USBデバイスはたくさんはつながらない?

USBは,たくさんデバイスがつながるはずなのに,「ほかのUSB製品がつながっていると動作しないかもしれません」と表示されている製品が多いのはなぜですか?



USBは理論上127までのデバイスが接続でき,確かに接続するだけなら組み合わせの制限などもほとんどありません。にもかかわらず質問のような製品が多いのも事実です。これにはいくつかの要因があります。
 おそらく一番の原因はUSBの転送速度と転送方式の問題です。USBではマウス,キーボードなどデータ転送量の少ないデバイスを接続する場合の低速モード,データの連続性が保証され最高で約8Mbpsの転送速度を持つアイソクロナスモード,データの連続性は保証されないものの,最高で約12Mbpsの転送速度を持つバルクモードがあります。このうちほかのUSB製品がつながっていると不都合が起きやすいのは,アイソクロナスモードで接続するUSBデバイスでしょう。
 アイソクロナスモードで動作するUSBデバイスで不都合が発生しやすいのは,簡単にいえばUSBの転送速度の遅さが原因です。USBはバスとして約12Mbpsの通信速度を持っており,低速モードとアイソクロナスモードのUSBデバイスのデータは優先してデータが転送されます。低速モードのUSBデバイスはきわめてデータ転送量が少ないので,複数のデバイスが接続されていてもほとんどほかのUSBデバイスに影響を与えません。これに対してアイソクロナスモードは最高で約8Mbpsのデータ転送速度ですが,USBは前述のとおりバス上,つまり全体で約12Mbpsの転送速度しかありません。つまり複数のUSBデバイスがアイソクロナスモードで最高の約8Mbpsのデータ転送速度を利用することはできないのです。もちろん,すべてのアイソクロナスモードを利用するUSBデバイスが8Mbpsのデータ転送速度を必要とするわけではないのですが,動画を扱うビデオキャプチャーデバイスなどはかなり高速なデータ転送速度を必要とします。このためアイソクロナスモードを使用するUSBデバイスではほかのUSBデバイス(とくにアイソクロナス転送を使用するUSBデバイス)との併用を保証できないことになるのです。
もう一つの原因として考えられるのは,USBケーブルからのみ電源を確保するデバイスです。USBデバイスでは,USBケーブルを介してホストインタフェースやUSBハブから電源供給を受けられます。ところが電源供給量は5V,最大500mAと小さく,これを同一USBバス上に接続されたUSBデバイスで共用します(電源供給可能なUSBハブを介す場合は少し異なります)。したがって消費電力がある程度大きいにもかかわらずUSBケーブルからのみ電源を確保するUSBデバイスでは,ほかにUSBデバイスが接続されていると十分に電力を確保できない可能性が出てきます。
 また質問のようなことは単に動作保証という点での警告である可能性もあります。USBデバイスに限ったことではないのですが,PCでは特定の製品が山のように存在する他製品との混在利用を完全に保証することは事実上不可能です。このためにほかのUSBと混在利用した場合は動作保証できない,という注意書きを加えている製品が多いのではないでしょうか。
(坪山博貴)