本誌12/15号の/Vmag.exPRESSで載っていた,CD-R/RWのマルチレベルの3倍密技術とは簡単にいうとどういう技術なのでしょうか?
米CalimetricsにTDKが技術協力する形で規格を公開したのがマルチレベル(MultiLevel Recording,以下ML)技術です。現行のCD-R/RW技術をベースにドライブに,ICレベルの変更を加えるだけで,2GBという3倍密度の記録を可能とするものです。現在,シナノケンシ(プレクスターの親会社)がドライブを,TDKと三菱化学がメディアを開発しており,次世代のCD-R/RW技術として期待が高まっています。
ML技術とはその名称(MultiLevel Recording)からも分かるように,従来のCD-R/RWでは0か1を記録していた部分(セル)に,8段階の信号レベルを記録することで記録容量を増加させるものです。CD-R/RWはレーザー光の反射レベルで信号を再生,要するに,一つのセルに8段階の反射率を持たせるようにしたわけです。もちろん8段階の反射率を正確に読み取るのは容易ではないので,読み出し時には定期的に反射率をリサンプリングして,ドライブ,メディアごとに発生する反射率の変化を動的に適正化して吸収し,また隣り合ったセルを考慮した記録も行うようにするといった技術の集合体が,この技術です。
一つのセルで8段階の反射率を読み取れるということは,3ビットのデータを記録できることになります。そこで隣り合う次のセルと合わせて6ビットでパリティビットを構成し,5ビットをデータに割り当てます。つまり従来は1ビット(0か1)しかデータを記録していなかった1個のセルに2.5ビットのデータが記録できるようになります。
MLで重要なのは,セル単位で見ると従来のCD-R/RWと記録密度が変わらない点です。トラックピッチも詰めていないので,従来のCD-ROMドライブやCD-R/RWドライブでセルの反射率を従来の0と1だけではなく,反射率の変化を8段階に読み出せれば再生できるので,ピックアップなどに手を加えず,ICレベルの変更で対応できるようになります。つまりコストアップも非常に小さく抑えられます。
ML技術はDVD-RAM,DVD-RW,DVD+RWドライブが本格普及するまでの間,既存のCD-R/RWとの互換性を確保しつつ高密度化,大容量化できる規格として注目されています。
(坪山博貴)
通常のCD-R作成とマルチレベル技術を用いた場合の違い
米Calimetrics http://www.calimetrics.com/