「トウヂ殿もケンスケ殿も、皆邸を失って他の所へ行ってしまった。
友達は……友達と呼べる者共は居らぬ様になってしもうた。……誰も」
巨大な爆発跡が湖となって、シンヂの眼前に広がっていた。
「綾波には会えぬ。その大和魂がない。
どの様な顔をすれば良いのか、判らぬ。
アスカ、おミサ殿、母上。………拙者は如何致せば良いやら?」
その時、シンヂの耳にどこからか歌が聞こえてきた。
誰かが豊臣秀吉の辞世の句を鼻唄で歌っている。
声がする方に振り向くシンヂ。
「歌は善し。」
そこには少年がいた。
湖につかった壊れた石像---天使の像の上に座っている少年。
歌声はその少年のものだった。
「え?」
「歌は心を満たしてくれる。リリンの生み出した文化の極みぢゃのぅ。
その様に感ぢぬか?碇シンヂ殿」
その少年はシンヂの事を知っていた。
「拙者の名を?」
いぶかしがるシンヂ。少年は答える。
「知らぬ者は居らぬ。
失敬だが、おぬしはご自分のお立場を今少し知った方がよろしいかと思われる。
拙者はカヲル。渚カヲル。
おぬしと同ぢ、仕組まれた子供、第五子供であるぞ。控え居ろう。」
少年の名はカヲル。シンヂと同じく福音戦士操縦適確者、第五子供だという。
「ははっ。第五子供?おぬしが?あの……渚殿?」
とまどうシンヂ。
「カヲルで構わぬ、碇殿」
氏素性を確認するシンヂに向かって微笑む少年。
シンヂは顔を赤らめつつ答えた。
「拙者も、あの、シンヂと呼んで下され。」
シンヂの言葉ににっこりと笑うカヲル。夕日が2人を茜色に染めていった……。
巨大な本部自動移動階段。
その上部でレイを待ち受ける人影があった。
自動移動階段から降りたレイに声がかけられる。
「おぬしが第一子供ぢゃな」
その人影はカヲルであった。レイは顔を上げてカヲルを見つめた。
「綾波レイ。
おぬしは拙者と同ぢぢゃ」
「………そなた、誰ぢゃ?(無礼者目が)」
黙って微笑むカヲルに、レイはいぶかしげな表情を見せた………。
本部施設門前の長椅子に座っているシンヂ。その前の門が開く。
「ぉお。拙者を待ってて下されたのか?」
「いや、あの、別に。あの、そんなつもりぢゃ……」
「けふは?」
少し屈んで目線をそろえる様にするカヲル。
「あの、定時試験も終わり申したし、後は湯浴みをして帰るだけぢゃが……
実を言うと帰りとうないのぢゃ。……この頃」
「帰る家、屋敷があるという事実は幸せに繋がりまするぞ。善い事ぢゃ。」
カヲルのきっぱりとした答えにシンぢは戸惑う。
「そうかの?」
「拙者はおぬしともそっと話がしたく候。ご一緒に行って宜しいか?」
「え?」
「湯浴みぢゃよ。これからであろ?」
「う、うむ。」
「ならぬのか?」
「や、そ、そういう訳ぢゃ、ないが……」
そうして2人は寄りそう様にし、大浴場へと向かった。
本部内にある大浴場でくつろぐシンヂとカヲル。
平然としているカヲルに対して、シンヂは照れ臭そうに下を向いてはにかんでいた。
「一次的接触を極端に避けるの、おぬしは。恐ろしいのか?
