ATX 2.03と表記された電源が出回り始めましたが,それまでのATX 2.01との違いを教えてください。
ATXとは,インテルが’95年に発表したPC用マザーボードの仕様です。ATXではマザーボードのサイズやケースについてだけでなく,電源の仕様についても規定しています。最初にリリースされたATX Specification Version 1.0では,電源ユニットのファンは吸気型で,吸い込んだ空気がCPUに当たるように規定されていましたが,それだと電源ユニットの熱で温度が高くなった空気が筐体内部に入るので,かえって逆効果になります。
そこで翌年リリースされたATX Specification Version 2.0からは,電源ユニットのファンを排気型に変更しました。その後,’97年2月にVersion 2.0の細かな点を修正したVersion 2.01がリリースされました。ATX仕様に準拠した製品が増えてきたのも,このころからです。ATXではマザーボードから電源ユニットのコントロールが行えるようになっていますが,それを実現するためにはマシンの主電源が落ちているときでも,ある程度の電力をマザーボードに供給してやる必要があります。そのために用意されている出力が,スタンバイパワー(+5VSB)です。Version 2.0では,+5VSBの電流容量は0.1A以上と規定されていましたが,それでは実際には足りないことが多かったため,Version 2.01では0.72Aに変更されています。
ATX Specification Version 2.03は,’98年12月にリリースされた最新バージョンです。いくつかの細かな修正が行われただけで,Version 2.01と比べて大きな違いはありません。電源ユニットについての規定にもほとんど変更はありません。しかし最近では,Wakeup On RingやWakeup On LANなど,スタンバイ時にも電力を消費する機能が増えたことで,0.72Aでも足りない場合も出てきました。そこで,ATX 2.03準拠をうたっている電源ユニットでは,+5VSBの電流容量をさらに増やしているものが多いようです。正式にATX規格で規定されているわけではないのですが,+5VSBが2A以上とれるものをATX 2.03準拠と呼ぶことが多いようです。
電源ユニットの購入時には,トータルの電源容量だけを気にするのではなく,+5VSBの電流容量もスペック表などでしっかりチェックすることをお勧めします。 (石井英男)