↑あぁっしまった!これでは恐怖小説の挿絵だ!
弐.相田家のお手伝い!の巻
ぶん:愛野いずみ
え:(惡)
今までシンジは、あの少年の様に優しく触れられた事がありませんでした。
いえ、ネルフの家のゲンドウ先生や冬月先生も優しくはしてくれるのですが、それは肉親の様な感じで、シンジにとっては空気みたいなものでした。でも、あの少年が触れた瞬間、触れた部分が今でもズキズキして、少年の事を考えると胸がきゅ〜んと痛みます。
シンジはあれから、毎日丘に登ってみるのですが、あれ以来1度も少年には会えませんでした。
そんな毎日が続く中、冬月先生がシンジを呼びに来ました。
「シンジ君、ちょっと来なさい」
「はい、冬月先生…」
シンジはいきなり現実に戻されたような気がして、少し不快でしたが素直に家に戻りました。そこにはゲンドウ先生が待って居ました。
「遅かったな、シンジ…」
「はい、すみません…」
「実は…お前を引き取りたいと言う人が現れてな。この第三新東京市でも有数の金持ちの家だ。シンジ、お前はここでお前独自の補完計画を進めてみろ」
「はぁ…」
と、ゲンドウ先生に訳の判らない事を言われている間中、冬月先生はシンジの身支度を始めました。
「さようなら、ネルフの家。さようなら、ネルフの丘。さようなら、ボクの王子様…」
シンジは涙ぐみながら、心の中で12年間過ごした思い出の場所に別れを告げました。
行きの車の中で、シンジは今度の家の事を大体聞きました。相田家と言い、湖の周りに住んでいるという事。その家にはシンジと同い年の兄弟がいるという事、そして、シンジは実は養子ではなく、兄弟の話し相手として引き取られると言う事…。シンジは少しガッカリしましたが、精一杯その兄弟のお相手をしようと心に決めたのでした。
やがて第二芦ノ湖が見えてきました。周りには豪華な家がたくさん並んでいます。運転手は、
「この辺り一体は、全て渚家の土地となってます。相田家も、渚家の一族です」
第二芦ノ湖には首の無い天使の像が沈んでいて、シンジは王子様が立ったら似合いそうだな…と想像しました。
そして、相田家での生活が始まりました。相田家には、トウジとケンスケという兄弟が居て、毎日シンジは苛められました。一応屋根裏と言う個室は与えられたものの、相田家の召使候補としてやらねばならない事は山程あります。
でも、相田家の召使・マヤや、コックのマコト、庭師のシゲル達はシンジに優しく仕事のコツを教えてくれます。
ある日の事、トウジとケンスケに苛められたシンジは、泣きじゃくりながら相田家の庭を彷徨いました。すると、シンジの目の前に薔薇の門が現れました。
「それは、涙?あなた、泣いているの?」
という声にシンジが顔を上げると、薔薇の門に一人の少女が座っていました。
「お、王子様…!!」
シンジは少女の顔を観て驚きました。その少女は、女ではあるものの、あの少年と同じ瞳の色をしているのです!感じもどことなく似て居ます。
「あなた、誰?」
その少女は淡々と話します。シンジは今までアスカと育ったので、こういう淡々と話す人は戸惑うばかりです。
「あ、あの…ボク、シンジ。碇シンジって言うんだ」
「そう…」
「そう…って、あの…キミは?」
「あたし、綾波レイ。多分、2人目…」
そう言って、レイは門の中に消えて行きました。
シンジはまた歩き始めました。次に出て来たのは、小さな滝が流れている門。
滝は丸いオレンジ色の池(LCLか?)に流れ込み、そこには一曹のゴムボートが浮いてました。シンジは思わず滝の横にある小石に触ってしまいました。
「ちょっとぉ!アンタ、何すんのよ!」
と声のする方を振り向くと、ゴムボートの中に女の人が乗っていました。
「あ…、ご、ゴメンなさい…」
「アンタねぇ〜、そうやって謝れば済むと思って。本当に悪いと思ってるの?ま、いいわ。このままだとボートが流されちゃうから、ちょっちそこのロンギヌスの槍を投げてくんない?」
シンジは横にある槍を手に取り、その女の人に差し出しました。女の人は槍を支えに、陸に上がって来ました。
「ふぅ、ありがと。もうちょっとで、この大事なモノが流されちゃうトコだったわん」
女の人が指さした先には、ゴムボートに山と積まれたえびちゅビールがありました。
「あたし、ミサト。この家に住んでんの。アンタは?」
「ぼ、ボクは碇シンジ…」
「ふぅ〜ん、今度遊びに来てね!サービスしちゃうわよん」
そう言って、ミサトも門の中に消えて行きました。モチロン、ビールも忘れずに。
シンジが相田家に戻って来ると、トウジとケンスケにショッピングの付き添いを頼まれました。一通り買い物が済むと、シンジを残して相田家の車は去っていました。慣れない街中でシンジが途方にくれていると、