人と触れ合うのが。他人を知らねば、裏切られる事も、互いに傷付く事もない。
ぢゃが寂しさを忘れる事もないのぅ。」
カヲルが言った。
「人間は寂しさを永久になくす事は出来ぬ。人はひとりだからのぅ。
ただ、忘れる事が出来るから人は生きていけるのぢゃ。」
大浴場の照明が消えた。
「時間ぢゃ。」
とシンヂ。
「もう、終りなのか?」
「うむ……もう寝なければ」
「おぬしと?(お稚児さんもいいかもかも…ゴックン)」
「ぬ?あ、いや、カヲル殿には部屋が用意されてると思うが……別の」
「さよか…(ガッカリ)」
カヲルの言葉にドキッとするシンヂであった。
「常に人間は痛みを感ぢておる。
心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる」
立ち上がってシンヂに語り掛けるカヲルであった。
「びーどろの様に繊細ぢゃのぅ。
特におぬしの心は」
「拙者が?」
「そう、好意に値するぞ」
「するってぇ〜と何かい?(*^-^*)」(某A氏のご希望により使用(笑))
「惚れ申した!(>_<)」
カヲルのその科白は、シンヂが今まで自分に対して言われた事のない言葉だった。
行灯の消えたレイの部屋------帳台の上でレイが腹ばいになっている。
「妾(わらわ)、なにゆえここに居るのか?」
ポツリとつぶやく。
「妾、なにゆえ、未だ生きておるのか?」
自分自身に問いかけるレイ。
「何の為に?」
何度も繰り返し、問いかけるレイ。
「誰の為に?」
天上に輝く月。そして壊れたゲンドウの眼鏡。
レイの頭の中に浮かぶ、不思議な少年の印象------カヲル。
「第五子供。あの者、妾と同ぢ感ぢがする……はて?」
その頃、シンヂはカヲルの部屋にいた。
「やはり拙者が下で寝ようぞ。」
そのカヲルの言葉にシンヂが答えた。
「構わぬ。拙者がご無理申して泊めて頂いてるのぢゃ。此処で結構。」
夜は静かに更けてゆく……。
「おぬしは何を話したいのぢゃ?拙者に聞いて欲しい事があるのであろ?」
カヲルにうながされるまま、シンヂは語った。
ここに来る前の事を、穏やかで何もない日々の事を---。
「色々あり申した……此処に来て……。来る以前は先生の所に居り申した。
穏かで、何もない日々であった。ただ其処に居るだけの…。
ぢゃが、それでも良かったのぢゃ。拙者には何も致す事がなかったからのぅ。」
「人間が、嫌いであるか?」
カヲルは聞いた。
「別に………どうでもよかったのだと思う。
ただ、父上は嫌いぢゃった。」
素直に心情を吐露するシンヂの姿があった。
とりとめもなく、カヲルに自分の事を話すシンヂ-----会話が途切れた時、シンヂが何げなくカヲルを見ると、やはりシンヂを見ていたカヲルと目が合ってしまった。
「拙者はおぬしに逢う為に、生まれて来たのやもしれぬ。」
シンヂの顔を見つめながらカヲルは言った。
ドキッとしたシンヂ-----頬は真っ赤に染まっていた。
そして夜は更けてゆく。
監禁室内。カヲルは弐号機の前に立って語り掛ける。
「いざ、出陣ぢゃ。来い、アダムの分身、そしてリリンの下僕」
…………と。
空中に1歩を踏み出すカヲル-----その身体は宙に浮いていた。
「嘘ぢゃ嘘ぢゃ!!カヲル殿が使徒ぢゃったなど、そのような事嘘ぢゃ!!」
その声は震えていた-----驚愕と、裏切られた怒りの為なのか。
シンヂはカヲルが使徒だと知って動揺する。
だが出撃命令は変わらない-----。
「遅いのぅ、シンジ殿」
カヲルは心配する様に頭上を見上げた。
追撃が始まった。
「裏切りおったな!拙者の気持ちを裏切りおった!!
父上と同ぢに裏切りおった!!」
かなりの速さで中央教義を下降してゆく初号機-----シンヂの顔は悔しそうであった。
「居った!!」
「待ち申した、シンヂ殿」
初号機の姿を頭上に認め、安心した様な顔を見せるカヲル。
「カヲル殿!」
シンヂがカヲルに向かって手を伸ばした。
その時、初号機の手を弐号機が掴んだ!
組み合う2体の福音戦士。
しかし、カヲルは何をするでもなく、その光景をぢっと見つめていた。
「アスカ!!済まぬ!!」
シンジは前進的剣を取り出した。
瞬間、弐号機も同時に剣を抜いた!!
「福音関連。アダムより生まれし、人間にとって忌むべき存在。
其れを利用してまで生き延びようとするリリン。
拙者には判らぬ。」
対峙する2体の福音戦士。
その光景を見つめていカヲルの表情は、どこか寂しげであった。
前進的剣がぶつかり合い、激しく火花を散らす。
「カヲル殿!!やめて下され!なにゆえぢゃ!!」
叫ぶシンヂ。
「福音戦士は拙者と同ぢ身体で出来ておる。
拙者もアダムから生まれしものだからのぅ。
魂さえなければ同化出来るのぢゃ。
この弐号機の魂は今、自ら閉じ篭っておるからのぅ。」
カヲルはそう言った---。
そうしてはじかれた初号機の剣がカヲルの方へとそれた!
