グラフィックスとフォントの印刷

日本HPのLaserJet 5Lというプリンタを使っていますが,プリンタのプロパティを見たところ,グラフィックスモードに「ラスタグラフィックスを使う」「ベクタグラフィックスを使う」という指定がありました。この二つは何が違うのですか。またフォントの設定で「TrueTypeをビットマップソフトフォントとしてダウンロード」「TrueTypeをグラフィックスとして印刷」というのがありますが,この違いも教えてください。


画像をドットの集合として表現するのがラスタグラフィックスです。ペイント系の画像や写真の自然画,Windows上のアイコンなど,多くのデータがこのラスタグラフィックスで表現されています。
 一方のベクタグラフィックスは画像データを,座標やその座標間を線分で結ぶ直線,それらを半径とした円,中心座標からのベクトルなどで表現する方法です。主にCADなどに採用されています。座標データが基になっているので,拡大/縮小を行ってもデータの劣化が少ないという特徴があります。Adobe Illustratorやマイクログラフィックス Designerといったデザインソフトなどもデータをベクタグラフィックスで取り扱っています。ペンプロッターでは,ベクタグラフィックスの座標データを忠実に再現して印刷できますが,一般のプリンタではメモリ上でラスタイメージに展開してから印刷します。
 ビットマップフォント(またはラスタフォント)ではラスタグラフィックスと同様に,点の集合のデータとして文字が表現されており,各文字の大きさ(ポイント)ごとに別のデータを持つ必要があります。このため特定のポイント数の文字の拡大/縮小を行った場合には文字品位が劣化することがありますが,データの取り扱いは容易です。
 TrueTypeフォントはアウトラインフォント(またはスケーラブルフォント)と呼ばれるものの一つで,文字データをベクタグラフィックスのような情報として持っています。このため拡大/縮小を行っても文字品位が損なわれることはありません。
「TrueTypeをビットマップソフトフォントとしてダウンロード」するというのは,TrueTypeフォントをビットマップフォントとしてダウンロードして印刷することを意味します。本来のスケーラブルな機能を失うため,印刷の状態によっては文字品位を損なう可能性がありますが,印刷速度を速くすることができます。
「TrueTypeをグラフィックスとして印刷」では印刷品位は高いですが,印刷時にフォントを画像データに変換する処理が入るので,印刷にかかる時間が多少増えます。
(吹田智章)