基板はどうして緑色なのか

ビデオカードの基板などはほとんどが緑色をしていますが,なぜですか。


電子機器の基板は,エポキシ系複合材やテフロンなどのベース材と銅箔を使った回路パターンの積層構造になっています(全体の厚みが1.6mmほどの基板に一般的なSIMMで4〜6層,マザーボードなどの集積度の高いパーツでは10層を超えるものもあります)。
 ここで使われている銅は非常に錆びやすい性質を持っていて,すぐに電気特性が悪くなってしまいます。積層構造の中は直接空気に触れにくいのでまだいいのですが,表層の部分についてはなんらかの方法で保護する必要があります。そのためにPCなどの精密機器の基板はフォトレジストという技術を使ってコーティングされていますが,基板が一見緑色に見えるのはこのレジスト材に使われている特殊塗料によるものです。
 コネクタの部分などは接点をむき出しにしておく必要があり,コートされていませんから,この部分の色が基板本来の色といえます。また,レジスト材は絶縁性で,かつハンダをはじくため,不慮の事故による回路の短絡や不要な部分にハンダが飛ぶ危険性を下げることにも貢献しています。このレジストも回路パターンと同様に写真製版され,基板上にプリントされています。余談ですが,レジスト材の世界シェアの上位はほとんど日本企業が占めています。
 基板自体の構造材としてはフェノール樹脂,紙エポキシ,ガラスエポキシ,テフロン樹脂などがあり,それぞれの特性は以下のとおりです。最近ではガラスエポキシが主流で,フェノール樹脂や紙エポキシはあまり使われなくなってきています。

フェノール樹脂
 経年変化で反ってしまったり,ぼろぼろになってしまったりするのと,これ以降に開発されたものに比べると特性も劣るため,最近ではあまり使われなくなっています。

紙エポキシ
 エポキシ樹脂に紙を混ぜてつなぎにしたものです。値段が安かったためよく使われましたが,熱に弱く炭化しやすいのが難点です。白〜クリーム系の色をしています。以前はマルチI/Oカードなどでこれを使っているものがありましたが,最近はあまり見かけなくなりました。

ガラスエポキシ
 紙の代わりにガラス繊維を混ぜたものです。紙エポキシに比べて熱に強く変形しにくいため,最近では最も多く使われています。

テフロン樹脂
 エポキシ系などに比べて少々高価なのですが,高周波での特性がよく,プリントパターンを使って高周波回路を構成したりするような用途に使われています。
(アーカイブTech Lab.菊地 潤)



ビデオカードなどの拡張カードは緑色の基板を使っているものが圧倒的に多いが,マザーボードでは茶褐色系の色をしたものもよく見かける