液晶ディスプレイにおける水平周波数,垂直周波数とは何を意味するのでしょう?
まず,CRTディスプレイの水平周波数,垂直周波数から復習しましょう。CRTは電子銃から放出された3本の電子が管面内側に塗られたRGB3色の蛍光体に当たることにより発光します。この電子は管面の左から右へ,そして上から下へと走査されます。
この左から右へ走査することを水平走査といい,この水平走査を1秒間に何回行ったかという値が水平周波数です。一方,この水平走査が上から下へと行われることを垂直走査といいます。
テレビの場合は,1秒間に1画面525本の走査を30フレーム(奇数ライン,偶数ラインの2回で1フレーム)行います。このことから垂直周波数は60Hzとなることが分かります(ちなみに水平周波数は525×30=15750Hz。ただし,これはテレビ(地上波)での従来の基本方式であり,HDTVやCRTディスプレイとは異なります)。
それでは,液晶ディスプレイの場合はどうなるのでしょうか。液晶では電子銃で走査する仕組みではないのに,なぜ走査周波数があるのかと疑問に思われたことと思います。
まず,液晶ディスプレイの構造を簡単に説明します。液晶ディスプレイは背面に発光体となるバックライト(陰極管)と,その光のシャッターとなる液晶,さらに前面にRGB(Red,Green,Blue)各色のフィルタがあり(このRGB一組が1ピクセルに相当する),このRGB各色に対応した液晶シャッターの開閉(液晶に電圧を加えることにより,結晶が整列し光を透過)をトランジスタで制御しているものがTFT液晶と呼ばれています。
液晶ディスプレイはこの液晶が縦横に配置され,それぞれがトランジスタで制御されていますが,これを制御するトランジスタすべてに配線を行うとその数の多さから配線スペースが多く必要になるほか,制御が大変になってしまいます。そこで,縦のラインと横のラインで目的の制御用トランジスタを選択できるようにしています(メモリチップでも同様の方法を用いています)。
つまり,液晶ディスプレイでは一度に全画面の液晶を切り替えて表示しているのではなく,縦横のラインの選択により順次液晶シャッターを開くという方法で表示が行われています。
具体的には,横のラインを選び,縦のラインを左から右へ順次選択することで水平走査が行われ,さらに横のラインを順次上から下へと選択していくことにより液晶全体を制御することが可能になります。この動作の速度を水平周波数,垂直周波数で表すことができるわけです。
(吹田智章)