DVD再生支援って何?

DVD再生支援機能とは具体的にどんなものでしょうか?


最近のビデオチップのほとんどは,DVD再生支援機能をうたっています。サポートされる機能は大きく二つに分類され,一般にDVD再生に強いといわれるチップはより強力なDVD再生支援機能を持っているわけです。
 まず,ほとんどのビデオチップが持つ機能として「スケーリング」と「色空間変換」があります。スケーリングとは,一定領域をハードウェアで拡大/縮小する機能で,この機能を利用すれば,例えば320×240ドットの動画と640×480ドットや800×600ドットの動画で,CPUの処理量はほぼ同じになります。
 もう一つの色空間変換は,PCでの画像処理と一般的な動画フォーマットの色管理の変換を行う機能です。PCでは通常,色情報をRGBで管理しており,この3色の明るさ情報と合成する色が表現されます。これに対し,多くの民生用機器を含め動画データはCUYLの3色の情報で色を表現しています。
 したがって,動画データをビデオチップで扱うには色情報を変換する必要が出てきます。色空間変換機能はこの色情報の変換をハードウェアで行い,CPUの負荷を下げるのです。
 これらの機能が導入されたのはWindows 3.1の時代で,Stealth64 Video(S3 Vision968),Viper Pro Video(Weitek Power9100)と「Video」の名称を持った製品は上記の機能を備えていました。当時はフルスクリーンで動画再生が可能というだけでも驚異的だったのです。
 DVD再生に強いと定評のあるATI Rage128シリーズ,S3 Savageシリーズ,Intel 740や810内蔵のビデオ機能などがサポートするのがMC(Motion Compensation,動き補償)と呼ばれる機能で,これは動画フォーマットの主流であるMPEGの特性を強く意識したものです。
 動画の場合,連続したシーンの1コマ1コマを切り出すと,前後するコマはほとんどの場合相関性があります。そこで1コマを完全に記録したフレームデータと,このフレームからの変化だけ,つまり差分だけを記録したフレームデータをいくつか作成し,これを繰り返し記録します(実際にはもう少し複雑です)。
 しかし,画面全体から単純に変化を抽出すると,画面全体が移動している場合や,画面内で移動している物体がある場合は差分が大きくなってしまいます。そこで画面を小さなブロックに分け,動きの情報も記録することで差分を小さくできます。再生時にこの動きの処理を行うのがMCです。
 MCの効果は非常に大きく,数ランク上のCPUを使用するのと同程度の効果を得ることができます。
 もう一つ,MCとともに最新ビデオチップでサポートされるのが「iDCT」です。MPEGでは輝度情報をDCT(離散コサイン変換)という手法で変換して記録します。これは自然画においては小さな範囲を抽出すると近接するデータの変化は小さいことが多いので,ピクセルごとのデータにするより変化の情報にしたほうがデータを小さくできるからです。iDCT(inverse DCT)はこの逆変換をハードウェアで行う機能なのです。
 現在,ソフトウェアDVDプレイヤーなどの使用において重要なのはMCであり,あまりCPUが高速でないPCでソフトウェアDVD再生を快適に行うならMCを持ったビデオカード(ビデオチップ)を選択するのがよりよいと考えます。 (坪山博貴)




ソフトウェアDVDプレイヤーでは,ハードウェア動き補償機能を使うものが多い