Let's note CF-T2ができるまで

Let's noteは「Made in 神戸」

 国内企業が発売するPCの生産は、今やそのほとんどが台湾、中国といった国々で行なわれています。これは、製造コストが下がるという点では非常に有利に働きますが、技術や人材の海外流出、日本国内にPCの製造技術・人材が育たなくなるなどのデメリットも大きくなります。

 そんな中、松下電器産業は、日本国内工場でのPC製造にこだわる企業の一つです。しかも、そこから生み出されてくるPCは、1kg前後と軽量なモバイルノートPC「Let's note」シリーズや、高い防水性・耐衝撃性を備えたノートPC「TOUGHBOOK」シリーズ、液晶ディスプレイを最大二つ備える液晶一体型PC「Panacom LC/W」シリーズなど、すべてが強い個性を備えています。

 今回編集部では、この「Made in Japan」を一歩進めた「Made in 神戸」を実践する松下電器産業のITプロダクツ事業部 神戸工場での、Let's note CF-T2の組み立て作業を取材しました。

ITプロダクツ事業部 神戸工場

松下電器産業株式会社
ITプロダクツ事業部
神戸工場

所在地:兵庫県神戸市西区高塚台1-5-1

6段階に分かれる製造工程

 大まかに言うと、Let's noteの製造は以下の6段階で行なわれています。

  1. 材料ピッキング(作業者が必要な部品を仕様書に沿って集める)
  2. 組み立て
  3. エージング(専用ソフトでの連続稼動試験)
  4. 検査(各部分の動作チェック)
  5. 梱包
  6. 出荷
 今回の取材では、2〜4の工程を見ることができました。
Let's note T2

工程2:組み立て

 組み立て作業には、パイプで組み上げた「屋台」と呼ばれる作業台が使われています。PCの組み立て工程というとベルトコンベアなどを使った“ライン作業”を想像してしまうかもしれませんが、最近の製造業ではこうした作業台を使った方法が増えてきています。

 Let's noteの組み立て作業は、屋台を一つ使い、一人の作業者が最初から最後まで組み立て上げる「one by one」という方式が基本となります。こうしたone bye oneで組み立てられる技能を備えたリーダー的作業者は神戸工場では30名ほどいるとのこと。Let's note以外の製品では、製造台数などに応じて、屋台をいくつか連結させたライン作業で組み立てることもあり、その際は、リーダー的作業者がラインを監督するそうです。

 今回組み立てを実演していただいた須貝浩一氏も、そうした立場の一人であり、Let's noteであれば、1台あたり8分、通常の勤務時間内に40台程度完成させることを目標にしているそうです。

Let's note T2の組立映像Let's note T2の組み立て
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作業者へのインタビュー映像須貝浩一氏へのインタビュー
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屋台

作業者を取り囲むように構成される作業台“屋台”。Let's noteは通常この屋台を使って、一人の作業者が最初から最後まで組み立て上げる。

工程3:エージング

 PCの機能を検査する専用のソフトを用いて、一台一台連続稼動試験を行ないます。このソフトは削除されてから出荷されているため、購入したユーザーの目に触れることはありません。

エージングの映像エージング
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エージング

工程4:検査

 組み立て後のPCのインターフェースなどすべてにケーブルを接続し、各機能が正常に動作しているかを検査します。この作業も専用の屋台を使用して行ないます。ちなみに、同じようなチェックは、PCに組み込む前のメインボードの工程でもすでに行なわれています。

検査映像検査
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検査

さまざまなノウハウから生まれてくる個性的PC

 組み立て作業は一見簡単そうです。しかし、作業がこれだけスムーズなのは、効率的に組み立てられるように内部を設計しておいたり、組み立て手順を工夫したりなど、さまざまなノウハウの積み重ねがあるからです。

 たとえば、組み立てマニュアルには「○番のネジでメインボードを止める」というような指示はありますが、“どのように”に止めるのかは指示されていません。この、“どのように”という部分が製造面でのノウハウであり、工夫によって作業効率が向上したり、製品の品質が向上したりすることに直接つながっていきます。

 前述の屋台は、そうしたノウハウの集大成と言ってもよいでしょう。組み付ける各部品を置く位置、電動ドライバーを吊り下げておく場所や順番などにも、それぞれ意味があります。また屋台は、作業者や製造する製品に応じて、逐次改良が加えられているそうです。

 こうした製造のノウハウは、他社まかせにせず自分たちで一つ一つ組み立てるからこそ得られるものと言えます。結果的には、こうしたさまざまなノウハウが松下電器産業から生まれてくるPCを個性的なものにしているのでしょう。

工具の配置一つ一つにも意味がある

作業台の上に整然と配置された工具類。こうした機器の配置にも、それぞれにきちんとした理由がある。

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