ALLES INTERVIEW SHOJI KAWAMORI 1/2

English version is here.


アニメーション監督
河森正治
Shoji KAWAMORI

何処までが与えられた感動で、何処から先が自分たちが参加している感動なのか。その境界線が非常に危ない時代になってきてる。それが恐いような面白いような感じです。



PROFILE

「ジャパニメーション」という言葉が世界で注目されている。漫画やアニメの系譜の中で独自の進化をとげつつある日本のアニメーションは、高度なCG技術とも相まってすでに世界最高水準のレベルにきているとも言われる。河森監督は、アニメ界の一つのメルクマールともいえる傑作「時空要塞マクロス」を手掛けた後の長い沈黙を破り、久しぶりの劇場用新作「マクロスプラス MOVIE EDITION」を発表した。前作から10年、時代とともに河森監督が描く「マクロス」の世界はどのように変化してきたのか?



(Quick Time Movie 1.5MB)

 今回の作品のテーマについてお伺いしたいのですが。

 そうですね、まあテーマというよりモチーフになるんですが、ひとつは大空を描くこと。大地にいる人間が空を見上げて撮ったような航空映画って多いんですけど、そうじゃなくて本当に飛んでるような、そういう空間のある大空って言うのかな、無限の空みたいな。そういうのが描きたいっていうのがまずひとつ。
 もうひとつは、主人公達3人が、もう失ってしまった友情をちょっと取り戻す。その辺は割とシンプルに、物語を推進する上でのそういう関係を描いています。ただ、そこにはやっぱり、メインモチーフにもかかわってくるんですが、人間の記憶とか、記憶だけじゃなくて体験ですよね。そうしたものを絡めてあります。

ヴァーチャルリアリティの様なシュミレーターがどんどん生活の中に入ってきて、本当に体験しているのは何だろうという疑問が出てきたわけです。

 今回初めて登場する新しいキャラクター、シャロン・アップルの存在が、大変重要な意味を持っているようですが・・・。

 シャロン・アップルに代表されるヴァーチャルリアリティ的な存在。この十年で変化したっていったら、やっぱりそこが一番大きいですよね。
 人工頭脳である「彼女」が、歌うことで人々に感動を与える・・・。そういうシュミレーターがどんどん実際の日常にも入ってきてる。ゲームもそうだし、言ってしまえばテレビの頃からずっと、こういう一種のシュミレーターが自分たちの生活の中に入ってる訳ですよね。
 本当に体験してるのは一体何なんだろうなみたいな疑問が出てきたわけです。それで、本当の空とはか、本当の自分とか、本当の記憶とか、本当の体験、それから本当の音楽。音楽にしたって、何処まで本当に感動してるかって、感動が設計されちゃう時代じゃないですか。CMソングなんて完全に設計図で、ある特殊な設計図によって作られてほとんど洗脳のように出来ちゃうんですよね。
 で、実際ある程度(感動の設計図を)作り手達が手に入れてしまってるこの時代に、何処までが与えられた感動で、どっから先が自分達見る側が感動に参加してるかっていうんですか、それが非常に危ない時代になってきてる。そんな部分が一種の青春ドラマであり、航空アクション物であり、音楽エンターテイメントである部分から滲んでくればいいなと、そんな感じですね。

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