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青空文庫
Blue Sky Collection
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No.
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著者名
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カワード、ノエル (ノエル・カワード Noel Coward)
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翻訳者名
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能美武功
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書籍名
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侯爵夫人
The Marquise
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底本
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底本の親本
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入力者名
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能美武功
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作品について:侯爵夫人(The Marquise) ノエル・カワード作 (1926年) 初演 1927年 Graham Browne演出 Marie Tempest(侯爵夫人)Graham Browne(ラウール) Frank Cellier (エステバン)
カワード自身の書いたものによると、(Play Parade の序文に)・・・「侯爵夫人」はマリー・テンペストのために書いた。書いている時、彼 女の声が私の今書いているその台詞をどのように喋るか、私の耳に響いてきた。実際に演じられたものを観た時、私のあらゆる予想がその儘ピタリとなされているのを感じた。彼女の「三つ角の帽子」、いたずらっぽく輝く目、計算された素早い動き、全て。しかし、もし私が、マリー・テンペストのこの素晴らしい演技から少し離れることが出来、冷静にこの芝居を観ることになれば、なんて薄っぺらで(tenuous) 不真面目な(frivolous) 作品なんだ、と思うだろう。特に最後の幕、ラウールとエステバンが決闘する、それをオレンジを齧りながらエロイーズが眺める場面は、あざといだけでなんて弱いのだ(weak and meretricious) と、鳥肌を立てずに読むことは出来ない(I might read with disdain) 。こんな壊れやすい(brittle) 現代の恋愛喜劇をわざわざ18世紀を舞台にした作者の軽々しさ(flippancy) と傲慢さ(impertinence)を、笑わずにはいられない。・・・ と、酷評をしている。The Times, 17 Feb. 1927 にも、・・・エロイーズがクレメント神父をピストルを使って脅し、ジャックとアドリエンヌを結婚させることに成功する。面白いところはここまで。ラウールとエステバンが決闘する、そしてエロイーズとラウールが仲直りする、そんなことがどうして面白いか。クレメント神父がやられてしまい、若い恋人がうまく逃げおおせる。観客の興味を繋ぐことの出来るタネはそこで出尽くしているではないか。テンペスト嬢の名演技をもってしても、観客の興味を最後の幕まで繋ぐことは出来なかった。・・・
とあるが、私はそうは思わない。非常に奇妙なことに、私が何故これを翻訳したかと言うと、決闘の場面と最後の仲直りの場面が面白かったからなのだ。(能美武功 平成10年10月25日 記す)
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著者について: Noel Pierce Coward (1899-1973) イギリスの劇作家、俳優。少年時代から舞台に立ち、のち劇作、演出、作曲、映画シナリオ執筆、映画監督など多方面に進出。日本には映画「逢い引き」(映画の原題は「Brief Encounter 」芝居の原題は「Still Life」)「幸福種族」(原題は「This Happy Breed」)が輸入されている。劇団「昴ー三百人劇場」では比較的多くカワードのものが演じられている。現在(平成10年)までに次のものあり。
●昭和47年 花粉熱(Hay Fever) 鳴海四郎訳 樋口昌弘演出 福田公子 久米明 小山武宏 小沢紗季子 岡田真澄 吉水慶 藤田みどり 北島マヤ 久津弘子
●昭和53年 陽気な幽霊(Blithe Spirit) 加藤恭平訳 福田恒存演出 石原由起子 田島令子 簗正昭 北島マヤ 加藤和夫 久津王乃灯 真咲美岐
●昭和58年3月 ヴァイオリンを持つ裸婦(Nude with Violin) 松原正、林克巳訳 福田逸演出 簗正昭 小沢寿美恵 石波義人 一柳みる 金尾哲夫 仲野裕 辻勉 蒲池高子他
●平成2年2月 この幸福種族(This Happy Breed) 中西由美訳・演出 岩松廉 岡野寿美江 柴田英梨子他
●平成3年2月 あいびき(Still Life) 沼沢洽治訳 樋口昌弘演出 谷口節子 岩松廉 米田雅朗 山中誠也他
●平成5年3月 遺産騒動(I'll Leave It to You 「君達に任せるよ」 Leaveが「遺す」と「任せる」の掛け詞になっている)柴田恵理子訳・演出 酒井浩江 手島宏正 太田正巳他
●その他、商業演劇で「私生活(Private Life) 」(結婚式を上げたばかりの二 組の男女が、ハネムーンで偶然同じホテルに泊まり、元の好き同志のカップルに戻る、という話。確か、山本陽子主演だった筈。)が舞台にのせられた
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