPEG-7というものもあると聞きました。どんなもので,どういった使われ方をするものですか?
MPEG-1〜4では主に映像や音声をどのようにデジタル符号化する(デジタルデータを作り出す)か,その方法などが定められていましたが,MPEG-7はそれらとは規格の目的も,標準として決められているものも違います。MPEG-7は「マルチメディアコンテンツの記述インタフェース」(Multimedia Content Description Interface)といわれるものの標準規格です。簡単にいうと,映像や音声データのメタ情報,つまり「映像や音声コンテンツがどのような内容や特徴を持っているかを表すデータ」の記述方法(文法)を定めています。
このMPEG-7が標準規格化されると,映像データに世界共通の形式のメタ情報を付加できるようになります。使い方としては,例えば,どこかから好きな映像データを拾ってくることを考えてください。今まではそのデータがリンクされているHTMLテキストの内容を目で確認したり(それも各ページで様式が違うので不自由),せいぜいファイル名から調べなければなりませんでした。検索エンジンなどを使って探そうとしても,例えば「登場人物の色,形」などから目的のファイルを見つけるのはほぼ絶望的です。が,MPEG-7が規格化されれば,このメタデータをインデックスとして使うことで,アーカイブ中の任意の映像を検索してくることなどができるようになるのです。EPG(Electronic Program Guide・電子番組ガイド)を使って料理番組のライブラリから「材料と火加減」をキーにその映像やシーンを検索したりなどということもできるようになるでしょう。
具体的には,このMPEG-7でのメタデータは,マルチメディアデータの種類や状態などを示すDDL(Definition Description Language)という言語で書かれます。このDDLはXMLを拡張する形で作られるマークアップ言語なのですが,この中には記述子(Descriptor),記述スキーマ(Description Scheme)といった要素があり,それぞれ,画像中にどのような色や形(青,白,赤,四角……)があるか,さらに色や形といった属性があるのか(空には色がある,ドアは色と形がある……)が記載されます。なお,このMPEG-7では,どのように映像や音声データなどからその特徴となる部分を抜き出すかなどの「データの作り方」は決められておらず,あくまでデータの文法だけを規定しています。ですので,MPEG-7の規格書だけでこのようなデータが作れるわけではないことに注意してください。実際にメタデータを作るには,映像や画像から特徴を取り出すための,独自のノウハウなどが必要になることでしょう。
なお,そもそもMPEGとは,「Moving Picture Expert Group」というISO(国際標準化機構)のワーキンググループの名の頭文字を取ったもので,転じてこのグループによって標準化されたマルチメディア関連の規格が「MPEG-x」と呼ばれているわけですが,このMPEG-7は,2001年9月にISOの国際規格として承認される予定になっています。規格の詳しい内容などを知りたい場合は,MPEG-7のWebサイトが参考になります。
(大和 哲)
MPEG 7の公式Webサイト
http://www.darmstadt.gmd.de/mobile/MPEG7/