「置いてきぼりなの?ブザマね…」
という声がエンジン音と共にしました。観れば、髪を金髪に染めた利発そうな女の人が車に乗っていました。
「あ、あの…あなたは?」
「私はリツコよ。渚家の一族…。あなた、第二芦ノ湖の畔に居るの?乗せてってあげましょうか?」
シンジは、リツコに送ってもらう事にしました。
「なんやアイツ、置いてきぼりくらって笑いよるで…」
「ほんと〜。卑しい生まれのヤツは何考えてるか判らんよ、全く…」
と、トウジとケンスケに呆れられても、この3人に会えたのが嬉しくて、シンジはへっちゃらでした。
そんなある日、またシンジはトウジとケンスケに苛められました。つい、シンジが怒ってトウジを殴ってしまったのです。それを観たレイに
「それが、あなたの望んだ事なの?碇くん…」
と言われ、ショックで相田家を飛び出しました。フラフラと川の方まで辿り着き、傍にあったボートに乗ったままうたた寝してしまいました。シンジが目を覚ました時にはボートはすっかり流されていました。やがてボートは岩に当たり、シンジは川に飛ばされました……。
−−−シンジが目を覚ますと、サングラスをかけた髭面の男の顔が覗いていました。
「うわぁぁぁ!!!!!」
シンジは咄嗟の事に、思わず悲鳴を上げてしまいました。シンジはビックリすると、とにかく喚き散らすのです。その顔はウメズカヅヲのマンガを彷彿とさせます。
「そんなに驚かないでおくれよ」
その声は優しく、初めて聞く筈なのにシンジに安心感を与えてくれます。
「ご、ゴメンなさい。てっきり山賊が人さらいかと思って…。だって、顔中そのお髭だし…色メガネなんてかけてるし…」
モジモジ応えるシンジに、その男はサングラスを外しながら
「嫌だなぁ〜。ボクはこう見えてもまだ若いんだよ?」
そう言いました。その目は優しい赤でした。
「あの…助けてくれたんですよね。あ、ありがとうございます…。あの、ここは…?」
「ここは渚家の別荘の一つさ」
「じゃあ、あなたは渚家の人…?」
「い、いや…」
その人は顔を伏せて、くぐもった声で答えました。シンジは、何か聞いてはイケナイ事を聞いてしまったような気がして、申し訳なく思いました。ふと見れば、その男の周りには小さな動物が取り巻いています。
「ああ、これ?これは使徒と言ってね、ボクの大切な家族だよ。こっちがサキエルで、こっちがマトリエル…。あ、遅くなったね、ボクはタブラート」
タブラートと名乗った男は、優しそうに使徒の一匹一匹を撫でてあげてます。
その度に使徒も嬉しそうに円らな瞳でタブラートを見上げます。シンジも恐る恐るサキエルの頭を撫でてみました。サキエルは嬉しそうにシンジを見上げ、目を細めてゴロゴロと喉を鳴らします。
「ボ、ボクはシンジです…。あ、あの…ここからどうやったら帰れるのですか……?ボク、相田家に帰らなきゃ…」
「キミがドコから来たか判ってるよ。失礼だが、キミはもう少し自分の立場を認識するべきだと思うよ」
「ボクの立場…。ボク、相田家で使用人見習いなんです。だから、早く帰らなきゃ…」
気ばかり焦るシンジをタブラートは軽く手を差し出して制しました。
「ダメだよ。キミはボートから弾き飛ばされて、溺れていた。ボクがみつけて引き上げた時には沢山水を飲んでいたし…。ボクが人工呼吸して、やっと息を吹き返したんだから。まだ寝てなきゃ」
タブラートの「人工呼吸」という言葉に、改めて頬を染めてしまいます。そして、その顔を恥じる様に毛布で頬を隠してタブラートを盗み観ます。
毛布を掴むシンジの手を見つけたタブラートが、シンジの手を取りました。
「こんなに小さな手を、あかぎれだらけにして…。この歳の子供だったら、まだまだ母親に甘えたいだろうに。可哀相に…」
そう呟きながら、いつしかタブラートの唇はシンジの手に吸いよせられる様に、優しく触れました。
「タッ、タブラートさん……!!」
シンジは咄嗟に手を引き込めようとしましたが、その手はしっかりとタブラートに抑えられていて、シンジの思うままにはなりませんでした。
続くわよ〜ん(笑)
★またも、謎の人物「タブラート」に拉致されてしまった12才シンジ! 彼は無事に相田家に帰る事が出来るのか?シンジの純潔は守れるのか?? 私はシンジはスキが有りすぎだと思うゾ(笑) 次号、相田家に帰ったシンジは、とうとう不評を買い、松代に売られる事になってしまう。 なんとか阻止しようとした渚家3姉妹の作戦は? そしてシンジの運命は一転する! サービスサービス!(笑) |