Microsoft DirectX 8.0 (C++) |
これまで、ほとんどのコンピュータ音楽は、次の 2 つの方法のいずれかで生成されていた。それぞれに利点はあるが、欠点もある。
デジタル サンプリングの利点と、MIDI のコンパクトさ、および柔軟性を組み合わせる 1 つの方法が、ウェーブテーブル合成である。これは、デジタル サンプルから音色のサウンドを合成する方法である。実際の音色をレコーディングすることによってサンプルを取得し、ハードウェアに保存する。さまざまなピッチとボリュームで任意の長さのサウンドを作成するために、サンプルのループと調整が行われる。
ウェーブテーブル合成はアルゴリズムに基づく FM 合成より現実的なティンバーを作成するが、依然として固定セットの音色に限定される。さらに特定の音色のサウンドはメーカーの実装によって異なり、ハードウェアの組み合わせが異なると非常に異なったサウンドになる場合がある。
次に、MIDI Manufactures Association によって発表された、ダウンローダブル サウンド (DLS) 規格がある。DLS は、システムにハードワイアードで実装されたサンプルの代わりに、実行時に提供されるサンプルに基づいてウェーブテーブル合成を行うことができる方法である。音色を記述するデータはシンセサイザにダウンロードされ、その後はほかの MIDI 音色と同様にその音色を演奏できる。DLS はアプリケーションの一部として配信できるため、開発者はサウンドトラックをすべてのシステムで同じように演奏させることができる。また、音色の選択が制限されることもない。
DLS 音色は 1 つまたは複数のサンプルから作成され、通常はシングル ピッチを表すが、シンセサイザで変更を加えることによりその他のピッチを作成できる。広範囲のピッチで音色のサウンドを現実的にするには、複数のサンプルを使う。DLS 音色をダウンロードする際に、リージョンと呼ばれる特定のピッチ範囲が各サンプルに割り当てられる。
DLS Level 2 では、すべてのノートにそれぞれのリージョンを割り当てることができる。また、各リージョンのティンバーをレイヤと呼ばれる複数のサンプルから作成したり、ノートのベロシティに応じて異なるレイヤをトリガすることができる。これによって、1 つの音色から無数のサウンドを作成できる。
加えて、サンプルにアーティキュレーションを与えることもできる。これはサウンドを実際の音色により近づけるための特徴を定義する。アーティキュレーションには、サウンドのボリュームやピッチのエンベロープおよびビブラートやトレモロを提供する低周波数発振器 (LFO) が含まれる。
サンプルは、ループ可能にすることも、単発にすることもできる。ループ可能なサンプルは、ノートの継続時間の間、繰り返し演奏される。単発のサンプルは一度だけ演奏される。
DLS データは音色コレクションに格納され、ここからシンセサイザにダウンロードされる。
ほかの MIDI 音色の場合と同様に、DLS 音色にはパッチ番号が割り当てられ、MIDI メッセージに応答する。ただし、DLS 音色 (機器) は General MIDI セットに従う必要はない。実際、ミュージックの音色である必要はまったくない。演説の一部や作成済みの完全な小節など、どんなサウンドでも DLS 音色に関連付けることができる。
DLS コレクションと DLS 音色の作成方法の詳細については、DirectMusic Producer のドキュメントを参照すること。DLS 規格の詳細については、MIDI Manufacturers Association から入手可能な『Downloadable Sounds Level 2』を参照すること。
ほとんどのアプリケーションは音色や DLS データを直接扱う必要がない。コレクションを開いたり、音色データをダウンロードする処理は、バンド オブジェクトによって実行される。バンドをダウンロードすると、そのバンドに関連付けられているすべての音色データもダウンロードされる。詳細については、「バンドの使い方」を参照すること。