校正の手引き

(青空文庫工作員用 1998年5月作成)

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第1条 校正の相手は「文章」ではなく「文字」
●校正は、入力したデータが正しいかどうかをチェックする作業です。作業にあたって尊重しなければならないのは、「文章」ではなく「文字」。普通本を読むときとは違って「読書の楽しみ」は捨て、「文字面だけを追う」のが基本です。極論すれば、文章の意味は理解できなくとも、正しい文字さえ把握できればよいのです。

第2条 校正は「赤」で記入する
●実際の作業は、入力データのプリントアウトに間違いを記入していくことになります。このとき、記入は必ず赤のボールペンなどで行うようにしてください。赤を使うのは目立たせるためです。また、記入にあたっては、あとでご紹介する「校正記号表」に載っている記号をできるだけ使うようにしてください。同じ記号を使うことによって、校正後のプリントを受け取った側が記入内容をより理解しやすくなるからです。

第3条 まずは「原稿」を尊重する
●校正は「原稿(底本のコピーなど)尊重」が基本。入力結果が原稿に合っているかどうかをチェックするのであり、その逆ではありません。ただし、底本も印刷物ですから、それ自体に誤植や間違いが含まれている可能性があります。「これは原稿自体のまちがいではないか」と思われるものについては、赤ではなく他の色や普通の鉛筆などで記入するようにしてください。これによって、「明らかな間違い」と「疑問点」が一目で区別できます。

第4条 校正は最低3度繰り返す
●校正が1度だけで完結することはまずありません。以下のような異なった方法で繰り返し行うと、校正ミスの減少が期待できます。
1)原稿つきあわせ
原稿(底本)とプリントアウトとを1字1句比較しながら、ミスタイプの箇所を指摘し、修正内容を記入していきます。
2)素読み
校正が済んだプリントアウトを通し読みします。誤字脱字などの疑問が出た場合は、底本を参照して確認します。
3)特定の観点からの素読み
見出しの付け方に不揃いはないか、人名の表記に不揃いはないかなど、特定の観点からもう1度素読みします。特に、入力時にOCRを用いた場合、「タ(カタカナ)」と「夕(漢字)」などよく似た文字の読みとりミスが頻繁に生じますので、特定の文字だけを探しながら見ていく必要が出ることがあります。

第5条 「観点読み」は「1観点だけ」で全ページ通す
●「観点読み」にあたっては、1ページごとにいくつかの観点を同時に見ていくことはやめ、「タと夕」なら全ページそれだけをチェックしていくことが大切です。複数の観点からの素読みが必要な場合には、それを繰り返します。

第6条 「振り返る」姿勢を忘れずに
●素読みの途中で、原著者の熟語の表記の勘違いなど、「パターンとして繰り返されやすいミス」が見つかることがあります。そんなときには、そのまま先へ進むのではなく、いったん最初のページまでもどり、その漢字や用語について最初からもう一度チェックし直すようにしましょう。

第7条 再校作業は、左に初校、右に再校を置いて行う
●データ入力者が校正する場合は、上の3度の校正作業のあとに修正作業を行い、再度プリントアウトして、最初に赤字を記入したもの(初校といいます)と新たにプリントアウトしたもの(再校といいます)との比較・確認が必要になります。このとき、左に初校を、右に再校を置き、左手に青、右手に赤の筆記具を持ってチェック作業をし、チェックが終わったものは初校の赤字の上に「修正確認」を表す線を青などの色で引いていくとよいでしょう。あとからざっと見直すだけで、見落としを発見することができます。

第8条 赤字修正はできるだけ目立つように書き込む
●修正内容が赤で記入してあっても、行間に小さな文字で書かれていたりすると、受け取った側が見逃してしまう場合があります。間違ってタイプされている箇所に消し線を引き、そこから欄外まで線を引いて、できるだけ大きく目立つように記入してください。

第9条 必要最少限の校正記号を覚える
●JISの校正記号は、覚えておくととても便利です。ただし、もともと印刷物の制作にあたって使われてきたもの。デジタルデータの作業においては不要なものもあります。また、欧文の組版でしか使われないものもあります。したがって、すべてを覚える必要はありません。わからないときは、普通の文章で記入してもよいのです。

第10条 校正ずみのプリントは一晩寝かす
●集中力には限りがあるもの。つきあわせ→素読み→観点読みを連続して行うと、かえって見落としが増える場合があります。校正が済んだプリントは、最低でも一晩寝かし、翌日最後の素読みを行いましょう。思わぬ発見があるはずです。

■校正記号表(主なもの)

記号

使い方

文字を削除して詰めるときは「トルツメ」と記入します。逆に削除したあとをそのまま空けるときは「トルアキ(トルママ)」と記入します。

間違った修正を取り消し、原文のままにするときは、赤字を消して「イキ」と書きます。より正確には「モトイキ」と書きます。

新たに字句を挿入するときに用います。

ひらがなやカタカナを拗促音(小さな文字)に変えるときは、<形の記号を用います。逆に拗促音→普通の文字は、>形の記号を用います。

行の特定の部分からあとを次行に送るときに用います。

行の特定の部分から前を前行に送るときに用います。

改行するときに用います。

字と字、行と行を入れ替えるときに用います。

あとの行を前に送って前の行とつなげるときに用います。

指定の位置まで文字を移すときに用います。ふつう、引っ込める記号と位置指定の記号を併用します。

□は1字空けるときに、>は空きを詰めるときに用います。位置指定の記号を併用します。

フォントをゴシック→明朝に変更するときに用います。

フォントを明朝→ゴシックに変更するときに用います。

(注)明朝→ゴシック、ゴシック→明朝の記号は、青空文庫の活動では稀にしか使いません。