その剣をあっさりと絶対的障壁であっさりと受け止めるカヲル。
前進的剣を手も触れずに、はねのけるカヲル。
「絶対的障壁???」
半信半疑のシンヂ。
「そう、おぬしらリリンはそう呼んでるのぅ。
なんぴとにも犯されざる聖なる領域。
心の光。
リリンも判っておるのであろ。絶対的障壁は、誰もが持っておる心の壁ぢゃという事を。」
カヲルはそう答えた。
信じていた友人が使徒だった----それはシンヂの心を動揺させるに十分であった。
シンヂは叫ぶ。
「その様な事、判らぬ!カヲル殿!」
弐号機の剣が初号機の胸に突き刺さった。
その痛みに耐えながらも、弐号機の首筋に向かって剣を突きつけるシンヂ。
もはや、作戦行動と言うよりは、本能による死闘といった光景になっていた。
福音戦士同士の死闘に背を向けるカヲル。
「人の運命(さだめ)か。人の希望は悲しみに綴られておるのぅ………」
目を伏せるカヲル-----それと同時に発令所全体が揺らいだ。
それによって、すべての画面が探知不可能となってしまった。
地下の広場へと落下していく2体の福音戦士。
そして巨大な氷柱を上げて着水した。
落下した衝撃から目覚めたシンヂはカヲルの名を呼ぶ。
その声に背を向けるカヲル-----身を乗り出してシンヂは叫んだ。
「ぁぃゃ待たれぃ!!」
だが、その追いかけようとする初号機の足首を弐号機が掴んでいた。
天国の扉への通路を煤進むカヲル-----視線を走らせただけで施錠が解除された!
戦う2体の福音戦士。
その時、周囲を激しい揺れが襲った。
何かが地上で起こっているのだろうか!?
その時!!!集中教義の結界周辺に絶対的障壁が発生した。
結界の中に侵入しようとする何か。
だがすぐに消失してしまった。
その何かとは、何とレイであった!!!
集中教義に立つレイ。
その頃、カヲルはアダムの前へと辿り着いていた-----。
「----アダム。我らの母たる存在。
アダムより生まれしものはアダムの還らねばならぬのか?
人を滅ぼしてまで」
アダムを見上げながらカヲルはそうつぶやいた。
七つの目が見えた-----その時、カヲルはわずかに顔をしかめた。
「なんたる事ぢゃ!此れは……リリス」
彼の語調は驚きに満ちていた。
そのアダムの後方にある核自爆部品が大音響と共に外れた。
その置くから、頭に前進的剣を突き立てられた弐号機が出現し、黄色い汁の上に倒れこんだ。
弐号機を冷たい表情で見ているカヲル-----その目には哀れみも慈しみもなかった。
倒れこみ、動かなくなった弐号機の後ろから、ゆっくりと巨大な姿を現わす初号機。
初号機を見て微笑むカヲル-----その後ろにリリスの巨大な顔が見えた。
刹那、初号機はカヲルを握った!
「かたぢけない、シンヂ殿。
弐号機はおぬしに止めておいて貰いたかったのぢゃ。
そうしなければ、彼女と生き続けたかもしれぬからのぅ。」
「カヲル殿……なにゆえ……」
「拙者が生き続ける事が、拙者の運命ぢゃから。結果、人が滅びようとも。
だが此のまま死ぬ事も出来る。生と死は等価値なのぢゃ、拙者にとってはの。」
カヲルは語り出した。
「自らの死----其れが唯一の絶対的自由なのぢゃ。」
「何を……カヲル殿?おぬしが何を仰ってるのかわかぬぞよ!?」
「遺言ぢゃよ。」
シンヂは沈黙する-----。
「いざ、拙者を消しとくれ。そうせねば、おぬしらが消える事になる。
滅びの時を逃れ、未来を与えられる生命体はひとつしか選ばれないのぢゃ。
そしておぬしは死すべき存在ではない。」
そうカヲルはシンヂに言うと、チラリと上を見上げた。
その視線の先にはレイが立っていた。
冷ややかな目の彼女はカヲルを見つめている。そのレイを見てカヲルは微笑んだ。
「おぬしらには未来が必要ぢゃ。」
優しく言うカヲル。
「……………」
シンヂは何も答えない。
「かたぢけない。おぬしに逢えて拙者は満足ぢゃ。」
シンヂの導入把手を握る手が震える。
俯き、表情は見えない-----。
長い、長い、沈黙の時が流れた-----。
やがてシンヂは命令を実行した……………………。
露とをち 露と消えにし 我が身かな
浪速の事も 夢のまた夢…
時代劇っぽいモノを作ってみました。 …が!!一体、何なのでしょう、このヘボヘボはっ(泣) 大体、これは何時代?彼らは浪人?おかっぴき?(泣) 言葉遣いもメチャクチャだし、笑って許してぇ〜。ハッ(謎) |