X Window SystemとGNOME&KDEの関係

GNOMEとKDEは,X Window Systemとどういう関係なのでしょうか。


WindowsのユーザーがLinuxなどのUNIX系OSを使うときに戸惑うことの一つが,X Window System(以下X)や,そのユーザーインタフェースです。WindowsとXは誕生した経緯や設計思想が異なるため,操作性が似た面もあれば異なる面もあるからです。
 X Window Systemの原形は’80年代の初めにMIT(マサチューセッツ工科大学)とIBMなどの企業が共同で開始した「Project Athena」の成果として生み出されたシステムです。X Window Systemはグラフィックを表示するシステムではありますがユーザーインタフェースを持ちません。X Window Systemは表示領域の管理(ウィンドウ)や描画システムを提供するものの,それらをユーザーが操作する仕組みは持っていないのです。
 そのようになっている理由はいくつかあります。設計的に理にかなっているというのも理由の一つでしょうが,メーカーがオリジナルの操作性を提供できるようにしたというのが大きな理由といわれています。そのため,X Window Systemでは,ユーザーがウィンドウを操作するための「ウィンドウマネージャ」,ソフトウェアの操作性やルックスを作る「ウィジットライブラリ」という二つの存在が欠かせません。
 このような仕組みはユーザーが好みに合ったルックスを選べるメリットがある反面,ソフトウェアごとに異なるウィジットが使われる結果,操作性がソフトごとに異なったり,ソフトウェアとウィンドウの操作性が違ったりすることも起きます。簡単にいえば「画面の見ためや操作性がバラバラ」になってしまうわけです。
 そんな混乱を避けるためにUNIXベンダーはOpenView(Sun Microsystems),OSF/Motif+CDE(Open Software Foundation)といった,ウィンドウマネージャとウィジットを統合した環境を開発しました。しかし,両者は権利関係があるためオープンソースのUNIXでは採用しづらい難点があります(注:現在ではOSF/MotifとCDEはフリー化されダウンロードが可能になっています)。そこで開発されたのがKDEとGNOMEです。両者には次のような特徴があります。

●KDE
 KDEはウィジットにQtを使用した統合環境です。ウィンドウマネージャ(KWM)を含め操作性が統合され,見ためにも洗練された印象を受けるシステムに仕上がっています。
 現在の配布バージョンは1.2.2で,2.0が開発中となっています。バージョン1.xの段階では国内のKDEユーザー会(http://www.kde.gr.jp/)が日本語対応版を配布する形をとっていますが,2.0では完全国際化バージョンになり,日本語環境も統合される予定です。
 KDEの難点は土台になっているQtにあります。QtはTroll Techの製品で,条件付きのフリーソフトウェアだからです。KDE1.xのベースになっているQt-1.4.xには改変不可という条件があるため,オープンソースになじまないと指摘されてきました。
 そこでTroll Techは,Qt-2.0から新たにQt Public License(QPL)を策定し,改変を認めオープンソース化を図りました。しかし,このQPLも厳密なオープンソースとはいえないと指摘されています。

●GNOME
 GNOMEはGNUプロジェクトのフリーのグラフィックツールとして名高いGimp(GNU Image Manipulation Program,http://www.gimp.org/)が生み出した成果である「GTK(Gimp Tool Kit)」というウィジットをベースにした統合環境です。GNO
ME自体はGNUプロジェクトの一環として開発が進められています。
 ウィンドウマネージャはEnlightenment,WindowMakerなどが利用されています。KDEのようにウィンドウマネージャが統合されていないため,ルックスの統一感という点では弱い面もありますが,GTK,GNOMEともに完全なオープンソースという利点があります。
 GNOMEは先ごろ,バージョン1.2がリリースされました。操作性や安定性の向上,ルックスの改善が行われています。Helix GNOME(http://www.helixcode.com/)というインストールしやすいパッケージも登場しました。  (米田 聡)




KDE1.1.2のデスクトップ環境。アプリケーションとウィンドウマネージャが統合され使いやすく,ルックスも美しい



これがGNOME 1.2のスクリーンショット。ルックスや操作性が改善されている