モバイルモジュールとは

ノートPC用のMobile PentiumUには,モバイルモジュールというパッケージがあると聞いたのですが,どういうものですか。


ノートPC(とくに薄型ノートやミニノート)では,ケースのスペースに限りがあるため,デスクトップ用のCPUでは,サイズが大きすぎて実装できないためです。インテルは,i386やi486の時代から,ノートPC向けCPUとして,デスクトップ向けCPUよりも小さなパッケージの製品を出荷しています。i386やi486の時代には,ノートPC向けCPUには,QFP(Quad Flat Package)と呼ばれるパッケージが採用されていました。
 また,ノートPCに高速CPUを搭載する場合,消費電力や発熱が大きいことも問題になります。そこで,Pentium以降の世代では,コアの駆動電圧を下げることで,消費電力や発熱を抑えたモバイル向けCPU(Mobile MMX PentiumやMobile PentiumUなど)が登場するようになりました。Mobile PentiumやMobile MMX Pentiumは,TCP(Tape Carrier Package)と呼ばれるテープ状のパッケージで提供されていました。TCPは,実装にかなりの技術を必要とするため,考案されたのがモバイルモジュールです。モバイルモジュールは,CPUコアとチップセットの一部(ノースブリッジ)およびL2キャッシュを1枚の基板上に実装したもので,’97年2月に登場しました(CPUコアとしては,Mobile MMX Pentium 166/150MHzに採用されていました)。
 モバイルモジュールは,ソケットによって装着するようになっているので,アップグレードがしやすいというメリットもあります。ただし,モバイルモジュールは,ある程度の大きさがあるので,ミニノートや薄型ノートには向いていません。
 PentiumUは,512KBのL2キャッシュをパッケージ内に集積していることが特徴です。デスクトップ向けのPentiumUは,SECC(Single Edge Contact Cartridge)と呼ばれる巨大なカセットのパッケージで提供されていますが,もちろんそんな大きな形のままでは,ノートPCで使うわけにはいきません。
 Mobile PentiumUでは,ミニカートリッジと呼ばれる形状のパッケージが新たに採用されました。ミニカートリッジは,SECCに比べて重量は約4分の1,大きさは6分の1しかありません。ミニカートリッジは,CPUコアとL2キャッシュを集積したものですが,Mobile PentiumUを搭載したモバイルモジュールも出荷されています。Mobile PentiumU搭載モバイルモジュールでは,CPUコアとL2キャッシュに加えて,Intel 440BXチップセットのノースブリッジが実装されています。
 なお,’99年第1四半期には,コードネームでDixonと呼ばれていた新しいMobile PentiumUが登場する予定になっています。Dixonは,256KBのL2キャッシュをCPUコアに集積していることが特徴です。Dixonは,L2キャッシュがCPUコアと同一の周波数で動作するため,同一周波数のPentiumUよりも高い性能を発揮すると見られています。Dixonでは,ミニカートリッジとモバイルモジュールに加えて,新たにμBGA(Ball Grid Array)と呼ばれる小型のパッケージでも提供される予定になっています。
(石井英男)



図 モバイルモジュールの構成