最近,インターネット関連の記事を読んでいると,よく「プッシュ技術」という言葉を目にしますが,これはどういうものでしょうか。
インターネット上の情報を得ようとすると,例えばWebページではアドレスを指定したり,ハイパーリンクをたどるなどの方法で探し出すのが一般的ですが,この場合ユーザーがボタンを押すなどの作業をして情報を「引き出す(pull)」必要があります。
これに対してプッシュ技術を利用したサービスの代表格であるニュース配信などでは,あらかじめ欲しい情報のジャンルなどを設定しておけば,必要な情報が自動的に送られてくるようになっています。要するに情報発信側が,情報を「押し出し(push)」てくるのです。
現状では,ダイヤルアップでインターネットに接続しているユーザーが多いと思いますが,この場合つなぎっぱなしではないため,プッシュされてくる情報を常時受け取ることはできません。
そのため,インターネット接続時に必要なソフトを立ち上げて情報を引き出す操作が必要になるので,完全に自動的というわけにはいきません。ただ,ソフトを立ち上げれば指定したジャンルの情報がまとめて送られてくるので,情報を一つひとつ引き出す操作が不要なのはプッシュ技術のメリットです。Webページでは最新情報への更新はユーザーの操作が必要になりますが,専用ソフトを用いるニュース配信などでは,インターネット接続中ならばユーザーの操作なしにリアルタイムで情報を更新することもできます。
本来のプッシュ技術はインターネットへの常時接続を前提としたものですが,情報収集がより容易になるという点で,ダイヤルアップ接続でも十分なメリットがあるといえるでしょう。2大Webブラウザ(Netscape Communicator 4.0,Internet Explorer 4.0)の機能として組み込まれたことで,今後より広く利用されるようになると予想されています。
プッシュ技術の利用はニュースなどの情報配信だけにとどまりません。例えば,米マリンバ社のCastanetでは,ソフトウェアの配布/インストール/更新などを自動で行うことができ,ユーザーはこれらの処理をほとんど意識する必要がありません。差分の概念を持っているため,配信されるデータ量が最低限で済む,大規模な配信でも自動的に更新されるリピータを利用して,トラフィックの一極集中を避けることができるなど,インターネットを意識した設計がされています。このような例はこれからも増えていくでしょう。
(坪山博貴)