本誌 P40 〜 P45

最新のOS、漢字Talk 7.5.5を徹底解析

漢字Talk7.5.5は、今話題のMac互換機を含むすべてのMacで使用できる新しいOSだ。機能的には従来のCPU性能を大幅に向上させるべく、7.5.1や7.5.2から細部に渡って細かな改良が加えられた7.5.3を、さらにさらにアップデート。その結果、全体としては、大幅な機能強化が図られた印象を受ける。
漢字Talk7.5.5のポイントの数々を紹介しながら、新OSが何者かについて触れてみよう。

ネットワーク設定がラクになった
─OpenTransportの標準装備─


 OpenTransportは、AppleTalk、Ethernet、TCP/IPといったネットワークに接続するためのプロトコルの違いをOSレベルで吸収してくれる技術だ。OpenTransportを使うことで、例えば、社内ネットワークからPPP接続に切り替える際にいちいちMacをリスタートする必要がなくなったり、インターネットに接続する際のIP接続の設定が大幅にラクになったりとメリットは大きい。後者については、インターネット接続の設定方法に悩んでしまいがちなビギナーユーザーには朗報だ。インターネットに接続するのに、いままでは「MacTCP」というコントロールパネルを使うのが一般的であったが、これに代わり漢字Talk7.5.3以降では「TCP/IP」を使う。TCP/IPでは、極端にいえば、ネットワークへの接続方法をパネル上で選択してやるだけでよいのだ。


従来のMacTCPの設定をそのまま残したい!というユーザーのために、MacTCPを継続して使うことも可能だ。その場合は「Appleエクストラ」フォルダの中にある「ネットワークソフト選択」で「旧ネットワークソフトウェアを使用する」を選択してリスタートしてやる。ただしこの方法は、PCI Mac以外の機種でしか使えない。PCI MacではOpenTransportしか使えないが、わざわざMacTCPを使う意味もないだろう。

ネットワークにおけるOpenTransportの標準装備とともに、漢字Talk7.5.5の目玉の1つに、Finder上におけるファイル操作の向上が挙げられる。変わった点を列挙すると次の3点に絞られる。

●透明アイコンの採用
●ファイル検索機能のスピードアップ
●長いファイル名が見えるようになった

透明アイコンは俗称であり、PowerMacだけの特典だ。PowerMacのFinder上のドラッグ&ドロップ操作中に、アイコンとファイル名が半透明表示になるのだ。いままでは、ドラッグ&ドロップの最中はアイコンの枠だけが表示されていた。半透明になったことでアイコンの位置がはっきりと確認できるようになり、より確実にドラッグ&ドロップできるようになった。
 ファイル検索機能のスピードアップはうれしい限りだ。7.5.1の検索機能と比べてみてもその差は歴然だ。また、新たに2つの検索オプションが加わった。1つは「Finderで使用する種類を表示」。これを選ぶと検索結果の一覧で「種類」の表示に作成元のアプリケーション名を付加することができる。もう1つは「読みを考慮しない」で、これはひらがなとカタカナを区別して検索してくれるというものだ。
 最後に、長いファイル名について。これは、いままでFinder上でウィンドウを「名前順に表示」にしたときのファイル名の表示領域が広くなったということだ。具体的には、全角15文字までなら、ファイル名をきちんと最後まで表示してくれる。これにより、ファイル名の末尾が「...」になっていてわからない!ということは少なくなるだろう。


このソフトはなんだろう?
─3つの新技術について─


 漢字Talk7.5.3からのオプションとして、「OpenDoc」「QuickDraw GX」そして「PowerTalk」がCD-ROMに収録されている。漢字Talk7.5.3にアップデートし終えたあと、好きなものを選んでインストーラを実行すればよい。
  「OpenDoc」は、ソフトを機能ごとにコンポーネント化する技術。絵を描くだけの機能、テキスト作成だけの機能、というように別々のソフトウェアを用意し、ユーザーがそれを有機的に組み合わせて使用する。「Cyberdog」も“OpenDocの一種”なので、OpenDocがインストールされていなければ使用することはできない。「QuickDraw GX」はQuickDrawの機能を強化したものだ。デスクトッププリンタの使用を可能にしたり、書類を作ったソフトやフォントがなくてもその書類を閲覧できるようにしたりする機能を追加する。
 「PowerTalk」は簡単に使える電子メールソフトだ。一般の電子メールソフトとは異なり、他のPowerTalkがインストールされたMacと1対1でやり取りできるのが特徴。PowerTalkがインストールされると、デスクトップに「カタログ」と「郵便箱」が表示される。「カタログ」はAppleTalkなどのネットワークサービスを見たり、接続したりすることができるものだ。また「郵便箱」は、メール送受信の際のすべての書類を保存するものだ。「アップルメール」では、文字だけでなく画像ファイルなども貼り付けて送ることができる。ファイルを添付して送ることも可能。

特別付録も見逃せない
─ユニークなText-to-Speech─

 「Mac OS アップデート CD」の中には、「漢字Talk特別付録」フォルダにおまけとして、ユーティリティが収められている。ユニークでおすすめなのが、「Text-to-Speech」だ。これはSpeechManagerを介して文字を読み上げてくれる。声の種類やしゃべるスピードは、コントロールパネルの「Speech」で調節できる。


その他の変更点・改良点
─挙げるときりがないが、ざっとこんなところ─

 漢字Talk7.5.5には他にも紹介したいポイントがいっぱいある。システムに関してはメモリ効率やFinderの処理速度について。また機種に特有の変更点、例えばPowerBookのパスワード機能がPowerBookの190や5300で使えるようになったなどなど……。またさらに、7.5.1や7.5.2からのバグフィクスを含めると変更点を挙げるのは切りがないのが実情だ。次に、ユーザーインターフェイスに関わる機能を中心とした主なものを挙げておく。

● コントロールバーがデスクトップマシンでも 使用可能に
● Finderのデスクトップの再構築で、「情報 を見る」のコメント情報が消えなくなった
● デスクトップパターンが増えた(9個)
● PCI Mac用に「モニタ&サウンド」コントロ ールパネルを用意。これによりオーディオと ビデオを統合的に管理できるようになっ た。7.5.2にも付属していたが大幅に変わった
● SimpleTextが最新バージョン(J-1.3.1) に。QuickDraw 3Dに対応した
●「ドライブ設定」を使うことで、初期化でき る最大ボリュームが4GBから2TB (1000000GB = 1TB)に!
● スリープ可能なデスクトップマシンと PowerBookで、「Command+Option+ パワーキー」により強制スリープができるよ うになった



 漢字Talk7.5.5のアップデータは、漢字Talk7.5.3のリリース2の登場からわずか1か月で登場してきた。7.5.5は、7.5.3が抱えていた、特定機種におけるメモリ回りの問題やネットワーク上の不具合を解決し、全体としてシステムの信頼性を向上させたもので、7.5.3に新たな機能を追加したということは一切ない。7.5.3を使っていて特に問題がないという場合は、必ずしも7.5.5へアップデートする必要はないが、「7.5.3よりも7.5.5のほうがベター」であることはまちがいない。特に、PowerMac 7600などのPCI MacやMacOS互換機(モトローラ製の互換機を除く)を使っているユーザーは、7.5.5にアップデートすべき、と断言しておこう。