高温レギュレータの影響

マザーボードのレギュレータが高温状態になると,何か悪影響が発生しますか。



短期的な影響としては,
・レギュレータ周辺に配置されている部品の温度が上がる
・レギュレータの性能が落ちる
が考えられます。前者は,当然ながら周辺の部品の性能に影響します。一般論として,半導体部品はある程度以上温度が上がると,動作できる周波数が下がってしまいます。例えば66MHzで動くはずの部品が65MHzとか64MHzでしか動かないといった現象につながり,これを無理に66MHzで駆動すると,誤動作や過剰発熱が起き,最悪は部品の破壊につながりかねません。レギュレータは基本的には「高温で動作することを前提とした部品」ですので,ほかのマザーボード上のパーツに比べると発熱しやすい傾向はありますが,それでもレギュレータにはレギュレータなりに動作保証温度が定められており,この温度範囲内で動作させないと,熱による破壊が発生することもありえます。
 また,後者はとくにAMDのK6やCyrix 6x86-200GP+といった「消費電力過大」なCPUに対し,十分な電力を供給できなくなる可能性があります。これも無理に利用を続けると,レギュレータ素子の破壊が発生する可能性があります。また,長期的な影響として,
・レギュレータの寿命が縮まる
・レギュレータ周辺に配置されている部品の寿命が縮まる
などが考えられます。厄介なのは,こうした部品は壊れるまで目で見て分かるような兆候は出ないので,熱対策を何も講じないままに放置しておくと,数年ももたずにマザーボードの部品が壊れることは,比較的よくある話です。
 とはいっても,あまり深刻に考える必要もありません。そもそもレギュレータ素子は高温になるのが普通の利用状況であり,指で触れないぐらいになってもさして異常とは考えられません。気になる人は大型のヒートシンクに付け替えるなどの対策を施すのがベターではありますが,一般的にいって,ケースに格納した状態で一応風が当たっていれば,それほど深刻に考える必要はないでしょう。
 もっとも,CPUの換装やCPUのクロックアップ(しかもメーカー動作保証を越えているようなアップ)を施している場合は注意が必要です。例えば166MHzまでしかサポートしてないPentium対応マザーボードに「下駄」をはかせてMMXテクノロジPentiumプロセッサを載せたり,200MHzのPentium Proを225MHzで動かしたりするのがこうした場合に相当します。このようなケースでは,マザーボードが想定する以上の電力をCPUが消費するので,当然,しわ寄せがレギュレータにくることになります。そのため,ただでさえ高熱を生じやすいレギュレータが,より発熱することになります。
 心当たりのある人は,CQ出版社から出ているスイッチングレギュレータのスペックシート(秋葉原ならLaOXのザ・コンピュータ館1Fや書泉ブックタワーなどにあります。また,ちょっと大きめの書店ならだいたい取り扱いをしてくれます)からマザーボードに使われているレギュレータの動作保証温度を確認のうえ,自分のマシンのレギュレータ温度がさらにこれより高温なようであれば,送風ファンを追加するなどの適切な処置を施すべきです。
(大原雄介)


マザーボードに印刷された83MHzのクロック設定。この設定にすることでレギュレータの負担が増すことになる


温度測定にはパーツセンターで紹介した温度センサーなどが役に立つ